皆さんが病院にかかったとき、色々な検査を受けることがありますよね。
でも自分が受ける検査について、どれだけの人が理解しているのでしょうか。
ここではそれらの検査について説明したいと思います。
とは言っても、検査には様々な種類があり、中で行っている検査は全く異なっています。
そこで、検査の種類によってジャンル分けをして説明していきます。
『生化学的検査』
『血液学的検査』
『免疫・血清学的検査』
『一般検査』
『微生物学的検査』
『生理学的検査』
『病理学的検査』
『輸血検査』
生化学的検査
生化学検査とは、血液(血清)や尿、その他穿刺液などの液体の検体を用い、その科学的成分を分析する検査です。 人の体は有機、無機様々な物質で構成されており、絶えず代謝され変化しています。 これらは病気などによって科学組成が質的、量的変化をするので、それを分析することによって病気の診断などがついたり、健康状態がわかります。
検査の種類は非常に多く、内容としてはおおざっぱに、『電解質』、『タンパク』、『糖』、『脂質』、『その他の有機物』、『酵素』、『ホルモン』、『機能検査』などに分けられます。
この中には腫瘍マーカーという検査もあり、癌だってわかったりします。
生化学のデータからは、どの値が高いからどの病気だとは一概には言えません。 しかし色々な種類の検査データをつきあわせることで、初めて病気の診断がつきます。 これは、検査全体にも言えることです。
血液学的検査
血液検査とは、患者さんから採血された血液より、その中に含まれている赤血球や白血球などの各種の細胞を調べる検査です。
血液は色々な細胞が集まって構成されています。 この細胞の数や種類は病気や出血などによって変化してきます。 この細胞をカウントしたり、機能を調べたり、または血液の固まり具合を見ることによって、病気の診断などがついたり、健康状態がわかります。
どのような検査があるかというと、
- 血液細胞の検査。
- 血液中に含まれる細胞をカウントして数を調べたり、本来出来ない細胞(白血病細胞など)が出ていないかを調べます。
- 凝固系の検査。
- 血清を用い血液が凝固する時間を調べたりします。 また患者さんの耳たぶに針を刺し、血が止まる時間を計ったりします。 そのほかに血管の強さも調べたりします。
- 特殊な検査。
- 骨髄穿刺した骨髄を染色したり、白血病の細胞の染色体を調べて遺伝子の異常があるかどうか見たりします。
などがあります。
また、血液検査は採血条件が色々あったりするので、検査によっては何本も採血されることがあります。
免疫・血清学的検査
免疫検査とは、抗原抗体反応を用い主に感染症の検査をします。 患者さんから採血された血清を用い、その中に含まれる各種ウイルスや細菌に対する抗体を調べたりします。 人は感染症にかかるとそれに対する抗体を作ります。 これを調べることにより、現在又は過去の感染症にかかった形跡がわかります。 抗体だけではなく抗原(病原体そのもの)も調べます。(こっちの方が難しい)
抗原抗体反応を利用する検査なので、感染症以外でもこれを利用した検査すべて含みます。
具体的にどのような検査があるのかというと、
- 感染症の検査。
- A型、B型、C型肝炎等の肝炎関係。 その他梅毒、トキソプラズマ、サイトメガロウイルス、EBウイルスなど。
- 自己免疫の検査。
- リウマチ因子、抗甲状腺抗体、抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体(→原発性胆汁性肝硬変)など。
- その他の検査。
- 免疫電気泳動(→多発性骨髄腫)、免疫グロブリン定量、栄養指標、CRP(→炎症)、腫瘍マーカーなど。
などがあります。(ほんの一部分です)
免疫検査の場合、その性質から結果が異常であればその病気であると言い切れる検査が多いです。
一般検査
一般検査とは、主に患者さんのおしょうすいを検査します。 尿は腎臓で血液が濾されてできるもので、体はいらなくなった老廃物を尿中に排泄します。 この性質から体に何か異変や病気があったりすると、尿中に含まれる物質も変化してきます。 また腎臓の病気でも尿は色々変化していきます。
尿を調べることはこれらの異常の発見に役立ちます。
また、一般検査では糞便の検査もします。
具体的にいうと、
- 尿検査。
- 尿中のPHや蛋白、グルコース、ビリルビン、ウロビリノーゲン、潜血などを調べます。 一概には言えませんが、蛋白のときは腎臓を、ビリルビン&ウロビリノーゲンの場合は肝臓を、潜血のときは結石を疑います。
さらに、尿沈渣の調べます。 この検査によりさらに細かく病気の状態がわかってきます。 たまに癌細胞が見つかったりもします。
- 糞便検査。
- 便の中に含まれる潜血(便潜血)を検査します。 この検査により、大腸癌などの早期発見に役立ったりします。 その他にも消化管出血の有無などもわかります。
また、便中の寄生虫卵も調べます。
などがあります。
この検査も生化学と同じく、検査結果から病気を言い当てられるとは一概には言えません。
この検査は、尿を採るだけなので採血に比べ患者さんの負担が少ないと言えます。
微生物学的検査
