チャイコフスキー
交響曲第四番

01/23/'07 10:28 last modified.

只今の時刻:
録音:1989年11月フランクフルト、アルテ・オーパー
演奏:フランクフルト放送交響楽団
指揮:エリアフ・インバル

この録音は、1996年度サマーコンサートにおいて、常に私のお手本であり続けたCDである。その理由は、以下を読んでいただければわかるであろう。それでは、「闘うバストロンボーン」と「怒りのテューバ」を堪能していただきたい。

まず冒頭。ここで既に彼らの暴走(暴奏?)が始まっている。きわめて理性的な、引き締まったホルンのファンファーレ。その後の下降音型でトロンボーン、テューバが入ってくる。まずバストロンボーン、続いてテナートロンボーン。想い入れの感じられる音だが、まだ「理性」の二文字が頭の中に残っているらしい。しかし、その後にあらわれるテューバはどうだろう。入ってきた途端、物凄い音量で他を圧倒し、更に聴く人の注意を全て奪い去るクレッシェンド。(よく聴くと、実はバストロンボーンも便乗している。)続いて入ってくるトランペットのことはあまり考慮されていない。しかし、トランペットも負けじと食らいついている。そして、12/8の主題。ここは大変綺麗に、正確に演奏されている。しかし、このあと、時折物凄い音で「ベリッ」「バキッ」といっているのは矢張りバストロンボーンであった。大海の孤島のような八分音符一つといえども、逃さず聞こえるように吹くという彼らの心意気は称賛に値するであろう。coda以降、彼らは矢張り飛ばしている。ヘ音記号でいう、五線の下のFの長い音は圧巻である。第二楽章。(トロンボーンとテューバはtacetなので)大変理性的な演奏に仕上がっている。ややスローテンポで、しんみりとしていて大変いい音である。各木管楽器がとてもいい味を出している。第三楽章。一瞬で終わるので、聴き逃さないようにしなければならない。昼間部の、木管楽器の連結がいい。そして第四楽章。「怒濤のシンバル」も加わって、まさに「火を噴く」彼らを止められるものは、もう誰もいない。まず冒頭の「ふぁーみぃーっれっどっ」で度肝を抜かれる。直後の弦楽器による速いパッセージは、もはや聴く人の意識には届かないであろう。その後も、理性的なオーケストラの「伴奏」に乗って、パート譜を書き取れそうな彼らの演奏が続く。二度目と三度目の「へべれけとうちゃんしんだ」いや、「あなたもきょうさんとういん」じゃなくて「ちいさなしらかばきって」の主題。これは当然といわんばかりに炸裂している。特に三度目は素晴らしい。掛け合いになっていたはずのトランペットが聞こえない。そして、これが三度目にあらわれた後の、繰り返される第一楽章のファンファーレでは、いや、これはもうファンファーレではない。トランペットはかき消されて聞こえない。トロンボーン、テューバが牛のような雄叫びをあげている。その後も彼らの素晴らしい演奏は続く。最後のFは、息がなくなって吹き直しているのが聞こえる。


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