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カイコの形態・生態
カイコの体

カイコの体は、頭部と胴部からなり、胴部は胸部(第1体節〜第5体節)と、腹部(第6体節〜13体節)です。

肢(脚)は、成虫時に残る胸肢には爪があって手の役目、幼虫だけに存在する腹肢と尾肢は吸盤をもつ歩脚です。
胸肢は、第1〜第3体節に各1対、腹肢は6体節〜9体節に各1対、尾肢は第13体節に1対あります。
尾角は、第11体節の背面にあります。
気門(酸素をとりこむ)は、第1体節と、第4体節〜11体節までの各体側に各1対、計9対あります。
眼状紋は、第2体節に、半月紋は第5体節に、星状紋は第8体節にあります。
紋があるカイコを形蚕(かたこ)、紋のないカイコは姫蚕(ひめこ)と呼ばれています。

絹糸腺
背脈管
体内には気門から入った酸素で呼吸する器官、餌を消化・吸収する消化管、繭糸をつくる絹糸腺、
体液(血液)を送る背脈管、尿をつくる腎臓の働きに似たマルピーギ管などがあります。
カイコを上から見ると、背の左右中央に背脈管が透けて見え、尾部から頭部へ体液を送っているのを観察できます。
カイコの幼虫の頭部
幼虫の口は2つあります。 ひとつは採食するための口、もうひとつは繭を作るために糸を吐く吐糸口です。
顎(あご)には
鋸の刃のように鋭い歯が左右にあって、
孵化時に卵殻を食い破ったり、
桑の葉をかみ切ります。
糸を吐くための吐糸口。
幼虫の目は単眼(個眼が6個)です。
単眼は、明暗がわかる程度、といわれています。
成虫時には複眼になります。
蚕の蛹 ♂と♀
蛹になると雌雄の違いがよくわかります。
幼虫も蛹も♀は♂より大きい。
左が♀、右が♂。
カイコの成虫 カイコガの体

カイコの複眼。
成虫の目は雌雄とも複眼。
複眼は物がよく見えます。

カイコの誘引腺と産卵管
カイコの成虫の触角

触角は櫛形で無数の繊毛が生えており、より表面積が多いため、
匂いを感知するのに都合よくできています。
♂の触角は♀の性フェロモンを感知するため、♀のそれよりも大きい。

蚕蛾の生殖器(♂・♀)
♂蛾の精子は♂蛾の内部生殖器の貯精嚢に蓄えられていますが、交尾によって前立腺を経て、♀蛾の内生殖器の交尾嚢に送られます。
精子は交尾嚢から精子管を経て受精します。

産卵時は♀の生殖器の粘液腺から糊状の液が産卵管に分泌され、産卵した卵が産卵場所にくっく仕組み。
蚕蛾♀の外生殖器
蚕蛾♂の外生殖器
カイコの生殖器
蚕蛾の交尾は、♂の生殖器の鉤器、補握器を♀の生殖器の背面板・腹面板にひっかけます。
翅の鱗粉
翅脈に流れる体液と鱗粉
腹部の鱗粉
カイコは全身を鱗粉でおおわれている。 鱗粉の形状は翅や腹部などで異なる。 蝶と蛾の違い
カイコの特徴

種  名: 鱗翅目/カイコガ科
      和名 蚕(*カイコ)、学名 Bombyx mori、英名 silkworm
      カイコの野生はいない。
      人間が家畜的に改良したカイコで家畜昆虫(蚕と蜜蜂)、家蚕、繭糸を吐くことから絹糸昆虫などと呼ぶ。
      日本には約400種の蚕品種が、*遺伝資源として保存されている。
      養蚕業にたずさわる方は、繭糸を吐く大切な蚕を「お蚕(かいこ)さま」と呼ぶ。
      *カイコの名の由来は、飼う子、飼う蚕(こ)「かうこ」から「かいこ」になった、と言われている。
      *♀親と♂親の両利点を併せ持つ一代雑種の有効性が、世界の農業生物の中で初めて確認されたのは蚕。

