グレミオのお守り道中3  

−非公認過保護選手権−


△第2話「謎のお嬢さん」
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「ねぇ、グレミオ あそこに人集りがあるよ。ちょっと行ってみよう。」
「坊ちゃん、そんなところには寄らないでもう戻りましょう。」
「ちょっとぐらい良いじゃん。」
と言うと、坊ちゃんはわたしの制止も聞かずに人集りに紛れてしまいました。
ここはペセタという町です。
実はある女の子をここまで護衛することになっていたのですが、妙な結末によって結局
この町には2人で入ることになってしまいました。
旅の疲れを癒すため、2,3日留まろうということになりました。
そして今日は町の様子でも見てみようということになったのです。
町を巡っているといつの間にか夕方となり、宿に戻ろうという途中にこの人集りに出会ったのです。
「ちょっと坊ちゃん、待ってくださいよ。」
わたしも坊ちゃんを追って、人集りに紛れます。
「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。
 今日はまた良いものを紹介するよ!」
威勢の良いおじさんが、大声で叫んでいます。
毎日違うものを売っているのでしょうか?
「よっ、今日はどういうしょうもない物を売るんだい?」
最前列の若い男が冷やかしています。ただの暇つぶしなんでしょうか・・・
「そんなお客さん、滅多なことを言うもんじゃないですよ。
 今回は今まで以上にすごい物ですよ。」
おじさんは人差し指1本を横に振りながら言い返しています。
「ほう、そこまで言うんなら期待してやっても良いぜ。」
男は、皮肉っぽく答えています。
「物を見て驚いちゃいけませんよ。では、早速」
おじさんはそう言うと、1枚の古ぼけた感のある紙きれを取り出しました。
オオー・・・
付近にどよめきが起こっています。もちろん逆の意味で・・・
既にここから離れる者もちらほら出てきました。
それにもかまわず、おじさんは説明を始めます。。
「聞いて驚くなかれ。これはなんと、昔この付近を支配していた王族の宝が眠っておるとされる洞窟の場所と洞窟の地図ですよ!」
この言葉と同時に、また数人が「やっぱり・・・」という表情で去っていきました。
「わたしが苦労を重ねてやっと手に入れたこの地図の複製を格安でおわけしますよ」
おじさんは、めげずに商売を続けています。
「おいおい、それは本物なのか?」
また、同じ男が茶々をいれてきます。
どうやらこの人は茶々を入れるためにここにいるのか、もしくは新手のさくらなのかもしれません。
「何をおっしゃいますか。これは、わたしが何日も歩き回ってやっと原住民から手に入れたものですよ。偽物などということなどあり得ません。」
適当な理由を付けて、何とかアピールしているようですが、何日歩いたかなどは本物か偽物かなどの決定には当然なりません。
また、数人がつまらないという表情をしながら帰っていきます。
すでに半分程度となった人集りの中にようやく坊ちゃんを見つけたわたしは、ゆっくりと坊ちゃんに近づきました。
「ぼっちゃん、こんなものは偽物ですよ。帰りましょう。」
坊ちゃんの横へ着くとわたしは小声で坊ちゃんに耳打ちをします。
「そう言うけど、まだ偽物と決まったわけでもないよ。」
坊ちゃんも小声で耳打ちをする。
「いいえ、本物の可能性の方がずっと低いんですよ。もう帰りましょう」
わたしは小声でそういうと、坊ちゃんの腕をつかんで連れていくことにしました。
「グ、グレミオ。そんな引っ張らなくても・・・」
「ダメです。」
坊ちゃんの願いにもお構いなく、坊ちゃんを人集りから引き離しました。
そのとき後ろを振り返ってみると、何とか売り込もうとおじさんはまだ粘っていたようです。それとは裏腹に人集りにいる人数は確実に減少していきました。
「坊ちゃん、ああいうところで売っている物は良くないものが多いですから買ってはダメですよ。」
宿に戻ってからの夕食の時、わたしは念には念ということで再度言い聞かせることにしました。
「わかってるって。」
坊ちゃんは、またかという表情で答えます。
しかし、気になってしょうがないというのが見え見えでした。
わたしは万が一を考え、明日ここを出発しようと考えました。
「坊ちゃん、明日この町を出ましょう。」
「えっ?」
坊ちゃんは、思ってもいなかった意見に少々とまどった様子でこっちを見ています。
「ものだいぶこの町にとどまっていますし・・・。そろそろ旅を続けた方が良いと思いますよ。」
「僕はそろそろ仕事を探してみようかと思ったんだけど。」
「仕事はわたしが探してきましたけど、良い仕事はありませんでしたよ。」
「どうせ、グレミオから見れば危険な仕事ばかりだったんでしょ?」
「まったくこの町は危険な仕事しかないですよ。だから他の町で探しましょう。」
「たとえば、どういうのがあったの?」
「そうですねぇ、大量発生した凶暴なムササビの退治とか、風船で何でも飛ばしてしまう、いたずら好きのひいらぎマスターのボスをこらしめるとか・・・」
「・・・・」
坊ちゃんの顔はいつものように「しょうがないかぁ」という表情になっていきました。
「坊ちゃん、その辺にいるのとは違うんですよ。凶暴な<むささびとひいらぎの精のボスなんですから。わざわざ危険な仕事をする必要はないんですよ。」
「・・・・・」
こうして、いつものように夜はふけていきました。

