*貸借対照表と銀行の融資*
今回は、貸借対照表を見直して、強い体質を作る方法です。
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いくこ先生 |
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「貸借対照表に注目!」
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長引く不況で、売上は伸び悩み、コストの削減も限界に近づいています。借入金の返済は進まず、金融機関からは金利の引き上げを求められます。結局、なけなしの利益は右から左へと銀行の懐に入り、会社は衰弱するばかり・・。
現在、経営者が日頃重視する財務上の課題は、売上高と利益のアップです。経営者の多くが損益計算書を意識して財務を考えます。ただ、それだけでは「過剰資産」・「借入過多」という問題は解決できません。いま求められているのは、貸借対照表の見直しなのです。
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「資産の時価評価が第一ステップ」
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現在、主要な取引先の倒産や事業停止の頻発で、回収できない売掛金が発生しています。
デフレが進行しているので、貸借対照表の「資産の部」は、厳格に時価評価すると想像以上に小さくなることがわかります。逆に、「負債の部」にある借入金の返済はほとんど進んでいないのですから、結局、自己資本では補いきれず、債務超過になってしまいます。
金融機関はこうした実態をよく見て、中小企業に対する融資を厳しくしているのです。借入残高の維持やつなぎ融資といった、従来、経営者が当然と思っていた対応でさえ、金融機関が拒否するようになりました。
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そのため、自社の稼ぎ出した現金だけで対応できるよう財務を組み立て直さなければならないのです。
資産をスリム化することでデフレの影響をできるだけ減らすのと同時に、少ない資本投下で利益を稼ぎ、借り入れに頼らずに済むように手元の現金を大きくさせる経営こそが求められるのです。
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「建設会社の例」
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建設資材の製造を手がけるT建材店のT社長は、本社工場の土地7000坪を売却し、近隣に同じ広さの土地を借りて、本社や工場、倉庫などの設備を移しました。売却で得た資金の大半は、借入金の返済にあてました。 |
売却前は土地を担保に、地元の銀行から5億円を借りていました。金利負担は年間1000万円を超えていたそうです。建材の市場が冷え込む中、かろうじて稼ぎ出した利益は、金利の支払に消えていきました。もちろん、元金を返済する余力はありませんでした。
先行きの不安からT社長は会社の清算を考えるようになっていました。ちょうどその頃、近隣の会社が「土地を1坪当たり5万円で購入したい」という話を持ち込んできました。
「地価は今後も下がる可能性が高いし、7000坪もの土地の買い手はめったにあらわれない。土地を処分し、思い切って廃業するべきかもしれない。」と、T社長は考えましたが、問題が一つありました。その価格で土地を売却しても、借入金を完済するには1億円以上不足 |
T建材・T社長 |
するということでした。
悩みぬいた末、取引している地方銀行に相談に行くと、担当者は「社長の会社は本業では利益がでているのだから、いっそ、別の土地を借りて本社を移して事業を続けたらどうでしょうか?売却代金から移転費用を差し引いた残りを返済に回していただければ結構です。」と、提案してくれました。
T社長はすぐに数キロ離れた場所に同じ広さの土地を借りる話をまとめました。同時に、ほかの遊休地も処分して、借入金を1億円に減らしました。そして、借地に立てた新本社で再出発を果たしたのです。
借地料は、7000坪で月100万円。年間では1200万円になります。これは新たな負担になりますが、年600万円だった固定資産税の負担がなくなり、さらに、借入金が減少できた分、金利の支払が減り、資金繰りは、資産を売却する前よりも改善しました。T社長は、その結果生じた余裕資金を、環境に配慮した建材といった、時流にあった新製品の開発に投じています。
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「まとめ」
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長く続いたインフレ基調の経済では、資産を蓄えて「持てる会社」になることが、経営の目標の1つでした。土地などを抱えていれば含み益が生じて、業績が悪化してもその一部を切り売りすれば危機を乗り切ることができました。あるいは、資産を担保に金融機関から融資を得ることも可能でした。ほとんどの中小企業経営者が、利益をあげて税金をおさめるよりも、土地などの不動産を買っておいたほうが得と判断したのも無理はありませんでした。
しかし、デフレ経済の下では、これまでの常識は通用しません。固定資産を持っていると、その価値の目減りがせっかく稼いだ利益を削ってしまうのです。
金融機関に融資姿勢が厳しくなったいま、資金繰りのための現金は自ら稼がなければならなりません。在庫を減らし、売上を早く現金化することで、手元資金を増やすことができます。現金を増やして不況に負けない体質をつくりましょう。
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