1978年発売
(曲目)
同じロックでも、イギリスのやや陰鬱な感じのする音に対し、アメリカは、全く翳りを感じない明るさを全面に出した音であります。そうしたアメリカ・ロックの典型的な音を感じさせるのが、ウエスト・コ−ストから出現したこのVAN HALEN であります。ボーカルのデヴィッド・リ−・ロスに象徴される底抜けに明るいキャラクタ−が、このバンドの持ち味ですが、もう一つの大きな音楽的な魅力が、エドワード・ヴァン・ヘイレンの超絶ギタ−・テクニックであります。
ギターと言えば、左手で弦を押さえ、右手で弾くもの、と誰しもが常識として考えていた時、そうした固定観念を根本からくつがえし、ライト・ハンド奏法でギタ−界に革命を起こした天才、それが、エドワードです。このアルバムの2曲目の
”Eruption”で、初めて聞かせたライト・ハンド奏法は、右手でも弦を押さえることによって、今までにない音のつながりが可能になり、ギターの可能性を一気に高めたまさに画期的な奏法で、ギタリストは、皆、ショックでぶっ飛んだものでした。その後、この奏法は、さらにタッピングという方向に進んでいきました。(”Mean Street”)新しいアルバムが出るたびに、今度は、どんな新しいことをやっているのかを期待させ、その期待をいつも裏切りませんでした。今でこそ、エドワードのギターの楽譜は、街にあふれていますが、昔はほとんど有りませんでした。なぜならば、どのように弾いているのかわからなかったからなのです。このような、ギタリストはエドワードの他はいません。
それまで、フュージョン系のギタリストに押されぎみになっていた、ロック・ギタリストからの強烈なる返礼とも言うべきもので、これ以降、ロック・ギターは、一大進化を遂げ、活気を取り戻していったのでした。その意味で、エドワードは、
ロック・ギター界の救世主と言えるでしょう。
このアルバムは、VAN HALEN のデビュー・アルバムですが、若くて荒削りな部分が、逆に、彼らの魅力を高めていると言えましょう。キンクスのナンバーである
”You Really Got Me” は、オリジナルよりもずっとワイルドで、彼らの初期の
代表作でしょう。”I'm The One”のスピーディーなエドワードのギターは、とんでもなくかっこいいし、”Ice Cream Man”のブルージーな雰囲気は、彼らのルーツなのでしょう。
今や、ロック界の大御所となりつつある彼らですが、彼らの原点がここに有ります。