『会社の最大の情報源=決算書を読みこなす』



 会社の内容を知るためにはさまざまな情報源がありますが、なかでも最大の情報源が決算書です。決算書の内容を見て、投資家はこの会社の株を買うかどうか、銀行はこの会社にカネを貸すか、取引先はこの会社にものを売れるか、従業員はどれだけ給与をもらえるか、そして税務署はいくら税金をとれるかを判断します。
 決算書から読取るべき内容は大きくいえば2つあります。1つは、1年間に会社がどういう行動を行い、その結果、この会社はどれくらい儲けられたのか、あるいは損をしたのかということ表したのが損益計算書(P/L)です。
 もう1つは、一定時点における会社の財産状態がどうなっているのかということ。期末時点に会社が所有する資産と負っている負債を比較し、その差額として会社の実質的な純資産(資本)を示すものが、貸借対照表(B/S)の2つがあります。



ポイント   4つの利益を把握する


 P/Lは決算期間の営業を表現したものです。
 左記のアサヒビ−ルの損益計算書を例にとって説明しましょう。
 売上から(B)売上原価(商品の仕入等)を差し引いたものが(C)売上総利益。そこからさらに、(D)販売費(営業に関わる販売促進費等の経費など)及び一般管理費(本社の電話、水道光熱費等の経費)を引いたものが(E)営業利益です。営業利益は会社の本業での儲けを示し、売上高に対する営業利益の比率を表す売上高営業利益率を同業他社と比較すれば、本業の実力水準が大体わかります。営業外損益は営業以外での要素により生じた損益です。たとえば、借入金が多ければ(G)営業外費用である支払利息が増加し、逆に預金が多ければ(F)営業外収益である受取利息が増加します。これは会社の財務体質を反映しています。営業利益にこの営業外損益を加減すると(H)経常利益になります。経常利益は特別なことがない場合の経常的な収益力を示すものとして、従来わが国ではもっとも重視されてきた利益です。銀行等で借入をする場合銀行側が重視するのもこの経常利益です。




1年間の会社の活動がわかる損益計算書
※アサヒビ−ルの損益計算書(2001年12月期)
科     目 金    額
(A)売上 1,433,363
(B)売上原価 1,003,969
(C)売上総利益 429,394
(D)販売費及び一般管理費 351,616
(E)営業利益 77,777
(F)営業外収益
   受取利息
   受取配当金
   その他
6,579
1,877
652
4,048
(G)営業外費用
   支払利息
   その他
23,700
8,136
15,563
(H)経常利益 60,656
(I)特別利益
   固定資産売却益
   その他
5,774
4,320
1,453
(J)特別損失
   固定資産売却除却損
   その他
47,820
12,266
35,552
(K)税引前当期利益
   法人税、住民税、事業税
   その他
18,611
24,925
▲ 19,930
(L)当期純利益 13,616
 特別損益は文字どおり経常的でない特別な事象、たとえばリストラに伴う損失や固定資産を売却又は除却した場合に伴う損益などがあった場合に発生する損益です。経常利益に特別損益を加減して、法人税等を控除して(L)当期純利益が計算されます。
 P/Lでは、売上と四つの利益(売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益)の関係をしっかり把握することが第一歩です。そして、これらの数字の変化を過去何期かたどってみれば、会社の事業の状況が浮かび上がってきます。
【単位:百万円】


金融機関は損益計算書のココを見る

借入を申込んだ会社の損益計算書で金融機関は注目するポイントは7つあります。

1. 粉飾 減価償却をきちんとしているか。
2. 努力性 社員が頑張っているか。
3. コミュニケ−シュン 月次試算表を出してくれるか(毎月見ているとウソをつけない)
4. 赤字・黒字 2期連続赤字(役員報酬の多さが理由の場合は問題ありません)
5. 信頼 租税公課のなかに延滞税が入っていたり、税金の滞納があると印象が悪い
6. 社長の今後の損益予想 数字で語る。差額対策の発言が多い場合は好印象
7. 役員報酬 社長とNO.2の格差があまりなく結構高い、役割分担が確立

以上を考慮して金融機関は貸すかを決定するようですので、チェックしておきましょう