グレミオのお守り道中2  

−謎のお嬢さん−


△第1話「グレミオのお守り道中」
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「坊ちゃん、今日も良い天気ですね。こういう日は気分が良いですよね。」
おっと、申し遅れました。わたしはグレミオと言います。
「確かに、天気が良いのはうれしいけど・・・」
こちらは、モリス坊ちゃん。わたしたちの居た国を帝国から解放した解放軍の リーダーでした。
ですが、解放後になって急に旅に出るとか言い出したので、坊ちゃんの身を心 配したわたしは、反対したのですが・・・
みんなの長い説得に負けて100歩ゆずって、一緒に付いてお守りしようとい うことにしたのです。
わたしは坊ちゃんを世話をするのが生き甲斐ですから。
「なんですか?坊ちゃん」

ぐぅーー

あらっ、二人でおなかを鳴らしてしまいました。
恥ずかしいお話しですが、最近わたしたちは大した食事をしていないんです。
旅って意外とお金がかかるんですね。食事代、宿代、川などを渡る船代など・ ・・
共和国を出るときに、結構持ってきたのですがやっぱり坊ちゃんを危ない目に は遭わせられないので、ちゃんと宿を取ったのです。他にもいろいろと・・・
それでいつのまにか、所持金が乏しくなっていったのです。
わたしたちなど旅の者へは、いろいろと仕事の話も入ってくるのですが、やっ ぱり危険な仕事をやらせる訳には行かないので、有無を言わさずわたしがお断り しました。
さらに、前にとある村での話しに顔を突っ込んで相当危険な目に遭ってからは 、話すらも聞かないようにしていました。
まぁ、お金はその辺の怪物でも倒せば大丈夫と思っていたのですが、この近辺 は変に平和で怪物はいないようです。木々が所々生えている、野原の一本道を歩 いているの
ですが、なにも見あたりません。おかげでこの有り様なのです・・・

「ねぇ、グレミオ。今度の町ではどんな仕事でも引き受けてよ。」
「し、しかし坊ちゃんを危ない目には遭わせられません。」
「グレミオは、いつもそればっかりだなぁ。だから、お金が無くなってしまう じゃないか。

「あのう?」

 修行の旅なんだから、すこしは・・・ えっ?グレミオなんか言った?」
「いえ、わたしはなにも。ぼっちゃん、そう言いますけどわたしは・・・

「すいませ〜ん!」

 わたしは、坊ちゃんのことが心配で言ってる・・・あれ?坊ちゃんなにか? 」
「僕は、なにも言ってないけど。」

「いい加減、無視はしないで下さい!」

わたしたちは、びっくりして後ろを振り返ると、1人の少女がいました。
肩に掛かるかかからないか程度の栗色の髪で、服はその辺の人が来ている物で した。
どこにでも居る、女の子という感じです。歳は15歳程度でしょうか。

