24自販機 バカコンビ

第6話

桐生「今年も今日で終わりか、自販機で始まり自販機で終わったな。」
太田「今年はいろいろあったよ、俺なんか彼女に振られた時も自販機コーナーが癒してくれたよ。」
桐生「あれ、いつ彼女がいたの?いつも自販機一緒に行ってたよね。」
太田「春頃あまり行かなかったでしょ、
その頃自販機コーナーから車で10分の彼女の家によく行っていたよ。」

桐生「行きも帰りもいつも自販機コーナー寄っていたでしょ。」
太田「今でもその自販機コーナー行ってるけどね、さすがに思い出さなくなってきた。」

そう言いながら、太田の目は少し潤んでいた。

太田「自販機ってさお金を入れたら無言で食べ物出してくれるからさ、
ウィーンウィーンっていう音の間のわずかな時間に、いろいろな思いがこみ上げるんだよ。」

桐生「一人だと特にね。」
太田「でもやっぱ一番思い出すのは高校の頃行った自販機コーナーだね。」
桐生「最近行ってないけど、もう潰れちゃったんだっけ?」
太田「4,5年前に行った時にもうファミレスに変わっていたよ。」
桐生「もう跡形も残っていないんだ、高校時代の思い出が。そういやうちの高校もなくなったね。」

太田「最近自販機ホームページでよくメールもらうんだけど、
こういう自販機コーナーって1970年代からあるらしいよ。
俺たちが生まれる前からあるなんてすごいよね。」

桐生「この自販機って30年も前の物なのか、よくがんばっているなぁ。」
太田「最近コンビニとかファミレスとかたくさん24時間営業ができてる中、
生き残っていてすごいよ。」

桐生「完全に時代の流れに逆らってるね。」
太田「高校時代の思い出の地、東京生まれの俺たちにとってはここは故郷だね。」
桐生「そうそう、今里帰り中。相当冷えてきたよ、何でこんなところでずっといるんだろ。」
太田「自販機でコーヒーでも飲むか。」

この自販機コーナーは暖房なんて効いていない。
外との境界線は薄いガラスの扉だけだ、だからものすごく冷える。
自販機から出てくる異常にあたたかいコーヒーを飲むと、冷えた頬は一時的に熱くなった。

第7話に続く