微生物検査は、体のあらゆる所を検体とし、様々な培地を用い菌を培養し、その生科学的性状や染色の状態から同定する検査です。 検体としては、糞便や尿、喀啖、血液、その他分泌液などが用いられます。 そのほか体の部分としては、皮膚から集めたり、咽頭、鼻腔、膣、尿道などから綿棒で採取したものを用います。 そのほかにも、どの抗生物質が効くかを調べる病原微生物の薬剤感受性検査もします。 最近世間を騒がせている、腸管出血性大腸菌O-157(H7)やMRSAなどもここで検査します。
大腸菌O157の検査を簡単に説明すると、
便の培養 → 次の日にコロニーを見て大腸菌を疑う時は、確認倍地で再培養 → 次の日に試薬を使い、大腸菌を同定 → 血清型凝集テストでふるいをかける。 病原性を疑わせる結果の場合、再テスト → O157を疑わせる結果の場合、詳しい血清型テストにかける → O157と同定
こんな感じです。
O157と判定してもこれだけでは病原性があるかどうかわかりません。
病原性のあるのはO157,H7なので、鞭毛抗原の『H7』をさらに調べなければなりません。
このように微生物検査は相手が生き物だけに、培養するのに時間がかかります。 検査の種類にもよりますが、早くて48時間ぐらい、最も遅い検査の結核菌などは最長8週間もかかります。
生理学的検査
生体が常に健常な生活活動を営むためには、外部環境が変わっても生体の内部環境をいつも保とうとする働き、すなわち恒常性が働いています。 しかし、病気などになると、この恒常性に乱れが生じてきたりします。 この体の異常を電気的や機械的(機能的)な方法で計測し、あるいは超音波なども使って調べる検査を生理学的検査といいます。
臨床検査技師に認めれれている生理学的検査には次の8項目があるので、これについて簡単に説明すると、
- 心電図検査
- 心臓が発する電位差を測定することにより、不整脈、心筋梗塞(予後も含む)、電解質異常、脚ブロック、WPW症候群などその他もろもろの心臓に関する異常がわかります。
- 心音図検査
- 心臓の音(聴診法)を視覚化(グラフ化)することにより、客観的な診断法とする検査です。 心臓の弁の異常や狭窄、血液の逆流、心房中隔欠損などがわかります。
- 脳波検査
- 大脳の神経細胞の電気活動を記録する検査です。 てんかん、脳血管障害、頭痛・めまい、神経疾患など診断の為の検査です。
- 筋電図検査
- 骨格筋が収縮するときに生じる活動電位を記録する検査です。 筋ジストロフィー症、多発性筋炎、筋萎縮性側索硬化症など神経・筋原性の疾患や末梢神経伝導速度などがわかります。
- 基礎代謝検査
- 安静時の酸素摂取量を調べることにより、基礎代謝がもとめられます。 病気によって基礎代謝が上がったり下がったりするので、その診断の参考になります。
- 呼吸器能検査
- 呼吸の『吸う』『はく』を調べることにより、肺活量や肺のガス交換、拡散機能などの肺機能がわかります。
- 脈波検査
- 末梢細動脈の容積変化を見る検査です。
心臓弁膜症や大動脈疾患、レイノー病などがわかります。
- 超音波検査
- 超音波を使い、心、肝、腎、その他体の色々な臓器を調べます。 心の場合は弁の状態などを、そのほかは腫瘍や結石などをしらべます。
生理学的検査は採血と並んで、臨床検査技師が患者さんにふれられる数少ない場所でもあります。
病理学検査
病理学的検査は、生体の一部から切除してきた組織片から顕微鏡標本を作り、それを鏡検してその標本に中にみいだされる病変によって診断を下す検査です。(最終確認は病理医)
病理検査の目的は癌細胞の発見の為と言っても過言ではないでしょう。
検体として、体のあらゆる組織、尿、たん、その他色々な分泌物などを用います。
具体的にどのように検査をしているかというと
- 標本作り
- 組織などを適当な大きさに切り出し、それをホルマリンなどで固定し、パラフィンで固めて薄切します。 その薄切した切片に目的に合わせた様々な染色をし、マリノールなどで封入して標本を作ります。
- 鏡検
- 細胞診スクリーナーの免許を持った技師は、その標本を見て診断を下します。 (最終確認は病理医)
- その他
- 手術中に出された組織をすぐに検査して、10分ぐらいで結果を返す術中迅速検査。
病気の診断などの為に行われる病理解剖の補助。(施設によってしないところもある)
などがあります。
病理検査は癌細胞を見落としたりすると患者さんの予後に関わることがあるので、責任の重い検査です。
輸血検査
輸血検査は手術などで出血する際に、患者さんから採血された検体を元に供血者の血液を輸血しても大丈夫かを主に調べる検査です。 普通の人が知っている血液型はABO、Rhだと思いますが、実際には沢山の血液型が存在します。(A型やB型、Rhの中さえ細かく分けられます)
これらの血液型の検査(まれな血液型も含む)や不規則性抗体の検査、クームス試験などの検査をします。
もし、まれな血液型や不規則性抗体などがあって普通の血液が輸血できない場合、輸血できる血液を検査して探し出したりもします。
そのほかにもHLAの検査やHIVやサイトメガロウイルスなど輸血に関係する感染症の検査もします。
輸血検査はミスが患者さんの命に関わることがあるので、責任の重い大変な検査です。
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