「ごめん、僕たち忙しいんだ。また今度にしてくれない? で、グレミオ。今 度、仕事の話しがあったら絶対受けるからね。」
「いいえ、危ない仕事だったらダメですよ。」
少女は、坊ちゃんの態度にちょっと気に入らないという顔をしていましたが、 仕事という話を聞いて、
「その仕事をお願いしたいんだけど?」
「えっ?」
わたしたちは、同時に声を上げました。でも・・・
「坊ちゃん、とりあえず話しだけ聞いてあげて追い返しましょうか?」
「うーん。このまま帰れと言っても帰らなさそうだし・・・」
「こら!そこでなにをこそこそしているの!」
「えっ、いや」と、二人で同時に彼女の方へ向きなおしました。
なかなかこの子、気は強い方のようです。
「で、お仕事なんですけど、わたしを悪い人から守って欲しいの。お二人さん とも、武器みたいのを持っているようだし。おねがいっ!」
わたしは、一瞬たりとも考えずに、こう言いました。
「申し訳ないけどそれはできません。」
「え、そんな・・・。なんでダメなの?」
「わたしは、坊ちゃんを守らないといけないですから。」
ずるぅっ!
彼女は、大げさにこけてます。
「ち、ちょっとグレミオ。」と坊ちゃん。
「ううっ・・・ わ、わたしなんかよりその少年の方が大事なのね!」
誰が見てもわざとらしく、悲しい表情で言う彼女に対して、わたしはちょっと 躊躇しそうになりましたが、
「ちょ、ちょっと・・・ でも、それが当然です。」
彼女はあっさりもとの表情に戻り、
「も、もしかして、あなたってそういう趣味なの?」
「な、なんですかそれは!」
あまりにも意外な彼女の発言に、わたしは口調が変わっていました。
「ぷぷぷ・・・」
坊ちゃんは、横で必死に笑いをこらえようとしています。
「ちょ、ちょっと坊ちゃん・・・」
でも、見知らぬ人をいきなり守らなくてはいけないというのもおかしな話しな のは事実です。
彼女は続けて、
「もちろんタダじゃないわよ。前金で10万用意するけど?終わったときにあ と10万ね。」
「じゅ、じゅうまん!?」
坊ちゃんとわたしは、同時に驚きの声を上げました。そして彼女は、背負って いた荷物から、財布をとりだし10万ポッチを見せびらかしています。
ちょっとしたお守りの仕事でこの金額は破格です。これがあれば、しばらくは 坊ちゃんを危険な目に遭わせずに済みますが・・・
「グレミオ、この仕事受けよう。」
「ほ、ほんとですか?うれしいなぁ、おにいちゃん。」
「ちょっと坊ちゃん。まだ相手がどんな者かわからないんですよ。それに仕事 とはいえ、子どもからお金を貰おうなんて。」
「大丈夫ですって、なんとかなりますよ。それにわたしを子ども扱いしないで よ、怪しい趣味のグレミオさん。」
彼女はニヤリとこっちを見ています。
「ま、まだそんなことを言うんですか。わたしはそういう理由で坊ちゃんを守 っているんじゃないんですよ!」
「彼女もこう言っているんだし。とにかく、この仕事は受けるよ。グレミオ」
「仕方がないですね。今回だけですよ。」
お金に目がくらんでしまうとは・・・我ながら情けないです。
みんな貧乏が悪いんです・・・
「ところで名前を聞いてなかったね。」と坊ちゃん。
「わたし、クレシアと言うの。よろしくね。」
「ぼくはモリス、彼はグレミオ。」
「ところで、クレシアさん。状況を聞きたいんですが」
今度は、わたしが聞く。
「教えても良いんだけど、いまはそんな状況じゃないみたい。」
彼女は、話すと同時にわたしたちの後ろを指をさしています。
わたしたちが振り向くと、茂みから何人かの男達が・・・
「その嬢ちゃんを、こちらに渡してくれないか?」
1人の男が、ありきたりの台詞を言ってきます。
相手は3人。悪役としては、どこにでもいるような体格の良い人達です。
まぁ、少女相手なら3人で十分だと思ったんでしょうけど。
「どうして、この娘を狙うんですか?」
と、わたしは聞いてみます。
「おまえらには関係ないことだ。さあ、こちらへ渡すんだ。」
「断る!」
坊ちゃんはあっさりと返します。
「んじゃ、死んでもらうしかあるまい。」
というと男達は、こちらに向かってきます。
坊ちゃんとわたしは、武器を持って構え対抗します。
しかしあまりにも不甲斐ない相手で、あっさりと勝負が付きそうなとき・・・

がさっ!

別の茂みに隠れていた1人の男が、クレシアさんに向かっていきます。
どうやら、私たちに気がついた時点で、様子を探らせるために潜んだのでしょ う。
彼女は意外な攻撃に悲鳴を上げています。わたしは一気に彼女の前に走り込み 、斧を振り上げます。相手もとっさに剣を出し、

ガキン!

武器同士が激しく当たります。
「逃げるんです!」わたしは彼女に言います。
彼女は、ちょっと意外な顔をしながら、既に敵を倒した坊ちゃんの方へ駆け寄 り、
坊ちゃんに、
「グレミオさんて、ちゃんとした良い方なんですね。」
ちょっと、なにを言ってるのですか。坊ちゃんも笑わないようにしてください ・・・
この戦いも、やはりあっさり付きました。わたしの斧を一気に上げ相手の剣を 外すと、一気に振り下ろしました。相手は返す間もなく・・・
相手が弱くて助かりました。

そして、夕方。

着いた町の一軒の宿屋の食堂で、食事をしています。
わたしたちは、久々のまともな食事に感動しながら、事情を聞くことにしまし た。
「クレシアさん。仕事中の宿代などは全部だしてくれるそうですが、大丈夫な んですか?」
「大丈夫ですよ。いつもお小遣いをもらっていますから。」
「お小遣いって・・・なんでそんな大金を?」
「これって、大金なんですか?」

