ドラ1の採点簿(41年度オフ入団選手編)

〜入団後10年間の活躍を振り返る〜

 

Oカンファレンス

 卯木と山井の即戦力投手に9球団の1位入札が集まったドラフトだった。特に卯木は150km/hに迫るストレートを中心に投げ込む速球派投手としてドラフト前から注目を浴びていた投手であった。
 結果、その卯木を獲得したのは強豪東北であった。入団1年目から13勝(6敗)を挙げ、2年目にも11勝。東北のエースとして期待されていたが、その後2桁勝利は1度のみでここ数シーズンは中継ぎでの投球が中心となっている。これまでのところ無冠でもあり、A評価まではいかないと判断した。
 山井には3球団の指名が入り、抽選の結果、旭川(現丸ノ内)に入団が決まった。旭川、丸ノ内で先発の柱として登板を続けているが、10シーズンで登板が少なかった47年度を除き、毎シーズン2桁の負けを記録している。バランスに優れた投手であったが、最近は能力の衰えも見られてきており、今後大きな活躍は厳しいかもしれない。
 その他の投手をみてみると、それなりの活躍は見られるものの小粒感は否めないか。10シーズンの通算成績をみると、花園の細包が26勝(11敗、16S)、三木の新江が36勝(22敗、4S)、竜安(現岐阜)の宜野座が45勝(68敗)、横浜の奥條が35勝(40敗、4S)となっている。沖縄の野澤については49年度で引退しているものの、その抜群の投球技術で安定した成績を残している。26歳入団のドラ1即戦力投手としては最低限の成績を残していると評価したい。
 野手に目を向けてみると、単独指名の浜松の今澤以外はすべて、はずれ1位入団となっている。とはいえ、入団後のそれぞれの成績をみてみるとまずまずの成績を残していると言えるか。
 その中でも佐久の城水は、そのシュアなバッティングと堅実な守備で佐久の中心選手として活躍している。47年度には首位打者および最多安打(およびベストナイン)を獲得している。
 新居浜の矢尾田も2年間は1軍登録がなかったものの3年目にブレーク。いきなり捕手でフル出場、3割を打ち、新人王を獲得している。しかし、最近は守備力および肩の衰えから、出場機会を失っている。
 福岡の戸原は攻守にバランスの取れた選手と入団し、長打力をアップさせた46年度以降、レギュラーとして定着している。石見(現宇部)の長張は入団3年目の44年にそのパワーを生かし、本塁打王と打点王、ベストナインを獲得している。46年度に横浜に移籍後もその長打力で横浜打線を支えている。
 一方、浜松の今澤は入団1年目に93試合に出場するものの、2年目からは1軍登録されず、46年度シーズンをもって引退を余儀なくされている。浜松にしては珍しく、大失敗のドラ1だったと言えるだろう。

投手
チーム 選手 入団 評価 試合 防御率 セーブ 奪三振 主なタイトル 備考
花園

細包

は(18) B- 214 4.35 26 11 16 340
三木 新江 2(18) B- 170 4.12 36 22 4 488
沖縄 野澤 は(26) B 164 3.34 46 30 5 411 49年→引退
東北 卯木 6(22) B+ 218 4.17 79 37 3 973 ☆×3
竜安*2

宜野座

は(22) B- 212 5.36 45 68 0 505
横浜

奥條

は(21) B- 186 4.76 35 40 4 461
旭川*3

山井

3(22) B- 276 5.66 56 125 0 1011
野手
チーム 選手 入団 評価 試合 打率 安打 本塁打 打点 盗塁 主なタイトル 備考
佐久

城水

は(22) B+ 1218 .290 1416 97 533 222 首、安、9、☆×4
新居浜

矢尾田

は(25) B 640 .270 570 70 262 45 新、9、☆×2  
浜松 今澤 単(25) C 93 .212 69 13 39 2 46→引退
福岡 戸原 は(21) B+ 963 .284 946 92 467 130 9×5、☆×5
石見*1 長張 は(21) B+ 1084 .259 881 211 592 27 本、点、9、☆ 46→横浜

*1:現宇部、*2:現岐阜、*3:現丸ノ内
入団の「数字」は競合球団数、「は」ははずれ1位、「単」は単独指名、カッコ内は入団時の年齢

 

