はじめに


「マイ・フェア・レディ」について書いて一年ほどたってから、「30音でマスターする英会話」の掲示板でりおさんに『「マイ フェア レディ」について、お時間があれば徹底的にまとめてくださると嬉しいです。』とのリクエストがありました。

掲示板に書いたとおり『調べたけど書かなかったこともあったのですが、すっかり忘れてしまいました。あのときにまとめておけばよかった。』という状態なので、追加事項はほとんどありませんが、独立したページにしました。

以下
すべては、ここから始まった。
「マイ・フェア・レディ」紹介
ヒギンズ教授について
ヒギンズ教授流の教材は、実在するの?
(未完・続く)
と続きます。

迷走録の平成12年12月24日分からスタートして関係のあるところを抽出したページもつくりました。


すべては、ここから始まった。


平成12年12月24日

今年のエリザベス女王のクリスマス・スピーチは例年より注目している人が多いのではないでしょうか?というのも、CNN.co.jp に12月21日付けのエリザベス女王の英語が庶民化?英語版はこちら)という記事があったからです。他にも「エリザベス女王の英語、庶民に近づく=豪言語学者が分析−科学誌 (時事通信)」が Excite ニュース や LYCOS ニュースにありました。

The Daily Yomiuri にも、詳しい記事があったのですが、今どこにいったかわからなくなってしまいました。確か、女王の happy の発音が heppy に近くなっているとか、マイ・フェア・レディの Henry Higgins 教授のモデルは Henry Sweet だったとか、いろいろ載っていたと思います。見つかったら、また紹介しようと思います。

しかし、「当の本人は、今年のスピーチを変に意識してしまうのでは?」と、人ごとながら気になってしまいます。


2001年のエリザベス女王のクリスマス・スピーチは、http://www.royal.gov.uk/output/Page1.asp で見ることができます。


「マイ・フェア・レディ」紹介


平成13年1月1日

12月24日に「マイ・フェア・レディの Henry Higgins 教授のモデルは Henry Sweet だった」と書きましたが、ちょっと蘊蓄を披露したいと思います。

My Fair Lady (1964)は、Audrey Hepburn 主演のミュージカルです。 Hepburn は、ヘップバーンと読みますが、 Hepburn 式とくれば、ローマ字のヘボン式です。イギリス発音とすれば、ヘボンのほうが原音に近いのでは?

閑話休題、原作は George Bernerd Shaw (バーナード・ショー)の戯曲 Pygmalion 「ピグマリオン」です。Pygmalion (ピグマリオン)とはギリシャ神話に出てくる彫刻家の名前です。その神話とは、自分の彫った女性の彫刻に恋をしてしまった男性の思いが神に通じて、彫刻が人間になってしまったという話です。

教育学の用語にも、「ピグマリオン効果」というのがあります。教師の理想像の影響を受けて、生徒が教師の望む様に変化するという効果です。

あ〜〜〜っ、全然閑話休題になっていない!!

その「ピグマリオン」が、先ず Broadway で「マイ・フェア・レディ」としてミュージカルになり、後に George Cukor (ジョージ・キューカー)監督によって1964年に映画化されました。

Broadway では、Julie Andrews が Eliza Doolittle (イライザ)の役をやったようです。個人的には、Julie Andrews のほうが見てみたいかな。Professor Henry Higgins (ヒギンズ教授)のほうは、Broadway も映画も Rex Harrison がやったそうです。

粗筋は、コヴェントガーデンの貧しい花売り娘イライザが、音声学者のヒギンズ教授の指導によって洗練されたレディーに変身するというミュージカルです。

がさつで身分の低い花売り娘イライザをヒギンズ教授が自分の思い通りにレディーに仕立て上げていく姿をピグマリオンの神話に重ね合わせています。

しかし、私としては、訛りのひどい花売り娘を躾け直して、一流のレディーにできるかどうかまで賭けにしてしまうのは、ちょっとどうだかなあという気もします。それじゃあ、いかにもイギリス上流階級のステレオ・タイプそのまんまじゃないかい?まあ、映画にはよくありがちですが、・・・。

それから、タイトルの「マイ・フェア・レディ」は、高級街である「メイフェア」をコックニー訛りで読むと「マイフェア」になるということとひっかけているそうです。

今日はここまでとします。本題に入る前に力尽きた・・・。(本日分は未完成なので、後日一部改訂予定です。)