時  期: 温度を25℃〜30℃に保てれば1年中、飼育できる。
      養蚕農家は、桑の葉がある5〜9月に飼育する。
      孵化したカイコを蚕座(飼育するために整えたカイコの置き場)に移す時期が、
      4月中旬〜6月上旬を春蚕(はるさん)、以後、夏蚕(かさんき)、初秋蚕、晩秋蚕などがある。
      繭が多く収繭できるのは春蚕、晩秋蚕、初秋蚕で、年間3〜5回飼育する養蚕農家が多い。

形  態: 1世代を、卵 〜 幼虫 〜 蛹 〜 成虫、と4つの形に変える完全変態。 外骨格。
      体温は周囲の温度にともなって変化する変温動物。
      体長: 幼虫:3mm(蟻産)〜85mm(熟蚕)。 幼虫期は単眼で個眼が6個。
      開張: 成虫:♂は約40mm、♀は約45mm。 成虫は複眼となり、全身が鱗粉で覆われている。
      ♀は幼虫・成虫とも♂より大きい。 成虫♀の腹部は特に大きい。
      成虫・カイコガの触角は櫛(くし)形で、♂は♀より大きい。
      幼虫期、ふつうは4回脱皮し、蛹化時の脱皮と、羽化時の脱皮を加えて計6回脱皮する。
      幼虫には採食する口と、糸を吐く口の2つがある。
      カイコは人間が家畜的に改良したため、成虫になっても飛べず、口も退化している。

繭   : 繭の大きさ: ふつう短径、約20mm、長径、約30〜35mm。 黄白は平均、短径25mm、長径35mm。
      繭色: 白色、ピンク色、黄色、緑色など様々。
          皇居の紅葉山御養蚕所で皇后陛下が飼育されていらっしゃる日本在来種の「小石丸」は純白。
          また、遺伝子を組み換えた「黄白」は、♂の繭が白色、♀の繭が黄色。
      繭形: 楕円形・トラック形・くびれた形など。 
          中国種の丸形と日本種の俵形を交配してできた、くびれの無い繭を作る蚕を、現在、一般的に養蚕されている。
      繭糸長さ: 1300m〜1500m。  繭の重さ: 約2g.
      蚕が吐く糸は、こちらをごらんください。

採食生態: カイコは人間が餌を与えなければ、野生では生きられない。
      幼虫は鋭い歯をもつ顎で桑の葉(タンパク質が多い)、人工飼料を食べる。
      水分は飲むことをせず、桑の葉や人工飼料から補給する。
      カイコの餌を人工飼料から桑の葉に変更することは可能。その逆はカイコが人工飼料を食べない。
      現在、養蚕農家は3令幼虫まで人工飼料で育てた(稚蚕共同飼育所)稚蚕を入手し、
      それ以降は桑の葉を与えて育てる。
      それは、4令・5令幼虫は食欲旺盛になり、特に5令幼虫は約1週間で一生の食事の80%を食べることから
      人工飼料では不経済になるため桑の葉を与える。
      カイコは繭を作り始める前(熟蚕)から成虫・カイコガになって、死ぬまでの約20日間は何も食べない。

繁  殖: ♀は蛾尿(赤茶色)を排泄した後、お尻から誘引腺を出し、性フェロモンを放って♂に求愛する。
      ♂は大きい触角で性フェロモンの匂いを感知し、翅を激しくはばたき、♀にたどり着いて交尾する。
      *多種の昆虫にわたって性フェロモンの存在が知られているが、それが最初に確認されたのはカイコ。

産  卵: 卵の大きさ : 長径1.3mm  短径1mm  厚さ0.5mm
      形   : 平らな楕円形
      産卵数 : 約3日間で、1蛾(ガ)1腹: 約500〜700粒(個)
            産卵した年に孵化する卵を非休眠卵(黄色)と呼び、越年する卵を休眠卵(黒色)と呼ぶ。
      産卵回数: 品種の違いで1回と、2・3回産卵する。
      孵化日数: 約2週間。

寿  命: 約50日間。
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