|
|
消費税法の改正により、新たに課税事業者となる個人事業者が増えることになります。新設法人は設立後2年間の課税猶予期間があることから、これを契機に法人成りを検討する事業者が増えています。
法人成りとは、個人で行っている事業を法人に移転することですが、メリットとデメリットがあるので、税負担の比較はもちろん、経営の安定化や事業承継への影響等を総合的に判断する必要があります。 |
|
|
|
|
@ 税率構造の違い |
|
個人事業者の所得がある程度増えてくると、税負担の観点から事業を法人化したほうが有利ではないかと考えるようになるようです。
所得税や法人税の算出過程は複雑で、報酬の取り方や会計処理の方法によっても違ってくるので一概に損益分岐点を示すことはできません。
まず、個人事業にかかる所得税と法人にかかる法人税の税率を比較してみるとしたの図表のようになっています。 |
|
|
|
図表 所得税と法人税の税率比較
・所得税の税率 |
|
課税総所得金額 |
税率 |
330万円以下の部分 |
10% |
330万円超〜 900万円以下の部分 |
20% |
900万円超〜 1,800万円以下の部分 |
30% |
1,800万円超の部分 |
37% |
|
|
|
|
・法人税の税率 |
|
所得金額 |
税率 |
資本金1億円以下 |
資本金1億円超 |
年所得800万円以下の部分 |
22% |
30% |
年所得800万円超の部分 |
30% |
|
|
|
|
個人は、所得が増えれば増えるほど、税率が高くなっていくという超過累進税率になっているのに対し、法人は比例税率(資本金一億円以下は二段階)となっています。
税率だけで単純に考えると課税総所得金額が1,800万円を超えたら、法人にした方が有利といえますが、これは法人が役員報酬を支払っていない場合の判定です。実際の法人では、役員報酬が支払われるので、所得の分散が図られ、給与所得控除分が有利になるので、ケースによっては、年間利益が500万円程度でも法人成りの効果が生ずることもあるようです。 |
|
|
A 元入金制度がない |
|
個人においては、私的な金銭の出納が店主貸し(事業主貸)又は店主借り(事業主借)として処理され、その年の12月31日を過ぎてしまうとすべて元入金とされ、貸したお金も借りたお金も明確でなくなります。
しかし、法人においては、元入金制度がないため、貸付金又は借入金として精算するまで残り、利息の処理も行われます。これにより健全でけじめのある経営ができます。 |
|
|
B 事業承継に便利 |
|
個人経営の場合、事業主が亡くなると即相続の問題となるため、個人名義の預金が凍結され、遺産分割までの一定期間、業務に支障が生じることがあります。また、相続人間に争いがあると業務が完全に停止してしまいがちですが、法人だと影響が間接的になり、冷静に対処して、出資持分の相続という形に変えることができます。 |
|
|
C 対外的信用の増大 |
|
一般的に個人事業よりも法人の方が、得意先、仕入先及び新規の取引先開拓の面でも社会的信用は高くなります。事業を拡大させやすく、銀行等の金融機関、都道府県、市町村からの融資も容易になり、経営の安定化が図りやすくなります。 |
|
|
D 退職金 |
|
個人の場合は、事業主はもちろん、事業専従者も退職金の支給は必要経費として認められていません。
法人の場合には、役員及び従業員に対しては適正な退職金額であれば損金として認められます。
個人から法人成りした場合、長年従事していた従業員を引き継ぎ、法人が雇用した場合に、将来、退職するときには個人の事業を行っていたときに従事していた期間を計算の基礎に含めて退職金の損金算入額を計算することができます。 |
|
|
E 欠損金 |
|
個人の青色申告における繰越控除は3年間ですが、法人は平成16年度の税制改正で5年間が7年間に延長されています。 |
|
|
F 減価償却 |
|
減価償却において個人事業は強制償却とされていますが、法人は任意償却となっています。これは、法人が赤字のときに償却せず、青色欠損金の切捨てを防止できる効果があります。 |
|
|
|
|
|
@ 交際費 |
|
交際費について、個人においては事業に必要なものであれば何ら制限がありませんが、法人は資本金額に応じて損金不算入の規定があり、支出する交際費の一部又は全額が損金になりません。 |
|
|
A 設立費用 |
|
法人を設立するには設立登記をしなければならず、そのための定款作成・公証人による認証・登記申請等手間と費用がかかります。 |
|
|
B 維持運営コスト |
|
個人よりも法人の方が会計処理について厳密性が要求されます。また、事業遂行上の重要な意思決定は常に株主総会や取締役会に委ねられるため、決議内容について議事録を作成する必要があります。
なお、株式会社の場合には、一定期間ごとに役員及び監査役の改選手続きを行うことも要求されます。 |