※ 改訂の予定はありません。


ヒギンズ教授について


平成13年1月2日

昨日に続き、今日はやっと本題の Professor Henry Higgins (ヒギンズ教授)ネタについて書きます。

My Fair Lady (1964)の Henry Higgins 教授のモデルは一般に Henry Sweet だったと言われています。そこで今日は Henry Sweet についての蘊蓄を、・・・。

Henry Sweet はロンドン生まれのイングランド人で、音声学の基礎を築いた人です。もう少し正確にいうと、philologist で、事実上の English Philology の創始者ということです。幻の名著といわれた A Handbook of Phonetics 「音声学提要」(1877)の復刻版が三省堂からでています。

劇と違い Sweet は Oxford 教授職の選に漏れ、Reader (準教授)だったということです。名前と違って本人は、あまり sweet な人ではなかったようです。もともと人付き合いの上手なほうでなく、希望していた教授職の選に漏れてからは、一層不機嫌になり、 Bitter Sweet というあだ名がついていたということです。

Sweet は、初めはドイツのハイデルベルク大学に学び、後に Oxford の Balliol College で学んだ人です。彼は、自分の論文のなかで、「ドイツの学者は勉強家ではあるがペダンチックで大言家である。」といっているそうです。Pedantic な My Fair Lady の Henry Higgins 教授と違って、かなり堅実な人柄であったようです。

(本日分も未完成なので、後日一部改訂予定です。)

 

平成13年1月3日

昨日の Henry Sweet 編に続き、 Professor Henry Higgins (ヒギンズ教授)ネタ その2 Daniel Jones 編について書きます。

『イギリス英語のイントネーション』によると、最近の研究では、ヒギンズ教授のモデルは、 Jones という説が出ているそうです。(Beverly Collins, The Eary Career of Daniel Jones, University of Utrecht)今井邦彦,「『マイフェアレディ』の謎」,『言語』,1991年7月号,参照。『イギリス英語のイントネーション』 P.330より

Daniel Jones は、 発音辞典として権威のある English Pronouncing Dictionary を1917年に出版した人です。また、英語の発音記号(Intenational Phonetic Alphabet: 国際音声字母)を制定した人としても知られています。

発音記号そのものは、19世紀末にフランスで作られました。しっかり調べられませんでしたが、どうも発音記号は、1886年にヨーロッパの当代一流の音声研究者が集まって発足された世界音声学会(Intenational Phonetic Association)で作られたようです。Daniel Jones が IPAに参加したかは調べられませんでした。

Daniel Jones は、 Henry Sweet の業績を受け継ぎ、University College London (ロンドン大学ユニヴァーシティーコレッジ)に Department of Phonetics and Linguistics (音声学科)を開設し、ロンドン学派を形成し、世界の音声研究をリードしてきたということです。
University College London Department of Phonetics and Linguisticsホームページ

(またまた、本日分も未完成なので、後日一部改訂予定です。今回は分量が多すぎて整理しきれないので、当初予定していた「ロンドン学派編」は、またいつか書きます。)


※ 「ヒギンズ教授について」も改訂の予定はありません。


ヒギンズ教授流の教材は、実在するの?


Henry Higgins 教授のモデルは一般に Henry Sweet だった(あるいは、Daniel Jones とも)と言われていますが、ロンドン学派の音声学の教材で、現在日本で入手可能なものは、『Better English Pronunciation』 J. D. O'Connor著, Cambridge University Press刊 (成美堂版−黒田巍註−あり)と『イギリス英語のイントネーション』 J. D. O'Connor G. F. Arnold著 片山嘉雄・長瀬慶来・長瀬恵美共編訳南雲堂刊です。

この J. D. O'Connor と G. F. Arnold は、Daniel Jones のもとで、音声学を学んでいます。

ロンドン学派の著作を読むと、ドリルを重用視しているものが多いようです。ここに紹介した2冊も、うんざりするくらいのドリルがあります。

わたしが大学で音声学を受講したときのテキストは、『Better English Pronunciation』でしたが、講義では実技はほとんどなく、単にテキストの購読という感じでした。先生は大学のラボにテープがあるので練習したい人は活用してくださいといわれたのですが、ついに一度もラボに足を踏み入れたことはありませんでした。

卒業後、英会話学校で、いやがる先生を宥め賺して『Better English Pronunciation』を使ってプライベート・レッスンを受けました。たぶん週1時間で9月くらいかかったと思います。先生も私もレッスンの事前準備が欠かせませんでした。

