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蚕の吐く糸
吐糸口から糸を吐いているカイコ。
左右の絹糸腺から吐糸口につながっている。
カイコの吐く糸は大変細く、1個の繭の糸の長さ(繭糸長)は1300m〜1500mもあり、
繭3個の繭糸長は、富士山(3776m)の標高をはるかに超えます。

絹糸の太さ(繊度)は、デニール(d)という単位で表し、1デニールは糸長450mで0.05gと定められ、
デニール数値は、糸長900mをg数で表し、dと表記されています。 例、品種「黄白」は2.8d。
3dの繭糸を標準の太さとし、それ以上は太繊度になります。最近、約1.6dの極細繭糸を吐く品種もあります。
繭糸の構造

繭糸は断面図のように、
カイコの体内の左右にある絹糸腺から出るフィブロインタンパク質を、
セリシンタンパク質でおおった形になっています。

フィブロインは、繊維上のタンパク質で繭糸の70〜80%。
セリシンは、糊状のタンパク質で繭糸の20〜30%。

繭糸の顕微鏡写真
顕微鏡で繭糸を見ると、2本のフィブロインと、フィブロインを取り巻いているセリシンが見えます。
どの繭糸もフィブロインが2本であることが解ります。
その繭糸が交差するところは、はみ出すほど多量のセリシンで接着されています。

カイコが繭をつくるとき、糸を蔟(まぶし)に接着したり、糸の交差点を接着するときは、
頭を振って接着しているようすが観察できます。
繭は、繭糸をセリシンで糊付けしたように
かためて形成されています。
繭の外側をおおっている真綿のような繭糸は、
カイコが繭を作るときに吐いた足場糸。
繭糸の利用
1本のフィブロインは、約1000本以上のフィブリル繊維が集まり、
さらに1本のフィブリルは、ミクロフィブリルの束からできているそうです。

その繊細な繭糸の構造からは、絹の柔らかさ、しなやかさ、軽さ、保温性、光沢などが生れ、
純度の高いタンパク質でできている天然繊維の繭糸からは、衣料品がつくられるだけでなく、
食品、化粧品にも利用されています。
絹製品は着物、ウェディングドレス、スカーフ、ネクタイ、シルクパウダー、食品、化粧品、
カーシートのコーティング剤などにいたるまで、多種の製品に利用されています。

セリシンの利用
フィブロインがセリシンに包まれたままの繭糸は、繭から糸繰りによって生糸となります。
生糸を精練してセリシンを取り除いて絹糸にする際の精錬液は、廃液として捨てられていました。
平成13年以後、セリシンの価値が見直され、絹セリシンのスキンケアとして、女性用の洗顔石鹸、
化粧水、乳液、美容液など、多種の製品が生まれました。

足場糸の利用
足場糸は、カイコが繭をつくるとき、足場をつくるために吐いた真綿のような繭糸です。
繭層を取り囲んでいる足場糸を取り除き・・・取り除いた繭糸を毛羽(けば)といい、
繭毛羽は精錬されずに紡績され、織物、編物などになった後、精錬します。
やわらかく、膨らみを持ち、暖かい、などのフ利点があります。

製品化する繭を得るには・・・
養蚕農家はカイコが繭を作ってから羽化する前に、蔟(まぶし)から繭をかき出します(収繭)。
蛹化して日数が経たないときは、蛹がやわらかいため、体液で繭の内側がよごれ、
羽化後では繭に穴があいて*糸が切れたり、繭に汚れが発生します。
繭をつくり始めてから約10日後は、蛹の皮膚が堅くなっているため、収繭するのに好都合です。

*カイコが羽化するとき、成虫が繭内から繭層を湿らせてセリシンを溶かし、繭糸と繭糸の間隔を広げ、
繭糸を切らずに成虫が出てきますが、糸がまったく切れない訳ではありません。
糸が切れる、汚れるなどで糸繰りに手間がかかるため、繭をつくり始めてから約10日後に収繭します。
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