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1997年  3月19日(水)

今日は上宮、下宮に2つの美術館を持つ、ベルヴェデーレ宮殿へ。U-バーンで南駅まで出る。地上に出たとき、目印になるものが何もなくて困ってしまったけど、人に道を聞きつつ何とかたどりついた。

上宮はうすいエメラルドグリーンの屋根がずがすがしい。さすがに接客用だな。目の前に広がる広い池(泉)にはカモや鳥たちが泳いでいる。おしりをふるふるふるわせて泳ぐ、ぷくぷくしたその姿を見ると、幸せいっぱいな気持ちになった。ひとりでにこにこしてたよ、きっと^^。

白造りの階段を上がると、まず大理石をふんだんに使用した何とも華美な広間、天井画もすばらしい。(ここでは、国家条約も結ばれたという。)この階に展示されているのは19Cの美術で、クリムト、シーレの絵画が代表である。クリムトの絵はウィーンに来てから、ポストカードや何やらでよく目にしたが、こうして実物大で直接目にすると、さすがに感動は大きい。金色を基調とした幾何学模様と人物が見事に調和している。まさに天才に名にふさわしい。かの名作、『接吻』も見れて満足。さすがに実物大は迫力満点!街や森の風景画を見ていると、当時のウィーンがしのばれ、いろんな想像が頭の中に浮かんできた。

ルノワールやモネ、マネの絵もあった。やわらかい印象派の絵画を見ていると、心がとろけてくる気がして、何とも心地よい。世紀末美術は、私の慣性にぴったりくる絵。サロメなどの神話主題を見ていると、体の血が騒ぐ。中でも、ハンス・マルカトの絵が一番だ。なめらかな肌の美しい女性像を見事に描き上げている。奥の大作、『アリアドネ』の壮大さは口では言いあらわせない!礼拝堂のような、小さいながらも豪華絢爛な部屋いっぱいを占めた美しい絵。私が見ることになっているオペラと同じ主題なんて、運命かしら。ひととおり見るのに、それほど時間はかからなかった。

上宮からは庭園をはさんで下宮、そしてウィーンの街が見下ろせる。はるか遠くに見えるあのとがった尖塔は、シュテファン寺院かな。まだ雪の残る庭園をゆっくり歩き、バロック美術館となっている下宮へ向かう。絵画、彫刻はさらっと流すだけだったが、すばらしい部屋を拝見することができた。大きなブロンズ像が部屋のあちこちに配された大理石の間は何とも格調高い。ギリシャ時代を思わせる装飾がほどこされた部屋。茶色が基調の幾何学模様が美しく、壁や天井は神話主題で埋め尽くされている。彫刻的な装飾はほとんどなく、模様のみの装飾は、また違った趣があって興味深いな。一番奥、「黄金の部屋」はその名の通り、金でうめつくされた部屋。金色の壁には色鮮やかな花や模様が描かれ、四方の大きな鏡が部屋をより立体的で美しく見せていた。


バロック美術館の一室

「黄金の部屋」

いったん外に出て少し歩くと、中世美術コレクションがある。金色のキリストの板絵などがずらっと並び、少し恐ろしい気がする。キリスト像にしてもマリア像にしても、ルネサンスを迎えるまでは表情が凍り付いていて、残酷さばかりが目に付いてしまうから。歴史や伝説、たとえば映画などのイメージ等では中世にもかなり惹かれるんだけど、芸術に関してはやはり合わないかもね。

さて、ベルヴェデール宮を出ても、夕方まではまだ時間がある。また、街歩きでもしようかな、と気軽に思ってみたものの、けっこう迷ってしまい、本当に歩き回るハメになってしまった。それでも、目新しい広場や通りなどを楽しむことができたから、よしとしよう。坂の上に見えた、お菓子の家のようなのっぽな建物、あれは何だったのだろう。行ってみようと思ったのだが、思った以上の距離で、途中で挫折してしまった。ようやくカールス教会を見つけた時は心底うれしかったな。

オペラ座を越え、ケルントナー通りへ。ここに来ると、なんだかほっとする。ウインドーショッピングを楽しんでいると、あられがぽつぽつ降ってきた。急な天気の変わりように、人々もとまどっている。いよいよ激しく降ってきて、雨宿りとばかりに皆店に入ってくる。それに便乗して、一人では少々入りにくかったおみやげもの屋さんに入ったりして。お皿やキーホルダー、民族衣装など、見てるだけで楽しいんだよね。本屋やCD屋さんにも寄り、何やかんやと時間がたってしまった。天気もやや回復したし、今日はこの辺にしておこうかな。

ホテルの部屋でゆったりくつろぐ。よく歩いたものね。疲れを癒して、お休みなさい。