「ふぁぁ、坊ちゃん朝ですよ。そろそろ起きましょう。」
わたしはいつもどおりの時刻に目を覚まし、坊ちゃんベッドを見ました。
しかし、そのベッドに坊ちゃんの姿はありませんでした。
珍しく目が覚めて、散歩でもしているのだろうとわたしは普段どおり身支度をしながら待つことにしました。
しかし、1分たっても戻ってきません。
もう心配で我慢ができなくなったわたしは、部屋を飛び出しました。
「お客さん、朝食は良いのかい?」
宿の主人が通り過ぎようとしたわたしに向かって声をかけてきました。
「いや、いまちょっと大変なので後に・・・ 
 あっ、わたしの連れが出ていきませんでしたか?」
わたしは、呼びかけられたついでに坊ちゃんの行方を聞くことにしました。
しかし、主人は首を横に振りながら
「いや、判らないね。朝食の準備の最中に誰かが出ていったようだけど。
 あんたに何も告げずに出ていったのかい?」
「ええ、起きたら既に居なかったので。ちょっと探してきます。」
「そんな心配しなくても、すぐ戻ってくると思うけどねぇ。」
「そうも行かないんですよ。」
わたしはそう言い残すと宿屋を飛び出しました。
しばらくの間、わたしは付近をすみずみまで探しましたが見つかりませんでした。
仕方なく町の外まで探しに行こうと思ったとき、ふと思い出しました。
「ま、まさか昨日の・・・」
さっそく、昨日の露天があった店まで走っていきました。
「すいません!」
わたしは、店の扉を叩きながら呼びました。
「なんだい、いったい・・・。さっきといい、今日は朝から騒がしいな。」
昨日露天で品を説明していたおじさんが眠たそうな顔で出てきました。
「さっき?ということはやっぱり。」
「そうさ。棒を背中に背負った少年がいきなり訪ねてきて、昨日売っていたものを見せてくれとかいってきてね。まぁ、こっちも商売になるから見せてあげたけどな。」
背中に棒・・・やっぱり坊ちゃんに間違いないです。
「そ、それで、その少年はどうしたんですか!」
「ああ、結局買ってくれて、この町を出る方向へ駆け出していったけどな。」
「ほ、本当ですか!」
やっと坊ちゃんの手がかりを見つけたこともあり、気が気でありませんでした。
「こんなことで、嘘を言ってどうする。」
こ、こんなこと?坊ちゃんが居なくなっているというのにですよ!
「ちょっと、こんなことってどういうことです?」
わたしは、斧を振りかざし、おじさんにちらつかせました。
「お、おい!いきなりそんなものを出すなっ!」
おじさんは突然、目の前に斧が現れたのにそうとう驚いた様子で手を振りながら後ずさりします。
しかし、そんなことは知ったことではないです。
「こんなことってどういうことです?」
わたしは、相手の戸惑いを無視してさらに詰め寄ります。
「わ、わかった。そんな大事なことに嘘が付ける訳がないな。」
「そうです!大事なことなんです!判っていただけましたか!」
斧をしまい、おじさんの両手を握りながらわたしは言いました。
表情がなぜかぎこちないおじさんはつづけて、
「とにかく、もう1時間くらい前に町を出たと思うが。」
「どこに行ったか教えてもらえます。」
「それはできないな。」
おじさんはなぜか汗をかきながら、首を横に振ります。
わざと強気でいくことによって何かをごまかしている感じです。
「そ、そんな。なんでですか?」
「こっちも商売だからな。もし知りたいのなら少年が買ったものを売るけど。」
「う〜ん。確かにそうですね。」
「どうです、お客さん。たったの1000ポッチですよ。」
商売につながると判ったとたん、急ににこにことした表情になりました。
さすが商売人だけのことはありますね・・・
しかし、何でこんなしょうもないものにこんな値段を!
1泊するのにも100ポッチで十分なのにです。
「ずいぶん高くないですか?」
「そんなことはないですよ。これはただの地図ではないんですよ。宝の地図なんですから。」
「そんなもの、信じられるわけがないですよ!」
「じゃあ、しょうがないですね。」
おじさんは、地図をちらつかせながらしまおうとしています。
ううっ、こっちの状況を知っているだけにめちゃくちゃ強気です。
何時の間にか形勢が逆転してしまったようです。
「わ、わかりました。出しますよ・・・」
「へぇぃ、毎度あり!」
おじさんはそう言いながら最高の(たぶんですが)笑顔でこちらに振り向きました。
ううっ、ちょっと吐き気が・・・

