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すっかり夜があけた頃、日本へ送るポストカードをしたためる。「ウィーンの街は、本当にきれいです―」ふとカーテンを開けてみると、何やら白いものがひらひら……、もしかして、雪? 朝食を終え、ロビーの大きなガラスから見えた外の景色、そう、何と街は雪で覆われていた!どこもかしこも真っ白で、歩くたびに自分の足跡がついてくる。雪はまだしんしんと降り続いていて、吐く息も白く、空気は透明に澄んでいる。大阪在住の私にとって雪は未だに珍しいものらしく、車の上に積もったサラサラの雪をくずしてみたり、ボールを作ってみたり、子どもみたいだナ。 見本市宮殿を抜けると、雪の中に自然史博物館と美術史美術館がたたずんでいる。広場の木々も真っ白な帽子をかぶり、ところどころ緑色が顔を出している。もともと上品な街なだけに、なんて雪の似合うこと!王宮の広場に出ると、まさに圧巻!王宮はさらに荘厳さを増し、昨日とはまるで違った景色。まさしく、一夜のうちに魔法がかかったよう。 今日は、昨日の続きで、王家ゆかりの教会を訪れるつもりだが、雪でなかなか分かりにくい。地図を頼りにうろうろ、やっとアウグスティーナー教会にたどりつくと、何やら工事中。ほんの一部だけしか見れなかった。それでも、フランツ・カールとエリザベートが結婚の契りを結んだという地を踏みしめることができただけでも、幸せかな。 雪の中、さらに進むと、いつの間にかケルントナー通りに出ていた。運良く、少し歩くと、お手当てのカプツィーナー教会が。こちらの外観はまるでシンプル、かえっておもちゃの家みたいでかわいらしい。ところが、ひとたび中に入ると、何とも格調高い美しさ。教会というより、美術館に近い。白壁に、こげ茶の祭壇やイス。飾られた聖母子像や祭壇も美しく、優雅さすら感じる。他に人もなく、一人きりでこの空間を味わうことができた。 教会の左の入口から、皇帝納骨所に入る。この地下には、100を越えるハプスブルク家の人々の遺体が安置されているのだ。冷やっとした石造りの通路を抜けると、彫刻のほどこされた棺が続く。ひときわ目立つ空間に、マリア・テレジアとその夫フランツ一世の墓があった。二人の肖像(彫刻)で飾られた豪華な棺。ハプスブルク家の女帝として、権力を手中におさめた偉大な人物、マリア・テレジアがここに眠る―。さらに進むと、花々で飾られた一室、ここだ、ここに違いない!一段高いフランツ・ヨーゼフの棺を中心に、エリザベート、そして息子のルドルフが眠っている。赤、白、黄色など、色鮮やかな花たちが、うす暗い棺を鮮やかに飾っている。エリザベートの棺を前にすると、何やらこみ上げてくるものがあった。ずっと死を願っていたエリザベート。死によって、やっと自由を手に入れたんだろうか。今度こそ、愛する者たちのそばで、安らかに眠っているに違いない。心がじんと熱くなる。ここに来れて良かった・・・! 今日のいわゆる「見学」はこれだけ、あとはぶらぶら、ショッピング。リンクシュトラッセン・ガレリエンは一日目にも来たけど、おしゃれなショッピングモールだ。吹き抜けの階段の下にはレストランが見え、ブュッフェだろうか、色鮮やかにフルーツが積み重なっていて、楽しい。王宮を引き戻り、マリアヒルファー通りへ。ケルントナー通りとはまた少し違った感じで、こちらの方がより庶民的かな。ヴァージン・メガストアには、CDやビデオ、そして本がどっさり。いろんな本を見て回ると、ついつい没頭してしまう。美術書や小説、料理の本など。そして何よりも楽しいのが絵本。ドイツ語は分からないけど、かわいいイラストを見ているだけで心がなごんでくる。飛び出す絵本や、一風変わったものなど、いろいろほしくなって困ってしまう。すぐ向かいにはデパートが。おしゃれでしかも、お値段もお手頃。おもちゃ売り場には、ミニ動物園みたいなものがあり、柵で囲まれたウサギやモルモットが遊んでいた。とてもかわいらしい。おみやげ類も買ったし、荷物も重くなったし、そろそろ帰ろうかな。さらにファンタとミネラルウォーターを買い、いざ、"我が家"へ。 ウィーンに来てからの生活パターンでは、5時ごろにはもうホテルに戻っている。なんて健全なんでしょう。ベッドに横たわっていると、いつの間にか眠っていて、10時とか、12時とかにいったん目が覚める。それからガイドブックを見たり、何やかんやしているうちにまた眠ったり、起きたり、というそんな感じ。いまいち時差に対応しきれていないのかな。夜明け頃におふろ、そして日記を書く。一人だからこそできる気ままな生活、それも幸せ! |