レッスンは、わたしがテキストを読み、先生が適宜補足事項等を説明し、質疑応答の後、実技とういう形で進められました。(平成14年1月1日記・未完)

このテキストを、読む(音読)というのが、むつかしかった。用語がはんぱでなく、むつかしい。

alveolar rigde (歯茎)、hard palate (硬口蓋)、soft palate (軟口蓋)、larynx (喉頭)、pharynx (咽頭)等の解剖学にでも使いそうな用語(日本語の読みも、ふと心配になりそう)から、音声学上の用語まで盛りだくさん。

これを、音読すると、ぶつぶつに区切れてイントネーションもむちゃくちゃになります。すると先生がいらいらして来るのがわかります。先生が必死にこらえているのがひしひしと伝わってきました。なんども注意されるのですが、ある日とうとう、"It's not English!" と悲鳴をあげました。

では、そのとき自分の発音が、全然ダメだったかというと、個々の音については、そこそこで、同僚の先生に、"He is a pronunciation wizard." なんて、冗談半分で言ってくれていたし、一回だけ "go home" の発音が完璧にきまって、「今のは、完璧な発音だった。完璧なRPの発音だった。私のRPよりうまっかった。なんか、本当にイギリスに帰りたくなったよ。」なんてしみじみ言われました。(先生はRPを話さない先生でしたが、練習して最後の方にはかなり上手くなりました。)

さて、何が言いたかったかというと、会話では、そこそこ通じていても、文章を読むと、驚くほどネイティブに通じないということです。

なんか、「ヒギンズ教授流の教材は、実在するの?」から、話しがそれてきましたが、書きたいだけ書いたら、最後に編集して、まとめ直します。

週に2回数行ずつの更新をめざします。平成14年1月3日記)

しばらく更新ができませんせした。さて、会話では、そこそこ通じていても、文章を読むと、驚くほどネイティブに通じないについてですが、実際に会話等で覚えたものや、映画やドラマやニュースやテープ等の教材などで聞いたことのあるものは、それなりにイントネーションやストレスも英語らしくなっているのですが、むつかしい文章を読むと、個々の発音と文章の意味以外に意識が行かず、完璧な日本語英語のリズムになります。

しかも、コンマもフルストップ(カンマ・ピリオドは米式です。)も無視して、ネイティブからすると機関銃のようにダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・・・・とひたすら、平板・単調な発音をくりかえします。これは、ネイティブにとっては、拷問に等しいようです。

逆に、実際の会話では、Good
morning を、「グッ・ド・モー・ニ・ン・グ」と日本語風にダ・ダ・ダ・・・と発音する人はまずいないでしょう。しかし自分の耳で何回も聞いてかつ使い慣れたものでないと、そこまで完璧なカタカナ発音でなくても、「グッ・dッ・モー・ニ・ン・gッ」風に日本語の拍(シラブル)になっていることが多いです。特に、個々の音を練習した男性が、発音に注意して話すとこうなることが多いようです。
(ッは、ここでは、一瞬息をとめること・声門閉鎖の意味です。もう少しましな人は、息を詰めずに同じ間隔で間を空けています。)

このレベルでは、自分は個々の音しか聞いていないので、誰かに指摘されない限り、まず絶対にイントネーションが上達することはありません。

多くの女性の場合は、このレベルはごく初期に自然にクリアして、ぶつ切り発音ではなくなっているようです。これを克服するとしないとでは、ネイティブの了解度は全然違うようです。

以前に、これに関係した話題で、男性同士で話して「ブルータス・おまえもか?」(意味あってるかな?)と盛り上がったことがあります。イギリスに行った女性が口を揃えて「イギリス人って、紳士ですてき。道を聞いてもすごく親切に教えてくれるし、・・・」とか、言いますが、クラスメートの女性からそう聞いていた男性陣はイギリスで、「イギリス人って、男性にはぜんぜん優しくないやン!」と愕然とします。わたしも半分は同感でした。自分だって、外国人から道を聞かれたら女性に対しては、より親切に説明すると思います。まあ、これは、半分本能的なことだと思うので、男性としては非常に理解できます。あからさまにだすかださないかの違いはありますが、・・・。

少し話が脱線気味ですが、要はわたしと話した男性(複数・それもほぼ全員)は、「上の件を考慮しても、男性に対する不親切さは露骨すぎないかい?」という意見を持っていました。

