三番瀬(Sanbanze)と 谷潟  水地帯・砂浜の鳥

ハマシギ

採食中のハマシギ
越冬地に来た当初はスマート 成鳥夏羽から冬羽へ移行中 2000.10
次第に皮下脂肪がついて、ふっくらと 成鳥冬羽 2000.11.04
種 名 チドリ目/シギ科/ハマシギ 浜鷸 Limnodromus scolopaceus Dunlin
時 期 旅鳥、または冬鳥。
形 態 L 210mm 嘴峰32-42mm 翼長113-128mm  尾長51-60mm ふ蹠24-29mm.
    雌雄同色。 夏冬異色。 シギ類の中では最も数が多い。
    嘴は黒く、やや下に湾曲している。 脚は黒色。
    夏羽は、頭上に黒と赤褐色の縦斑があり、背は赤褐色に黒斑がある。
    下面は白く、上胸、頸側に黒い縦斑があり、腹部の大部分は黒い。飛翔時に翼の白帯が目立つ。
    冬羽は、上面が灰褐色で、下面は白く、胸には広く灰褐色の縦斑がある。
    鳴き声: 「ビーウ」と鳴き、ディスプレイ時は「ジュリー ジュリー」と鳴く。 
生   態
分 布 全北区。
    ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の北極圏に繁殖分布し、
    冬は地中海地域、アフリカ大陸、ペルシャ湾、インド、中国東部、北アメリカ大陸南部などに渡って越冬する。
    日本では、旅鳥として見られるのは8-10月、4-5月。 北海道から南西諸島までの各地に越冬する個体がいる。

生息地 渡り期・越冬地では、海岸の砂浜、干潟、潟湖、溜池、水を張った水田、内陸の湖沼や大河川の砂泥地などで見られる。
    繁殖地では、草原ツンドラ、泥炭草原ツンドラなどの湿性草原の中の小高い乾いたところで営巣する。
採 食 水につかるところで採食する。
    気ぜわしく歩き回って、水生昆虫、ゴカイ類、ヨコエビなどの甲殻類を採食する。
    砂泥地からついばんだり、泥の中に嘴を入れて探るようにして採食する。

繁 殖 繁殖期は、5-7月。一夫一妻、なかには一夫二 or 多妻。
    巣づくり: 草や木の根本に浅い窪みを掘って、巣材の枯れ草などを敷いて巣をつくる。
    産卵: 1巣卵数、3-4個、4個が多い。
    抱卵: オス・メスが交代で抱卵する。
    孵化: 22日ほどで孵化する。
    育雛: オス・メスが子育てをし、雛は18-20日ほどで独立する。

    
非繁殖期は、群れで生活をする。春の渡り期には数千、数万羽の群れになる。
    縄張りは、1平方kmあたり、1-2つがい(低密度)から19つがい(高密度)になる。
    求愛・営巣のために使われた縄張りは、雛が孵化するとなくなる。
    ディスプレイは、オスがフライトディスプレイをする。
    オスが縄張り上空や縄張り外の上空10-50mまで羽ばたいて斜め上に上昇し、ホバリングをしたあと、
    グライディングと上昇を繰り返す、スイッチバック型のディスプレイをする。
    求愛のディスプレイは、オスがシギ類共通のスクレイピングディスプレイを行う。

ハマシギの飛翔
大きな群れが 一斉に同調するのは... なぜ?
数百羽、数千羽の大きな群れで飛翔するとき、鳥たちは高密度になりますが、1羽も乱れずに背面が見えています。 谷津干潟
急旋回しても全員が見事に同調して、白い腹側が見えています。
ハマシギの群は1,000羽以上になることもあります。
大群の全員が揃った同じ形で、高く、低く、また高く飛んだり、急旋回などを繰り返す、そのさまは、まさに壮観です。

旋回する翼の角度によっては背面が見え、また、線となって見え、太陽光を受けた翼や腹の白い部分がキラッと光り、
それは、まるで冬季の大空のキャンバスに見る花火か花吹雪のように感じます。

群れで上昇するときはボール状に集まり、降下するときは平たく広がって飛翔します。
飛翔時、急に上昇・下降、急旋回を行っても全員が同時に背面を見せたり、腹部をキラッとさせるのは、
捕食者であるタカ類の眼をくらまして、天敵に攻撃されるのを防いでいるためなのです。
ひとかたまりに集まって上昇
ハマシギの採食
ハマシギの群
水につかるところで採食する(上)  満潮になると休息する(右)
満潮時でも浅い海域のある場所へ移動する個体もいる
満潮でも砂地が残る
ハマシギの越冬地
顔まで水につかって採食する。
水中や砂泥地で採食する。 三番瀬
識別標識をつけたハマシギ

1999年夏、繁殖地のアラスカ州ノーススロープで、
ハマシギ(46羽)に緑色のレッグ・フラッグ(旗)を付けて放鳥した。
その1羽が越冬のため、約6,000km離れた東京湾に渡来していたことが
2001.2.2 環境省の調査などでわかった。
渡り鳥のハマシギ生息地としても、大切な東京湾ですね。

緑色のレッグフラッグをつけたハマシギは、
習志野市谷津干潟、船橋市三番瀬、多摩川河口に渡来した。


レッグフラッグの意義

アジア大陸の特に東端から大陸の多くの場所で、シギ・チドリ類の生息地が急速に失われている現状が明らかにされ、保全戦略として、鳥たちの渡りのルートについて観察情報をできるだけたくさん集めるため、研究者たちがシギ・チドリ類の鳥たちの足につけてきた小さな旗(フラッグ)を利用しています。
フラッグの観察情報は鳥たちの保護だけでなく、湿地保全にも大いに役割をもつ情報です。

識別のカラーリングが、すね・ふ蹠に見える。
ハマシギが採食時につけた足跡
引っ張り出したゴカイを嘴に挟んで飛ぶ
干潟を気ぜわしく歩いて砂地を嘴で探り、ゴカイを見つけて採食する。しかし、ゴカイは伸びるので、なかなか引っ張り出せない。
秋、シベリアから渡って来た当初は痩せてスマートだった。 たくさん食べて皮下脂肪を蓄えた。 冬、ふっくらした。 春、繁殖地のシベリアへ旅立つ。
夕暮れまで干潟を忙しく歩いて採食し、ねぐらへ飛ぶ。
夕映えの三番瀬を飛ぶハマシギの群と富士山  2.16 三番瀬

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