宿に事情を説明してから、私は町を出て地図の通りにやや荒れた道を進みます。
しかし、この道の荒れ方がまたひどいです。
べつに、荒れ放題ということではないですよ。
中途半端に草が生えていたり、急になにも生えていなかったり・・・
明らかに最近に人の手が入ってます。
そうこうしているうちに、視界に岩山とその中心にぽっかり穴が空いた洞窟が見えてきました。どう考えてもこんなのが王族の宝が隠されている秘密の洞窟には見えません。
私が隠すとするならこんな見つかりやすい洞窟は選びませんよ。
わたしは、さっそくランプに灯をともし洞窟に入ることにしました。
そして、足を踏み入れたその時、
「あなたなのね、覚悟なさい!」
と、後ろから叫び声がしました。
同時に何か殺気を感じた私は、さっと横に飛び、そして振り返ります。
「それなりにはやるようね。」
そこには、ナイフのような武器を持つ30歳前後の女性でした。
長い髪を後ろで結っています。
しかし、表情は何か恨みがあるようなものでした。
ナイフで人を刺そうとしたのですから、にこにこしている訳がないですが・・・
しかし、私はこんな女性知らないですよ。しかも恨みを買うようなことなんて。
「い、いったいどういうことなんですか!」
「そうやってごまかそうとしても無駄よ。 私の大事なジャックを帰してくれれば、命だけは助けてあげるわ。」
なんかこの女性、完全に勘違いしているようです。
「ああ、ジャック。今頃きっとひどい仕打ちを受けているんだわ。」
女性は、両手を合わせて握り天を仰ぎながら言っています。
今度は、自分の世界に入ってますね。
その様子に唖然としていると、急に私の方を向いて、
「これというのもあなたの責任よ! ジャックにもしものことがあったら、ただじゃおかないわよ!」
私に指を突きつけてのこの発言に私は一瞬ひるみましたが、すぐに気を取り直して、
「ちょっと、何で私のせいになるんですか? わたしは、坊ちゃんを捜しに来ただけなんですよ。ジャックという人なんて私はまったく知りませんよ。」
しかし、女性は私の話をまったく理解する様子はなく、
「な、なんですって! ジャックより、どこの馬の骨だかわからない坊ちゃんという人間の方が大事だなんて・・・」
失礼な人ですね・・・
「なにを言うんですか! 坊ちゃんを侮辱するのは許せませんよ。とにかく、わたしはジャックという人は知らないんです。先を急ぎますので。」
と言ってその場を離れようとしましたが、その女は素早い動きで私の前に回り込み、
「あなたこそ、ジャックを侮辱しているんじゃないの? ジャックのことを知らないなんて。」
ずるっ!
相変わらずめちゃくちゃなことを言ってます。
会ったこともない人を知らないと言うことが、侮辱になるのであれば世界中全員がたくさんの人を侮辱することになってしまいます。
当然言っている本人もそうなるのですが・・・
「もう、いい加減にして下さい。わたしは、坊ちゃんを一刻も早く捜さないと行けないんです。私は坊ちゃんを守らないと行けないんです、邪魔しないで下さい。」
そう言いながらわたしは、前を阻む女を避けて洞窟の奥に入りました。
まったく、今の人はなんなんでしょうね。
特に坊ちゃんを悪く言うのは許せません。
今度、坊ちゃんを侮辱することを言ったら、いくら私でも我慢できません。
おっと、いつまでも気にしている場合ではありません。
早く坊ちゃんを捜し出さないと。
しばらくは平坦な道が続きます。
しかもなぜか明かりがついているので進むのも楽でした。
しかし、洞窟ということもあってある程度の緊張感が張りつめます。
5分くらい進んでやっと、前方が開けました。
ところが・・・
目の前には、比較的流れの速い川が流れています。
その川には20個ほどの岩が顔を出していました。
しかもなぜか、渡りやすいように表面が平らになっています。
・・・これは怪しいですね。
「なんて、親切なんだろう」と感動して渡ろう岩に乗った瞬間、実は偽物で崩れたり沈んだりしそうな気がしてなりません。
落ちたら当然この川の流れからして・・・
しかし、先に進むにはここをわたらなければならず、どうしようかと考えていたその時
「まだまだ甘いわね。」
後ろから、聞き覚えのある声がしました。しかも、聞きたくない声でした・・・
「余計なお世話ですよ。」
わたしは振り返り、わざと迷惑そうに返します。
「あなた大事な坊ちゃんを助けに行くんでしょ? こんなところで立ち往生なんて、その坊ちゃんとやらを思う心が足りないんじゃないの?」
うっ、言ってはならないことを・・・
「なっ、なにを言うんですか。大切な坊ちゃんを守るというこの心は絶対誰にも負けませんよ! だったら、あなたの大事なジャックさんのためにあなたはここを簡単に渡れるんですか?」
わたしは、負けじと言い返します。
すると、
「まったく、なにを言うのかと思えば。ジャックのためならこんなものは、障害とも思えないわね。大事な人のための勇気なら、あなたには絶対負けないわよ。」
女は勝ち誇った表情で言い切ります。
「なにを言うんですか!私の方が絶対にまさっています。」
わたしは、これに関しては絶対引けません。引いた時点で坊ちゃんを守る資格がなくなってしまいますから。
「あなたも、聞き分けがないのね・・・」
やれやれという表情で女は言います。
って、これって聞き分けることなんですかね。
続けて女は、
「だったら、こうしましょう。行く先々の罠を大事な人を守る心で多く乗り切った方がまさるということでどうかしら?」
「望むところですよ。」
こういう勝負となれば絶対に引くわけには行きません。
坊ちゃん。絶対この勝負に勝ってわたしは坊ちゃんを守るべき人間ということを証明して見せます!
「だったら早速、あの川渡りで勝負よ。」