ここに、重要な真実が隠されているのです。実は、当時のわたしも含めて上にでてきた男性陣の発音は「ぶつ切り」発音だったのです。興味の低い男性が、ひどい発音で話してきて、聞き取りも怪しいと、いかに外国人に親切なイギリス人でも、お手上げでしょう。

わたしの場合、最近イントネーションが(ネイティブから見ても)少し改善されたので、より実感をもってわかるようになりました。イギリスでも、ひたすら実践と分析を繰り返し理屈としてはわかっていたし、少しは相手の反応を通じて実感もあったのですが、自分がわかるとわからなでは雲泥の差です。

完全に「ヒギンズ教授流の教材は、実在するの?」から逸脱しましたが、次回はわたしのイギリスでの実践と分析(たいしたことないです)について、さらっとふれ、カタカナ英語より始末の悪いふにゃふにゃイントネーションを書いてみたいと思います。(思うだけで、違うことを書き始めるかもしれませんが、・・・。)

(平成14年1月17日記・週2回更新は、とても無理なので、撤回します。は〜っ、次はいつ更新できるか。わたしの体力に聞いてくれ。やる気はあるんだけど。)

(未完・続く)

『Better English Pronunciation』には、「Word groups and stress」に、打楽器にあわせて強弱とリズムを練習するところがあります。これは、カイさんが30音の掲示板に書かれていた『ヒギンズ氏が鉄琴(?)を叩きながら、音階でイライザにイントネーションを教えている場面を見て、uda先生の「ギターでイントネーション教授法」を思い出しましたー。』というシーンに近いのではという気がします。

それ以外では、ドリルの量がとんでもないくらいに多いので、少しやってみれば、イライザのようにうんざりすうること請け合いです。

その意味では、ヒギンズ教授流の教材ということができるかもしれません。

久しぶりに「ヒギンズ教授流の教材は、実在するの?」というお題にもどってみます。(2002年8月31日追記)

Summer Course in English Phonetics 2002 発音練習のクラスの担任は、Geoff 先生でした。この先生が厳しかった。上手く発音できないと何回でもやり直しさせる。確かに厳しいけど、できるまで(あるいは少し改善されるまで)許してくれないという状況がなければ、なかなか進歩するとこまでいかないのは確か。それで、みんなもプレッシャーは感じるものの、積極的な姿勢で臨んでいた。うーん、いってみればスポコンの鬼コーチっていうか、・・・それより、新米の兵士をしごく鬼軍曹っていう感じかな。ちょっと「コンバット」のサンダース軍曹のイメージに重なるところがないではない。くせがあって、厳しいけど、いざというとき頼りになるぞみたいな、・・・。・・・どんな人か気になりますか?実はPhoto gallery: SCEP 2000でご尊顔が拝めるので、気になる人は探してみてください。

数えてはいないけど、同じ文を10回近くも繰り返し注意されながら唱えさせられると、プレッシャー度・動揺度のメーターが、いきなりレッドゾーン突入って感じですな。みなさん、ときには緊張のあまり、直すところに行く前に、何度もどもって「Sorry」とかいって、自分で最初からやり直しってはめになったりもしました。かか、かくいう、わわ、わたくしめも、例外に漏れずどもりまくりました。

ぼぼ、ぼくは、英語ではときどき、どどどもることも、あああるんだな。むむかし、いいわれたことがあって、どど努力して、なな直したんだな。っでででも、きき緊張すると、いいいまでも、でででるんだな。そそそれで、 ジェ・ジェ・ジェフ(Geoff)先生にも、英語は褒められたけど、ときどきどっもてるって、いいいわれてしまったな。

でも、オプションのレクチャーで100人近く人がいたときに、質問したけど、どもらなかったし、マイクなしで講師まで声が届いたし、まあできるときはできてるってことでしょう。(わたしは、日本語では、とてもそんな無謀なことはできません。だいたいもともとぼそぼそしゃべる方だしボイストレーニングも受けてないので、そんなことは、考えただけで恐ろしい。)

これも、日本で Geoff 先生に匹敵するするような厳しい師匠にシゴかられおかげでしょう。師匠ありがとう。あっ、まだ師匠に帰国の報告もしてないや。(でも、お土産は買ってきましたぜ、師匠!)

今回も、またまた脱線気味で終わり。自分でも本気で続ける気があるのかどうか疑問になってきました。