三番瀬(Sanbanze)と 谷潟  地帯・礫泥地の鳥

コアジサシ 絶滅危惧 II類 (VU)

採食中のコアジサシ コアジサシ
繁殖のため、オーストラリア、ニュージーランド方面から日本へ渡来し、空中からダイビングして小魚をとる 成鳥夏羽 5月 谷津干潟
コアジサシ
種 名 チドリ目/カモメ科/コアジサシ 小鯵刺 Sterna albifrons Little Tern
時 期 夏鳥。
形 態 L 240mm 嘴峰28-32mm 翼長167-193mm  尾長65-114mm ふ蹠16-18mm.
    雌雄同色。 夏冬異色。 日本産のアジサシ類中、最小。
    夏羽は、額が白く、頭上、後頸、眼先が黒色で、背、翼が淡い灰色。 尾と下面は白い。
    嘴は黄色で先端が黒色。 脚は橙黄色。
    冬羽は、頭頂が白く、頭側から後頭部に黒色帯がある。 尾の分岐は夏羽より浅い。
    嘴と脚は黒褐色。
    鳴き声: 「キュイ」、ディスプレイ時は「キュルリ キュルリ」と鳴く。
生   態
分 布 北極圏と南極大陸を除く、全世界に繁殖分布する。
    繁殖地は不連続的で、各大陸に点状に分布し、ユーラシア大陸の西部・東部と、アメリカ大陸の南東部に
    集中して繁殖分布する。
    冬は、各大陸の赤道以南に渡って越冬する。
    日本では、夏鳥として渡来し、本州以南の各地で繁殖しているが、繁殖地が埋立などで破壊されて減少し、
    絶滅危惧種に指定されている。 東京では
Little Ternプロジェクトが繁殖地を清掃工場の屋上につくり、
    コアジサシの繁殖に成果を上げている。

生息地 湖沼、河川、河口、大河川の河原、中州、干潟、砂浜などに生息する。
採 食 高度5-7mぐらいの上空を飛び交わしたり、ホバリングなどをして小魚、イカなどを見つけると、
    3-12mぐらい上空から水中に飛び込んで捕食する。

繁 殖 繁殖期は、5-7月。 一夫一妻。 つがいは縄張りを形成し、コロニーで繁殖をする。
    巣づくり: 地上の天敵が近づきにくい小島や中州の砂地に、浅い窪みを掘って巣をつくる。
    オスがいくつかの窪みを掘ってメスを誘う。メスが気に入った窪みの一つを選び、貝殻などを敷いて巣をつくる。
    産卵: 1巣卵数、1-4個、3個が多い。
    抱卵: 雌雄交代(メスが主)で抱卵する。
    孵化: 孵化日数、19-21日。 雛は早成性の半離巣性。
    育雛: 2-3日間はメスが抱雛し、オスが餌を運び、その後は雌雄が雛へ1-2ヶ月間、給餌をする。
    雛は生後、19-20日で飛べるようになる。

    繁殖期、非繁殖期ともに集団で生活をする。
    集団営巣地では、5-15つがいが多く、150つがいになることもある。
    巣から巣までの距離は、平均7メートルぐらい。 巣の周囲に狭い縄張りを形成する。
    縄張りの近くには餌となる魚が豊富にいる採食地があり、採食なわばりをもつ。
    縄張りへの侵入個体に対し、叫び声をあげたり、急降下攻撃をしたり、首を伸ばしたりして雌雄で共同防衛する。
    
    求愛のディスプレイは、フライトディスプレイと、グランドディスプレイをする。
    フライトディスプレイは、オスが魚を嘴に挟んで飛び回り、メスを誘うディスプレイ。
    1羽から複数の個体が追いかけるように上空へ上昇する、アジサシ類共通のハイフライトをする。
    メスはオスを追って螺旋状に100mぐらい上昇すると、オスは地上に向かってグライディングをする。
    メスはオスを追ってグライディングをする。
    グランドディスプレイは、オスが捕ってきた魚をメスにプレゼントする求愛給餌が行われる。
    メスがプレゼントの魚を受け取れば、つがい成立する。


絶滅指標 絶滅危惧 II類 (VU)
シギといっしょにいるコアジサシ2羽(左)とアジサシ1羽(右) 5月
写真左: 上はアジサシL360mm 下はコアジサシL240mm 5月 三番瀬
アジサシ類について

カモメ科のアジサシ類は、コアジサシ、アジサシ、クロハラアジサシ、ハシブトアジサシ、
オニアジサシ...など、世界で40種以上が知られています。

アジサシ類は、北極海から赤道を越えて南極圏にいたるまでの海洋、海岸線、湖沼などに生息しいて、
カモメ類の生息域と似ていますが、アジサシ類は熱帯の海域に生息する種が多いことが異なります。

渡りの長距離飛行、採食時の飛行、ホバリング・・・などアジサシ類は飛行の名手です。
上空を飛び交わしたり、ホバリングなどをして魚類、イカ類などを見つけると、上空から水中に飛び込んで採食します。

採食しやすい体形として、体が流線型で尾羽がツバメの尾羽のように長く尖った形になっていて、腹部が白い個体が多い。
腹部が白い訳は、魚が水中からアジサシ類の白い腹部を見ると透明に見えるため、魚に気づかれにくく実に採食しやすい
体のつくりになっています。
飛行の名手は、飛行して巣から100kmも離れた洋上まで採食に行きます。

それどころか、極地から極地へ渡りをするキョクアジサシ(最も長距離飛行をする渡り鳥)がいます。
北極圏の夏、ツンドラで繁殖を終えると、赤道を越えて南極圏へ渡って(片道12,800km)南極圏の夏を過ごし、
北極圏と南極圏間の渡りを繰り返すキョクアジサシは、年に2度の渡りで、約35,000kmもの飛行旅をします。


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