Battle 1 急流岩渡り対決

「さて、どっちが先に渡るかですね。」
わたしは、速い川の流れを眺めながら言いました。
「おや、いきなりそんなことで守るべき人を助けられるのかねぇ? 当然私が先に行くわ。臆病なあんたはそこにずっといたら?」
女はそう言うと、川に向かって進み始めました。
そして、なんのためらいもなく岩に足を乗せました。
そらに、なんも考えずに勢い良く渡っていきます。
・・・だいじょうぶですかね。
と思っていた矢先、
ドボン!
「キャア!」
予想通り偽物の岩があったようで、バランスを崩した女は川の流れに身を任されて流されていきました・・・
このチャレンジはどうしても後の方が有利です。
先にチャレンジした人を見ることによって、ある程度は正しい岩を見切れますので。
慎重さも時と場合によっては必要というのをあの世で痛感して下さい・・・
と、私は両手を合わせて冥福を祈りました。
さて、今度は私が渡らないといけないですね。
相手が罠で逝ってしまったこと言うことで、既に戦いは終わってしまいましたがここを渡らないと坊ちゃんに追いつかないですから・・・
ちょっと待って下さい?
今まで気がつかなかったんですが、坊ちゃんはここを渡りきったのでしょうか?
もしかして・・・まさか・・・ああっ!
私としたことがなんという想像を! 坊ちゃんに、そんなことがあるわけありません。
とにかくここを渡りましょう。
途中までは、女の通った方法で行けるはずです。
ところが、川のそばまで近づいたときに、
ガガガガガタン!
かすかではありますが川の流れる音に混ざって、機械的な音が混ざっていました。
まさか・・・
わたしは、あえて女が乗らなかった方の岩に乗ってみました。
岩は、まったく動じず私を支えました。
わたしは、大斧を取り出すと女が乗った岩を押してみました。
「それは反則では?」とお思いのあなた。それは違いますよ。
相手はもう、帰らぬ人になってしまいましたので戦いは終わってしまいましたから。
それになんと言っても、坊ちゃんを見つけるためならば許されるに違いありません。
誰がなんと言おうともです!
さて、押してると案の定ぐらぐらと揺れました。
やはり、さっきの音は動かない岩を変えるためのもものなんですね。
しかし、ここを作った人は・・・ここまで良くやりますね。
ということで、私はこの方法で何とか対岸に無事渡りきりました。
坊ちゃんも棒を持っていますから同じ方法で渡ったのでしょう。