カラン・・・

わたしは、思わずスプーンを落としてしまいました。
「坊ちゃんどう思います?」
「えっ?グレミオどうしたの?」
あらら、食べるのに夢中なようで・・・まだまだ子どもなんですね。
だからこそ、お守りする気になれるのですが。
クレシアさんは再び、
「こう見えてもわたし、かの有名な・・・」
「有名な?」
彼女はピタリと話をやめ、周りを見回しています。大声で「有名な」なんて言 ったので、まわりの客が興味を示しているようです。
「いえ、あの、そのぅ・・・・。じゃあ、ちょっと良い?」
彼女は、手でわたしたちをテーブルの中心に呼び寄せます。
3人で顔を寄せ集めている光景は、端から見るとどうなっているのでしょうか ・・・
「わたしは、アレン家の長女なんです。」
「ア!、アレ・・うっ」
「声が大きいです、モリスおにぃちゃん。」
彼女が大きな声で話そうとした坊ちゃんの口をふさぎます。
元の状態に戻ると、坊ちゃんは再び、
「で、その家がどうしたの??」
ずるるぅっ!
彼女は、椅子からずれ落ちそうになっています。
「なんで?あなた知らないの?」
「全然」
「グレミオさんは?」
「ごめんなさい、まったく存じてないです。」
「な、なんてことなの。知らない人がいるなんて・・・ いつか帰ったら、爺 に良く言っておかないといけないわね。」
なにか、1人で悲しい少女を演じているようです。
「あの、わたしたちは旅の者だから知らなくても不思議ではないと思いますけ ど?」
その爺という人は知らないのですが、フォローしてあげないとかわいそうに思 えてしまいます。
「いいえ、これは全部の人が知っていないといけない事と思うわ。」
「そこまで完璧にしなくてもね、坊ちゃん」
「うーん、そうだね。」
「いいえ、わたしの家は代々・・・・」
その後1時間近くにもわたる、アレン家の伝説というものを聞く羽目になって しまいました。
最初は仕事と言って来たとはいえ、子どもからお金を貰った上に宿代なども払 って貰うのも気が引けたのですが、金持ちの娘だったら、その親から頼まれたと いう事にしてしまえばと、考えることにしました。それならばまだ気が楽です。

やっとその話しが終わるとわたしは、
「そろそろ、今回の訳を聞かせてくれませんか?」
クレシアさんは、少し考え込んだあと
「ちょっと悪い人に、追われているだけだから。」
「その理由が聞きたいんだけど?」
 と、坊ちゃん
「ちょ、ちょっとそれは・・・」
複雑な表情をする、クレシアさん。
「まぁまぁ、坊ちゃん。話したくないなら、仕方がないのではないでしょうか ?」
彼女の表情に気がついたわたしは、坊ちゃんを止めることにしました。
「うん・・・そうだね、グレミオ」
坊ちゃんはちょっと残念そうな顔をしますが、優しい性格もありすぐに納得し たようです。
彼女は続いて、
「とりあえず、ベセタの町まで連れていって下さい。」
「グレミオ、その町ってどれくらい?」
わたしが手持ちの地図を取り出して、場所を調べます。
「たしか、国境の町ですね。ここからだと、だいたい1週間位でしょうか?」
「そこまで送れば良いんだね?」
「うん、よろしくね。」
彼女はにっこりと微笑み言いました。

食事も終わり、部屋に帰る際わたしは、
「ところで坊ちゃん、さっきのあの長い話の時、坊ちゃんは全然平気な感じで したがなんで大丈夫だったんですか? わたしは、疲れてしまいましたよ。」
「なんだい、グレミオはあの程度でダメだったの。戦士の村の村長の話に比べ たらあの程度は大丈夫だよ。」
「はぁ、そういうものなんですか。」
わたしは、その村長の話がどれだけのものか気になりましたが、聞くとなると 相当の覚悟が必要のような気がするのですぐに諦めました。

その後の道中は、

2〜3日目無事に過ごせました。
4日目6人の敵が襲来。
しかし敵のレベルは前とほぼ同じであっさり撃破です。
5日目困ったことに、クレシアさんが道中の湖の景色が気に入って休んでいったので、ロスタイムです。
6日目今度は10人できました。
久々に戦ったという気分がしました。
もちろん坊ちゃんが負ける訳がありません。
7日目この日はなにもありませんでした。
そのせいかクレシアさんが、変化のない風景に飽きていたようです。

