1976年5月発売
(曲目)
今まで、紹介した4枚のアルバムのア−ティストは、皆、イギリス出身であります。このAerosmith が
初めて登場のアメリカのア−ティストとなります。実は、私は、アメリカよりもイギリスのロック・ミュ−ジシャン
の方が好きなのです。アメリカとイギリスのロックの音の違いについて、カリフォルニアの青い空と、
ロンドンの霧というようなたとえは確かに一理あろうかと思います。アメリカの方は陽気で、単純。やや深みに
欠けるきらいがあります。言うなれば、能天気。Beatles 登場後、Rockの世界での革新的な役割は、イギリスが主導権を
握る形になっていました。ハ−ド・ロックの分野でも、イギリスのLed ZeppelinやDeep Purple に対抗するグル−プは
なかなか出て来ませんでした。しかし、70年代の半ばには、このAerosmith が登場し、アメリカ・ロックが進化してきたこと
をうかがわせることとなりました。
このAerosmith の魅力の大きな部分は、Steven Tylerのボ−カルでしょう。普通のロック・バンドでも当然ですが、
特に、ハ−ド・ロックの場合、ハイ・ト−ン・ヴォイスでのシャウトができなければ、話しになりません。一流の
ハ−ド・ロック・グル−プには、皆、ス−パ−・ヴォ−カリストがいます。ZeppelinのRobert Plant、 PurpleのIan Gilan、
Queen のFreddie Mercury 、Journey のSteve Perry らがまさにそうです。Stevenも彼らと同じ位置にいると考えて良いでしょう。
このアルバム"Rocks" は、バラエティ−に富んだハ−ド・ロック・ナンバ−が満載された、ハ−ド・ロックの代表作です。
まず、1曲目の"Back In The Saddle"から、エンジン全開。イントロのドラムとベ−スで、期待感を高めさせ、そして一気にStevenの
ボ−カルで爆発。アルバムの1曲目から、はじけるばかりのAerosmith のエネルギ−がほとばしっています。その次は、シングル・ヒットした
ミディアム・テンポのリズムにStevenが乗って歌う"Last Child"。スピ−ド感あふれるサウンドで突っ走る"Rats In The Cellar"。
Stevenのハイト−ンでのシャウトが素晴らしい"Nobody's Fault"。ややファンキ−なギタ−のリフが印象的な"Get The Lead Out"。
ハイ・スピ−ドのナンバ−からミディアム・テンポのナンバ−まで、緩急自在、硬軟両用で、ハ−ド・ロックでも多種多様の曲が存在するという
ことを改めて感じさせる好アルバムです。このハ−ド・ロックの華々しい宴は、最後"Home Tonight"というStevenの物悲しいボ−カル、中間奏での
泣かせるギタ−のアドリブが光る、ブル−ジ−なバラ−ドで幕を閉じます。素晴らしい始まりと終わり。余韻がいつまでも残ります。
つい、この間も来日して、健在ぶりを示しているAerosmith。 今後も、このような良質のロックを創りつづけてほしいものです。