川の対岸にも1本の道が出ており、しばらくはそこを進んでいました。
そこを抜けて再び開けた場所に出ました。中央部分はは床が1段高くなっおり、その向こうには先へ進む通路が見えました。1段高い床は、意外と広くなっているようです。
その高い床の左右には、石でできた大きな扉のようなものがありました。
床にあがると何かがあるようですね。
さて、どうしましょうか・・・・と考えていると、
「まったく、またおびえているのね」
と後ろからまた聞き覚えの声が・・・
ま、まさかと思い振り向くと、
「うわぁ! ば、化けて出ましたね! 迷わず成仏してください!」
そこには濡れた髪を前にたらし、半分疲れている顔をして、全身ずぶ濡れになったあの女が立っていました。
その雰囲気はまさにお化けそのものです。それに彼女はさっきあのようなことになってしまいましたからね。化けて出る可能性は十分あるでしょう。
わたしは、祟られないように斧を装備して身構えます。
「なによ失礼ね、ちゃんと生きているわよ!」
女は、髪を元のように整えながら言います。
「え゛、本当ですか? だとしてもどうやってあの流れから抜け出すんですか?」
わたしは、不思議な状況に質問しないではいられませんでした。
「簡単なことよ」
「えっ?」
「ちょっと下流に行ったところで、すぐに流れが緩やかになったわ。それに、ちゃんと川から出られるように階段もあったし。」
「はい?」
下流で流れが緩やかになるのはまだしも(なのでしょうか?)階段まで用意されているなんて、ここって本当に財宝があるところなんですかね。
なんにしても、私は最初から信用していませんが。
「それに、着替えるところまであったわよ。でも、タオルや着替えがなかったからこのまま出て来ちゃったけど・・・」
ち、ちょっとそれって・・・
「ちょっと、それっておかしいと思いませんでしたか?」
わたしは、あまりのことに苦笑しながら聞きます。
「べつに、なんで? 親切で良いじゃないの。」
こんな妨害を仕掛けておいて、親切もなにもないと思いますが・・・。
「そんなことを言っている場合じゃないわ。どうやらあなたは運良く渡ってしまったようね。でも、ここではそうは行かないわよ。」
あっ、そう言えば勝負していたんですね。
これじゃ、岩を突っついて渡ったなんて死んでも言えなくなってしまいました・・・

グレミオ 1−0 謎の女

「今度は同時に行くわよ。」
女はそう言うと、1段高い床を目指して走っていきました。
「ち、ちょっと待って下さいよ。」
仕方なく、私もその後に続きます。
床に乗りその半分まで来たとき、
ヒュー・・・・ダン!
床の周りに鉄格子が天井から一気に落ちてきました。
「し、しまったわ。まさかこんな罠が仕掛けてあるなんて。」
「また、そうやって一気に突っ込むからですよ。」
「なにを言うの! 人を助けるためならばこの身を犠牲にしても進むのが人を守ることなのよ! あなたにはそれが判らないの?」
うっ、確かにそれはありますね・・・
「そんなことはありませんよ! こうして私も付いてきたじゃないですか。」
と言い返したとき。
ゴゴゴ・・・
床の両端にあった壁の扉のうち、女に近い方がゆっくりと開いていきます。
二人は無言のまま、扉が開くのを待ちます。
その奥の闇に、きらりと光った目を私は見逃しませんでした。