そして、8日目。
ベセタの町まであと100里というところまで来ました。
今日中には、到着できそうです。
しかし、簡単には着けないようですね・・・
「待っていたぞ、いままで部下がさんざんお世話になったな。」
どうやら集団の筆頭らしき男が、つまらないお礼を言っているようです。
「どういたしまして。」
と坊ちゃんは、丁寧にも返しています。
「坊ちゃん、そんなのに乗らなくても良いんですよ。」
「まぁ、良いじゃない。面白そうだし。」
「ちょ、ちょっと、クレシアさんまで。」
「なにをごちゃごちゃ言っている!ボスのご命令でその娘は渡して貰うぞ!」
今回は、いままでの教訓からなのだろうか50人くらいは連れてきているよう です。
困ったことに、これはさすがにいままで通りには行かないようですね。
「ところで、どうして彼女を狙うんですか?」
また、わたしは聞いてみます。
「悪いけど、それは教えられないことになっているんだ。では、渡して貰うぞ 。」
「そうは行かないぞ!」
と坊ちゃんは返す。
「じゃあ、仕方がないな。力ずくとさせて貰おう。てめぇら、いけっ!」
「おおっ!」
かけ声と共に一斉にこっちへ向かってきます。これはさすがに多いです。
なんとか坊ちゃんは凌いでいますが、このままだとまずいです。
わたしは、左手を上げ・・・

−−大気を流れる無数の風達よ、いまこそこの地に集いて、強烈で巨大なる刃 を呼び起こしたまえ・・・

「あらし!」

空気が集まってできた三日月型の刃が、相手の中心へ向かっていきます。
10人程度がその刃にかかり、そのまま・・・
しかし、まだ相手はたくさん居ます。わたしはそれほど魔力がないので「あら し」
は1回が限度です。わたしは「いやしの風」で坊ちゃんを回復しながら戦いま す。
この紋章を選んだのは攻撃・防御・回復がそろっているからです。
やはり、人数が人数だけに押され気味です。
その時、炎の渦がわたしたちの後ろから飛んでたくさんの敵を飲み込みました 。
後ろを振り返ると、クレシアがニコッと笑い
「『おどる火炎』よ。びっくりした? でも、わたしは主人公なんだから、良 いところで活躍しないとね。」
いきなりの主人公宣言に、わたしは、
「ちょっと、なんであなたが主人公なんです?タイトルにもあるようにわたし が主人公なんですよ。」
「なに、タイトルとか訳の分からないことを言っているの!主人公は、わ・た ・し!」
「いいえ、これだけは譲れません。主人公はわたし・・・・・おっと」
わたしは坊ちゃんの存在を思い出し・・・
「いえいえ、わたしじゃなくて坊ちゃんが主人公ですよね。失礼しました。何 しろ、かの有名な解放軍のリーダーだったんですから。」
それに対してクレシアは、
「解放軍だかなんだか知らないけど、主人公はわたしクレシアで決まりなの! 」
「わた・・・いや、坊ちゃんです。」
「わたしなの!」
「坊ちゃんです!」
いきなりの言い争いに戸惑う坊ちゃんが、
「ちょ、ちょっと二人とも」
「坊ちゃん、止めないで下さい。これだけはハッキリさせないといけません。 」
「そうよ、モリスおにぃちゃん。邪魔しないで。」
そのまま、わたしとクレシアさんの攻防はしばらく続きました。
それに終止符を打ったのは・・・
「おい、いい加減にこっちを無視するな!」
そういえばまだ敵のボスは居たんですね。すっかり忘れるところでした。
まわりには生き残った数人が、待機しています。
しかし、さらにその後ろの道から、1人の男がやってきました。ただ、見た目 には戦いをする人には見えません。金持ちの商人といった感じです。
その男は、ボスらしい男に、
「なんだ!まだ、済ませてないのか?」
「すいません、ボス。なかなか手強い相手で」
なんと、あとから来たどう見てもそう見えない男がボスだったようです。
でも、ボスと思っていた人とは戦っていないので、実力はわからないんですが 。
「ボスという言い方はやめてくれないか。わたしはただの依頼人だぞ。」
「し、しかしわたしたちのグループでは、そういうしきたりになっているので す。」
どうやらただの依頼人のようですね。まったく紛らわしいです・・・
「げ!」
「どうしました?クレシアさん」
依頼人らしい男が来たとたんに、彼女の様子が変わりました。
「な、なんでもないよ、グレミオさん。さあ、この人達は放っておいて、先に 急ぎましょう!」
と言いつつわたしの服を引っ張ります。
「待ちなさい、クレシア!」
依頼人の男が、クレシアを呼び止めました。
「な、なによ。」
「いい加減にしないか。」
「だめよ、わたしはやめないからね。」
「言うことを聞きなさい。クレシア」

