マーラー
交響曲第五番

01/23/'07 10:28 last modified.

只今の時刻:
録音:1986年1月23日フランクフルト、アルテ・オーパー
演奏:フランクフルト放送交響楽団
指揮:エリアフ・インバル
使用楽譜:Universal Edition AG Wien
(ヘッセン放送との共同製作)

このCDこそ、私がマーラー、そしてインバルに出会った最初のCDである。小学校の五年生くらいであろうか。当時日本ではやりはじめていたマーラーのCDを母親が買ってきた。初めて聴いた時、それまで聴いたことのある音楽とは明らかに一線を画した独特な音楽に、小学生ながら私は愕然とした。当時小学生だったので、友達にマーラーといっても理解してもらえなかったのを憶えている。高校生になって、受験勉強をしている私は、このCDを毎日数回ずつ聴き、私にとって栄養剤のような役割を果たしてくれた。

ところで、演奏の話にはいると、なんといっても、トランペットが素晴らしい。想像するに、おそらくロータリーではなくピストンのトランペットで演奏されているが、全曲を通して、突き抜けるような、そして艶のある透き通った音色で素晴らしい歌を聴かせてくれる。冒頭の、徐々に膨らんできて、そして張り裂けんばかりの音量に達するファンファーレ。その後も、まるで疲れると云うことを知らないかのような、出てきたと思ったら途端に他を制圧してしまう絶倫な演奏。素晴らしいとしか云いようがない。これはトランペットだけでなく金管楽器全体がそうであると云えよう。豊かな音色で心をつかむホルン、ギラギラした音で突き進むトロンボーン。どれも素晴らしい。フランクフルト放送交響楽団の金管楽器は、音色、節回しなど、常に私の「お手本」であり続ける。残念なのは、このあまりにも素晴らしい金管楽器のために、弦楽器、木管楽器が霞んでしまっている点である。木管楽器も大変素晴らしい演奏をしている。第四楽章も名演であると私は思う。しかし、第五楽章のホルン−ヴァイオリン−ホルン−ファゴット−オーボエがきこえてくると、その素晴らしささえも忘れ去られてしまう。ここまでくると、金管楽器の本領発揮である。木管楽器と弦楽器は、もはやアシストでしかない。華麗に歌い続けるホルン、輝かしいテーマを奏でるトランペット、トロンボーン。ロンド形式で、二つのテーマが次から次へと形を変えてたたみかけるように演奏される。このとき心に熱い衝動が湧き上がってくるのは何故だろう。最後は、弦楽器の伴奏に乗って、金管楽器の光り輝くコラールで幕を閉じる。


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