Battle 2 魔物と対決

「気を付けて下さい。何かがいますよ。」
わたしは、斧を再び構えて備えながら言います。
「わたしは、ジャックを守りきるまでは死ねないわ。そうだちょうど良いわ。あの魔物を倒した方がここの勝負の勝者にしましょう。」
女も、ナイフを取り出しながら言います。
そう言っている間に、扉のおくからその間もが姿を現そうとしています。
「なるほど。良いですよ。」
「なら、行くわよ。」
「来ましたよ!」
扉のおくから黒い影が飛び出します。
・・・しかし、
大きさはさほど大きくはなく形はほとんど丸、そのからだは長い毛で覆われている生き物が私たちの前に現れました・・・
もう、おわかりですね。
「ふさふさ」でした。
半分やる気を無くしそうでしたが、わたしは勝負のことを思い出しふさふさを追いかけます。
しかし、素早さだけはあるようで、場内をはね回って逃げています。
ところが女はそれに動じず、たまたま目の前に来たふさふさを片手であっさり捕まえ、
「ジャックをどこにやったの!」
と、なんとふさふさに居場所を聞いているようです。
「ち、ちよっと。そんなこと聞いても・・・」
わたしの、忠告を無視して彼女はつづけます。
「なにを黙っているの!どうせあんた達がジャックを隠したんでしょ!」
ふさふさは、あまりの出来事にほとんど見えない目が点になっているかのようでした。
しかし、女はそんなことはお構いなしに、
「言わないと、許さないわよ!」
と、今度はナイフを突きつけて脅しています。
なにもそこまでしなくても・・・
さすがにこれに驚いたふさふさは、
がぶっ!
「うぎゃあ!」
ふさふさは女の手に器用に噛みつきました。
「なにするのよ!」
女はかまれた手を振り回し、その勢いでふさふさを天井に放りあげてしまいました。
よし、今です。
わたしは、すぐさま詠唱を始め、
「かぜ・・・、は、速いっ!」
女は、ふさふさを放りあげると一緒にジャンプし、ふさふさを始末してしまいました。
それだけならまぁ良いのですが・・・
「ちょっと、もう白状したらどうなの! 寝たフリをしてもダメよ。」
すでに、息絶えてしまったふさふさにいまだに尋問しているようです。
「あの、ひとつ言っておきますけど、ふさふさはしゃべれないと思いますよ。」
業を煮やした私はがそう言うと、
「あら、そうなの? じゃあ、しょうがないわね。」
と言うと、
ポイッ
と、ふさふさを放り投げてしまいました。
これは、今まで見た中で一番かわいそうなふさふさかもしれません・・・
そして、
ゴゴゴ・・・
今まで塞いでいた鉄格子がゆっくりとあがっていきました。
「ここの勝負は私の勝ちね。まっ、当然の結果よね。」
「つ、次はこうは行きませんからね。」
私たちは先の道を進みながら、言い合います。

グレミオ 1−1 謎の女

Battle 3 巨大迷路脱出大作戦

「今度は迷路のようですね。」
しばらく進むと、洞窟の広い空間の中に巨大な迷路が作られていました。
「こんもので、私とジャックの絆を閉ざすことはできないわよ。」
そう言うと、女はどこに隠していたのか巨大な金槌を取り出すと、
バガン!
なんと、迷路の壁をたたき壊しています。
迷路の壁も弱いらしく、あっさりと崩れていきました。
「ちょ、ちょっと、そんなことして大丈夫なんですか?」
いきなり壁を壊すという大技にでた女に呆れながら私は聞きます。
「なに言ってるの? 私とジャックとの愛の間に壁は必要ないわ! そんな壁は壊すのみ!」
う〜ん、合っているような違うような・・・
と、考えている間にも女はどんどん先を壊していきます。
「はっ、しまった!」
このままでは先を越されてしまいます。
わたしは、大斧を取り出すと別の壁を叩いてみます。
ガン!
するとやはり壁はあっさり崩れ落ちていきます。
こうなったら、仕方ありません。坊ちゃんを助けるためら何でもしないといけません。
こうしてしばらくのあいだ、洞窟内に破壊音と壁が崩れる音が響きわたっていました。
壁自体は後から人の手で作られたので、破壊しても洞窟自体には影響はない様子です。
さて、既に50枚近くずつは破壊しているようですがやっと後半に入ったようです。
はぁ、はぁ・・・ ドガン!
壁を挟んで隣にいるようで、荒い息がこちらまで聞こえています。
さすがにこれだけ破壊すれば、誰でも疲れますよ。
とうぜん私も・・・
「はぁ、はぁ・・・」
いったいどれだけあるんですかこの壁は! もう、途方に暮れそうでした。
しかし、この先に坊ちゃんが居ると言うことを考えると、
「へこたれている場合ではありません! 坊ちゃんを見つけるためにはこの壁を突破しないといけないんです!」
私は自らに気合いを入れるためにそう叫ぶと、再び全速力で壁を壊し続けます。
そしてしばらく壁を破り続けると、急に目の前が開けました。
「遅かったわね。」
「な、なぜ・・・」
わたしの目の前には、腕組みをしたあの女が立っていました。
「ふっ、わたしとジャックとの愛を阻むものが少なかったのね。」
どうやら、迷路だけあって壁の枚数に差があったようです・・・
しかし、こんな運みたいなことでわたしと坊ちゃんの絆が壊れることはありません!
「たまたま運で勝ったからって、自慢されちゃ困りますよ。 次はわたしが実力で勝ちますよ。」
わたしは、そう言うと先へと進みます。
「負け惜しみも程々にしたらどう?」
女もまったく動じず後を続きます。
どうやら彼女に挑発などは通じないようですね。