「坊ちゃん。なんか会話が妙ですね。」
わたしは、坊ちゃんに聞いてみます。
「そ、そうだね。いったいなんだろう?」
「わたしは、なんか嫌な予感がするのですが・・・」

クレシアさんは、不機嫌な顔で、
「そうやっていつも同じ事ばかり言うんだから。」
対する、依頼人の男も不機嫌そうに、
「うるさい、おまえはわたしの娘だろうが!」

『むっ、娘ぇぇ!?』
わたしと坊ちゃんは同時に、声を上げます。

「なによ。父さんだからって、全てを聞くわけにはいかないの!」

『とっ、父さんっ!?』
さっきと同じように、同時に声を上げます。
ふたりの言い争いを見ながらわたしは、
「坊ちゃん、わたしたちっていままで家出の片棒を担いでいたんですか?」
「うーん。そういうことになるね。グレミオ・・・」
『はぁ−』
わたしたちは同時にため息をつくと、こっそりとその場から去ることにしまし た。
相手のグループもあまりのしょうもなさに、既に撤退していました。
どうやら、彼らはクレシアさんの絵を見せられて「この娘を連れてこい」とし か言われていなかったようです。まさかそれが依頼人の娘とも知らずに。
まぁ、自分の娘が家出をしたなんて、恥ずかしくて言えないでしょうから。

「クレシア、今日こそは連れて帰るぞ。」
「そうはいかないわ、わたしたちには二人も守ってくれる人が・・・ あれっ !モリスおにいちゃん!グレミオさん!どこ行ったの!?
クレシアはやっと、私たちが居なくなったことに気がついたようです。
「こら、もう帰るぞ」
いつの間に、クレシアの父さんは近づいており、彼女の手をつかみました。
「いや!いや!帰らないの!ねぇ、どこ行くの二人とも。助けてよ!」
わたしたちは、かわいそうとは思いながらも、これ以上は家出を助ける訳には いかないので、振り向かずに立ち去ることにしました。
しばらく後ろから、クレシアの叫び声が聞こえ続けました・・・
良いところのお嬢さんだけあって・・・さすがのわたしも呆れてしまいます。

その夜、ベセタの町の宿屋の食堂で食事をしながら、

「坊ちゃん、今回はまた変なことになってしまいましたね。」
「そうだね、グレミオ。クレシアは今ごろ大丈夫かな。」
坊ちゃんは、シチューの中をスプーンで探りながら言います。
「そうとう怒られていると思いますけど・・・あっ!」
わたしは、ふと気がつき声を上げてしまいました。
まわりの客が一瞬こっちに振り向きましたが、大したことがないことに気がつ き元の状態に戻りました。
「どうしたのグレミオ?」
坊ちゃんは、平然とシチューを口にしています。
「そういえば、この10万どうします? 前金とはいえ返した方が良かったと 思いますが。」
「た、確かにそうかもしんないね。」
あっさりと言い返す坊ちゃん。しかもあんまり気にしていないような・・・
「でも、どこに住んでいるかわからないですし。」
「グレミオ、今度会ったときに返そう。」
「ぼ、坊ちゃん。」
あまりにも、楽観的な考えにちょっと唖然としてしまいました。
「僕たちには、いまお金が無いんだし・・・借りたという事にしよう。何しろ ここのお金を払わないといけないんだし・・・ 今後、仕事をちゃんとしてあら かじめ用意しておけば大丈夫じゃない?」
「まぁ、それもそうですね・・・」
確かに、見つからない以上はそうするしかないかなと思えてきました。
それに坊ちゃんの言うことはいつも正しいと信じてますから。
「じゃあ、今後はちゃんと仕事を受けるんだね。グレミオ」
「そ、それとこれとは別です。危険な仕事は受けませんからね。」
わたしは、きっぱりと答えます。
「グレミオ、結局それなのかい・・・」
坊ちゃんはまた不機嫌そうに言います。こっちは心配しているんですよ。

その後、結局アレン家の人には会わずいまだに10万ポッチは返せていません 。
アレン家はクレシアが言うほど有名でも無いらしく、結局情報もつかめません でした。
しかし、坊ちゃんが家出の手助けをすることになるなんて・・・
これも、みんな貧乏が悪いんです
それでも、わたしは坊ちゃんが危険な目に遭うような事を許すつもりはありま せんけどね。

▽第3話「非公認過保護選手権」
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