Uカンファレンス

 一方のUカンファレンスは出村一色のドラフトとなった。速球派の高卒ルーキーとしてその将来性に人気が集中し、ドラフトでは史上最多の9球団からの1位入札を受けることとなった。
 抽選の結果、出村は屋島に入団し、その後の活躍は周知の通り。2年目から先発の一角としてフル回転し、45年度以降7シーズン連続で2桁勝利を続けている。その間に獲得したタイトルは14を数え(他にも3度のMVPを獲得)、球界を代表するスーパースターとなっている。残念なことにキャンプでスタミナがダウンし、52年度より中継ぎに回っているが、年齢的にも一層の活躍が期待される。
 出村に注目が集まりすぎていたが、他の投手にも逸材が隠れていた。宗定は伊勢と京都(現大分)の2球団で競合し、抽選の結果京都に入団した。サウスポーのアンダースロー、早いストレートを持つCタイプという異色の投手であったが、3年目から先発の一角として活躍、スタミナを一気にアップさせた46年度には16勝で最多勝を獲得している。さらには48年度には20勝を挙げ再度最多勝に輝いている。その後も、大分投手陣の柱として活躍を続けている。
 さらに注目すべき投手がいた。盛岡が単独指名した三杯である。150km/hを優に超す高卒投手であったが、これほどの能力の投手が単独指名だったことにも驚かされる。三杯の頂点は先発できるスタミナを持っていた45〜48年度の4シーズンで、その間獲得したタイトルは8つ。特に4年連続で最高勝率を獲得したのは圧巻であった。現在は主に中継ぎとして安定したピッチングを続けている。
 その他の投手では、345試合登板で31勝(40敗、8S)の厚木(現御殿場)の米内と189試合登板で43勝(51敗、2S)の世田谷の一澤が最低限の活躍をしていると言えるか。津の境谷と多摩の島居はドラ1としてはやや物足りない成績か。伊勢の川邊は4シーズンで現役を引退しており、残念な結果となっている。
 野手に目を向けると4人全員が出村のはずれ1位指名選手となっている。北海の佐羽内は俊足とシュアなバッティングで4年目から1軍に定着。さらに、守備力を生かし外野にコンバート後はほぼフル出場の活躍をみせている。これまでタイトル獲得は無く、地味な印象を受けるが、北海野手の中核選手としてなくてはならない選手の一人となっている。東松山に入団した崎邊はこれまで数球団を渡り歩いているが、49年度に宇部に移籍後にその非凡なバッティングセンスを発揮、50年度には首位打者と最高出塁率のタイトルを獲得している。安濃津(現名古屋)の粉間もややムラはあるものの、その長打力を生かしこれまで本塁打王を2度、打点王を1度獲得しており、その働きは十分と言えるだろう。花巻の時園はセカンド、ショートを守れる守備力と俊足で1年目より1軍に定着。その後もいぶし銀の活躍で、51年度には1,000本安打を達成している。
 こうしてみてみると、この年のUリーグは大物の投手陣、粒ぞろいの野手陣と当たり年のドラフトだったと言えるだろう。

投手
チーム 選手 入団 評価 試合 防御率 セーブ 奪三振 主なタイトル 備考
境谷 は(18) C 85 4.55 15 29 1 247
伊勢 川邊 は(26) C 57 4.61 10 10 0 120 45→引退
多摩 島居 は(18) C 78 4.88 26 25 0 347
盛岡 三杯 単(18) A 247 4.28 83 48 33 1340 勝×2、振×2、率×4、9、☆×4
屋島 出村 9(18) 特A 271 3.35 124 67 0 2028 M×3、防×4、勝×3、振×6、率、9×4、☆×6
厚木*2 米内 は(18) 345 5.61 31 40 8 676
世田谷 一澤 は(18) 189 5.68 43 51 2 545
京都*3 宗定 2(18) A 266 3.71 102 75 4 1091 勝×2、率×2、9、☆×4
野手
チーム 選手 入団 評価 試合 打率 安打 本塁打 打点 盗塁 主なタイトル 備考
北海 佐羽内 は(18) B+ 731 .282 743 59 338 113
東松山 崎邊 は(18) B+ 611 .291 554 81 310 85 首、出、9×2、☆×2 43→竜安、44→東松山、49→宇部
安濃津*1 粉間 は(18) B+ 942 .248 811 218 603 31 本×2、点、9×4、☆×5
花巻 時園 は(22) B+ 1059 .259 1009 74 333 174 9、☆

*1:現名古屋、*2:現御殿場、*3:現大分
入団の「数字」は競合球団数、「は」ははずれ1位、「単」は単独指名、カッコ内は入団時の年齢

37年度オフ入団選手のドラ1の採点簿はこちら

38年度オフ入団選手のドラ1の採点簿はこちら

39年度オフ入団選手のドラ1の採点簿はこちら

40年度オフ入団選手のドラ1の採点簿はこちら