グレミオ 1−2 謎の女

しばらく進むと、今度の空間は今までよりも比較的狭い場所にでました。
その空間には、20個程度の机と椅子が綺麗に整列しています。
その机の向く先には、ひとつの壇が置いてありました。
たとえれば、それはまさに学校といった感じです。
机の上には1枚の紙がそれぞれ乗っていました。
わたしと女はとりあえずそれぞれ好きな席に座りました。
それと同時に。
「好きな机を選び、そこにある問題を解きなさい。 最終的な答えばどの問題も一緒である。」
という声がどこからか聞こえました。

Battle 4 頭脳対決

「今度は頭脳対決ね。望むところよ。」
「わたしも、坊ちゃんのためなら負けませんよ。」
わたしと女はいつもの言い合いの後、早速問題に向かいます。
さて、わたしの問題はと・・・

さぁ、あなたも挑戦してみてください。(難易度低めです)

一.次の中で掛け合わせ魔法とならない組み合わせは?
1,風+土 2,火+風 3,水+風

二.命中率などが下がるステータス異常の時はどういう表示?
1,バケツをかぶってしまう 2,サングラスがかかる 
3,プライバシー保護のための写真に目だけ黒いラインがかかるような感じ

三.次の中で、だれも鑑定できない品を持っているものはどれ?
1,ひいらぎのせい 2.ひいらぎこぞう 3.ひいらぎマスター

四.次の中で、パーティーに入れられる人は誰
1,ユーゴ 2,ヘリオン 3,ガスパー

五.カナックのおきまりの挨拶は?
1,いらっしゃい 2,よう 3,こんちは

六.フッケンの3つ目の武器の名は
1,おろかものめ! 2,ばちあたりめ! 3,おやふこうものめ!

