上高地 撮影旅行記

私は上高地へ何度も行くので、こんな会話が・・・。
「越智 (おち) さん、 休みは、どこへ行くンですか?」
 「上高地へ行きます」
「越智さん こんどはどこへ行くンですか??」
 「また上高地へ行きます」
「ほう、また上高地ですか??」
たびたび上高地へ行くので、いつの間にか
「越智さん、また上高地行きでしょう??」
となってしまった。

夜行バスで発ち、上高地に数泊して帰って来るのが多いけれど、
土曜日の夜行バスで行って、日曜日の昼に上高地を発つバスで帰ることもある。
それを知った友人が「越智さん タフですねぇー」。
「そんなに上高地がいいのですか ???」と。

上高地へ友人を連れて行ったり、写真を見に家へ来てもらうと、
「越智さんが上高地へよく行く訳が解った・・・」と。


中部山岳国立公園上高地。

長野県南安曇郡 (あづみぐん) 安曇村上高地。
長野県といっても北アルプスを境に、お隣は、もう岐阜県です。
登る人たちの登山基地であり、一般観光客も多く、年間200万人近い。

上高地へは電車(JR)や、上高地直行夜行バス(アルピコ)で行きますが、 
写真を撮る場合、光線状態が最高に良い早朝に着くバスを選ぶことも多い。

東京を23時頃に発車したバスは首都高速道路に入り、中央高速道路へと向かいます。
そして、山梨県勝沼というところで高速を降り、一般道路を走ります。
途中でトイレ休憩を2〜3度(運転手さんの選択)して、諏訪・塩尻・松本市内を通り、
新島々を経て上高地線へ入ります。 ここからは、もう、山道です。

上高地線を進んで行くと、映画になった『あヽ 野麦峠』、その野麦峠への別れ道があります。
バスはだんだん高度をあげて、深〜い谷がバスの左に、右に・・・。
20コのトンネルを通り抜けて登って行きます。
最後の20コ目のトンネルを出て右にカーブすると、ゴツゴツした岩肌の焼岳 が左手に見えます。
ここから上高地です。 翌朝、6時前後に着きます。

バス終点までは、あと、5分ほどですが、二つ手前の大正池で降ります。
大正池から自然研究路を歩くため。
ここは、海抜1,500メートル。 つまり、五千尺という訳です。
標高が100メートル上がるごとに、温度は約0.6度下がるので、
海抜1,500メートルの上高地は、平地より約9度も気温が下がる訳です。
バスを降りると、夏でも寒いときがあります。

上高地では、ゴールデンウィークの頃、やっとフキノトウが雪のそばで、顔を出した ばかりです。
上高地の新緑は、6月です。
私が上高地で一番きれいと思うときは、6月10月です。

上高地には池が三つあります。その一つに、大正池があります。
この池にそそぐ梓川の上流には、槍・穂高連峰があり、
槍が岳を源流として流れる梓川は、槍や穂高など北アルプスの雪解け水をはこんでいます。
大正池は清冽な水です。

大正池の対岸ある焼岳は活火山で、大正4年6月に大噴火をして梓川をせき止め、
大正池ができました。そのとき大木の林が水没して枯れ木群となって、池の中に林立しています。

ときにはガスって、山も近くの木々さえも見えないときがあります。
撮影できない・・・なんて、ガッカリしないで、カッコウやウグイスやブッポウソの声を聞きながら
待っていると、次第にガスが消えて残雪の西穂高岳・奥穂高岳・前穂高岳・明神岳と、
山々の連なりがうっすらと見えてきます。
枯れ木群が霧の中で濃淡をつけた風景は、墨絵のようでもあり、幻想的な光景です。
それを撮った写真に、朝霧の大正池静寂大正池煙る大正池といった題名をつけました。
ガスが濃くなったり晴れたりしながら、
やっと、穂高連峰の頂上にスポットを当てたかのように、右から左へ陽がさします。
この瞬間、待っていました。

刻々と変わる風景の露出を計っては、カメラの絞り値とシャッタースピードをセットしては撮る・・・
また露出を計っては撮る・・・趣味なのに、なんと忙しい。
いままで見えていたかと思うと、また、ガスったり、晴れたり、あるときは、穂高の中腹に帯条の雲が
右から左へ、ゆっくり流れることもあります。
刻々状況が変わります。自然のすばらしーーーい光景に、登山者も観光客も感動。
感動する・・・シャッターを押す。

仰ぎ見るほど高ーい大きな穂高の山々。
やがて、その雄姿がクッキリと逆さになって大正池に映っています。穂高倒影です。
天然の鏡を持つ大正池に、程よい残雪の穂高連峰の頂上を池の畔に立つ足元近くまで映しています。
左を見ると焼岳の倒影も水に映っています。芽吹いた白樺林も少し揺れて映っています。
騒音も波もなく、静寂そのものです。

鏡のような水面に映った穂高連峰と実像の穂高連峰を一枚のフィルムに。
その写真を人に見せたら「どっちが上 ?」と聞かれた。
それほど、水面が鏡のようです。

朝、まだ陽がささないうちから太陽が昇るまで、刻々と変化する感動したときの光景を画像として
残して行きます。
時間によっての違い、日によって、また、週・月・季節・年によって違う大自然の光景。
いつ来て見ても、あきることがない上高地です。

その上高地には、『渡り』をしない、マガモがいます。
お母さんカモ が、こどものカモを5羽〜7羽連れて泳いでいます。こどもはまだ産毛。
大きさは握りこぶしほどで、かわいい。
写真を撮るとき波を立たせるので、邪魔になるときもあるけど・・・本当にかわいい。
可愛いカモにエサを上げる人もいます。
しかし、野生の生き物がどんなに可愛くても、自然の中で彼らに採餌させるほうが親切で、
それが愛情です。

今までの朝霧はウソのように晴れ、穂高の上には青空にポッカリと白い雲が少しはやめに
左から右へと流れてゆく。
穂高岳の残雪と岩肌にすっかり陽が当たり、その下の山が影っているだけ。
川岸のヤナギやカラマツの若い緑が、実に美しい。

梓川の清流が、岩に砕けて白くなって流れてゆきます。
岸辺には、上高地の春の花を代表するニリンソウエゾムラサキが風に揺れて、
「こんにちは、いらっしゃい」
とお辞儀してくれているようです。 小梨の花も満開です。



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