七.トラン湖の本拠地での宿屋の代金は?
1,0ポッチ 2,5ポッチ 3,10ポッチ

八.戦争イベントのチーム名「ハンフリーチームに居るのは以下のうちだれ? 」
1,グレンシール 2,フッチ 3,サンチェス

最後に、核問題の答えの番号を1問目から順番に下記のように計算して答えを導け。

1(問目)+2×3−4−5+6×7−8=答え


ふう、何とか解きおわりました。
しかし、
「よし、できたわ!」
女はそういうとさっと立ち上がり、素早く黒板の位置に移動していきます。
これはまずいですね。
わたしも、急いで立ち上がり黒板に向かいますが・・・
「わたしの方が先ね。」
そういうと女は黒板にある入り口から中に入っていきました。
それと同時に、扉が閉まり遮断されました。
答えが他の人に判らないようにしているんでしょう。
しかし困りましたね、これに負けると後が辛いです。
ところが、閉じていた扉が開き、
「なんで違うのよ!」
中から、大きい声が聞こえてきました。
おおっ、間違ったとなるとチャンスですね。
「なんとか言ったらどうなの!」
女の声が再びします。
なんか、またやっているようですね。
このままではしばらく出てこないだろうと判断したわたしは、中に入ってみました。
何かの機械の前であの女が凄い見幕で立っていました。
「ちょっと、どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもないわよ。わたしの答えが間違っているなんて信じられないわよ。」
「違うんだったらしょうがないじゃないですか。次はわたしの番ですから。」
「違ってないわよ!」
彼女は引く気がないようです。
「で、その答えってなんですか?」
わたしは、一応聞いてみます。なんか嫌な予感がしたので・・・
「そんなの、ジャックに決まっているじゃない。」
・・・・・・・・ちょ、ちょっと。
「いったいどうしたらそんな答えになるんです?」
わたしは、呆れた表情のままで聞きます。
「何がなんでもジャックなの!」
帰ってきた答えは、いままでから考えれば想像できそうなものでした。
「とにかくルールですので、次はわたしの番ですよ。」
というと私は、機械の前に立ちました。
「答えを小声で言ってください。」
と、機械から声が聞こえてきました。
「5ですね。」
とわたしは答えます。。
「おめでとうございます。正解です。次のコーナーへどうぞ」
と言う声が聞こえ、隣にあった扉が開きます。
「これで、五分五分に戻しましたね。」
わたしは、勝ち誇って女に話していると、
「あれ、どうしたのグレミオ?」
聞き覚えの声が後ろからしました。
今度は、とても落ち着ける声です。
「ぼ、坊ちゃん! ずいぶん探したんですよ!」
「ごめんごめん。だって言うと絶対ダメだって言うだろうから。」
「当然ですよ。」
「おや?こちらにもお客さんですか?」
坊ちゃんと話していると、坊ちゃんの後ろからひとりの男性が歩いてきた。
「ジャックさん大丈夫です。わたしの連れですので。」
ジャックさん?
と言うことは・・・
わたしは、ゆっくりと後ろを振り返ります。
やはり・・・
振り向いた先には、目をきらきら光らせた女が立っていました。
「やっと見つけたわ、ジャック。もう心配させないでよ!」
そういうと彼女は、一直線にジャックさんの元に走っていきます。
「げ、レイミー。どうしてここに。」
ジャックさんは一瞬表情をこわばらせていたのをわたしは見逃しませんでした。
「ねぇ、グレミオ。いったいどういうことなの?」
坊ちゃんはあっけに取られた様子で聞いてきます。
無理もないですね。
「ジャックさんをずいぶん気合いを入れて捜していたようですよ。」
わたしは、呆れた表情のまま答えます。
「なんだ、それじゃグレミオと一緒だね。」
「そ、そんな。あの人と一緒にしないでくださいよ。」
わたしは、手を思いっきり横に振りながら言います。
「なんで? 同じ過保護に見えるけどなぁ。」
「過保護だなんて・・・わたしは坊ちゃんを心配しているんですよ。」
「はいはい。でも、良くここが判ったね。」
「大変だったんですよ。この地図のせいで・・・ あっ!ジャックさん、この地図はいったいどういうことですか?」
「ああ、その地図ですね。本当に申し訳ないです。」
ジャックさんは抱きつくレイミーを引きずりながら近寄ってきました。
「宝の地図とか聞きましたけど、どういうことです?
 それに、坊ちゃんまで巻き込んで・・・」
「まぁまぁ、グレミオ。
 ぼくは気にしてないって。」
坊ちゃんは、ジャックさんをかばってきます。
「坊ちゃんがそう言うのなら・・・ でも、事情だけでも良いですか?」
「わたしは、遊園地を作っておりまして、その宣伝をある商に頼んだんですよ。ところが聞いてみると、いろいろと勝手に付け加えられていたようで・・・ 申し訳ありません。お詫びと言うことで公開前に案内していたのです。」
どうやら、冒険を楽しむ為に作られたものみたいですね。
となると、更衣所などがあっても変ではないですね・・・
「ずっとジャックさんに案内してもらっていたんだ。」
坊ちゃんは楽しそうに言います。
「それは良かったですね。」
一時はどうなるかと思いましたが、わたしはだいぶ安心してにこりと答えました。
「坊ちゃん、そろそろ帰りましょう。」
「うん、そうだね。ジャックさん、ありがとう。」
「いえいえ、こちらこそご面倒かけたようで。」
ジャックさんは相変わらず、レイミーに抱きつかれながら答えます。

「ねぇグレミオ、これからどうするの?」
帰り道、坊ちゃんが訪ねてきます。
「今日1日泊まってから、明日出発しましょう・・・ あっ!
わたしはこのときあることを思い出しました。
「いえ、坊ちゃん。宿屋に帰ってすぐ出発しましょう。」
と、わたしは焦りながら言い直します。
「ど、どうしたの急に?」
坊ちゃんが、驚いた表情で聞いてきます。
「訳は話せないんですが、すぐ出発した方が良いみたいなんです。」
あの、壊した迷路を思い出した今、早急に去った方が無難でしょうから・・・
その場の勢いとはいえ・・・まずいですよね。
わたしはそう言うと坊ちゃんを手を握り、走り出しました。
「ちょ、ちょっとグレミオ! そんなに急がなくても良いじゃないか。」
坊ちゃんの嘆願も無視し、わたしは町へと走っていきました。
その後レイミーは間違いなく怒られているんでしょうね・・・


解答

2+1*3−2−3+2*3−1=5

(念のためですが、積が先ですよ)

解説
二.2はファイナルファンタジーなど、3はロマンシング・サガ2
四.関係ないけどビッキーを連れていきたかった人は多そうですけどね。
五.2はハンフリーですね。
七.ただじゃ無いというのが(笑)
八.これは意外ですね。
  サンチェスは一緒にいるときが多いですが、108星ではないですからね 。


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