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カイコの繭づくり・営繭
カイコが繭を作ることを営繭(えいけん)といいます。
上蔟(じょうぞく)した熟蚕は営繭する位置を決めるまで、うろうろ歩きます。
位置を決めて落ち着いたカイコは吐糸して足場を作り、2〜3日で繭ができます。



上蔟後、営繭する位置を決めたカイコ。
上蔟から約30分後。
先ず、壁面に糸を吐きつけて
足場をつくります。
カイコの繭づくり... 次に壁面の足場に腹脚と尾脚をかけて、
仰け反った格好で蔟(まぶし)の角や上部に足場作ります。
営繭は、これまででカイコが最も忙しい時です。
壁面の足場糸に腹脚と尾脚でつかまって体を仰け反らし、
次から次へと忙しく上部に足場糸を張ります。
吐いた糸を壁面にセリシンで接着して、じょうぶな足場を作ります。
中央上部に糸を張るときは、
腹脚で壁面の足場糸につかまり、
胸脚で糸を持って張ります。
壁面や床面の足場を作るときは、
上部の足場糸に尾脚でつかまる。
天井の足場は何本もの糸を束ねて、
特にじょうぶな足場を作ります。
カイコはセリシン・タンパク質で
糸を接着します。 蚕の吐く糸
吐糸口からどんどん糸を吐いて、繭を作るための足場を作ります。
足場を作るとき、胸脚の爪と足場糸がこすれる音が、ガサガサと聞こえます。
壁面の足場も多量の糸で強化します。
営繭中、たまに休息もしますが、
昼夜ほとんど休まず営繭します。
壁面の足場に腹脚をかけて、
上部の足場糸を突き上げ、
その強度テストを2-3回行なう。
弱い足場を補強。
胸脚を手のように使います。
糸を器用に持って上部を補強。
上部の足場の補強が終わると、強度テストを行います。
頭部と胸部で足場糸をアーチ形になるほど下から突き上げて、
その強度を確かめます。バリバリと糸がきしむ音が聞こえます。
そのとき蔟の仕切が内側に反る。それほど強く糸を張ります。
カイコは営繭中、上部の足場が完成するまでに2〜3回、強度テストを行います。
弱い足場には糸を細かく張る。あるいは糸を重ねて張って補強します。
5時間後。

上部の足場が完了。
カイコは上部の足場に尾脚で、壁面の足場に腹脚でつかまり、壁面と床面の足場を強化します。
すべての足場が完成すると、
いよいよカイコが入る繭作り。
11時間後、
まず、繭の上部から作ります。
カイコは繭の下部を作る前に、一生で初めての尿を排泄します。
尿を排泄する訳は、繭を汚さないためと、不要なタンパク質や、体液を排泄するためです。
カイコは繭糸を吐かないと、体内が過剰タンパク質になって死んでしまいます。
12時間後、尿を排泄。
排泄された尿と橙色の糞。
床面から見た画像です。
濾紙に排泄したカイコの尿。
やや黄色で2〜3cc.
繭の内側を仕上げるカイコ
反射光で見た画像
透過光で見た画像
12時間後、

左の画像は、床面から見た画像です。
反射光のほうがよく見えます。

繭の内側に吐糸して繭層を厚くしているカイコが見えます。
15時間後

以下は、上部から見た画像です。
透過光は営繭の様子がよく見えます。

繭層を厚くするカイコの頭は、繭の内壁に接しています。
18時間後

繭層は厚くなりました。
透過光のほうが営繭の様子が見えます。
20時間後

さらに繭の層は厚くなって、
反射光で営繭の様子は見えませんが、
透過光で営繭の様子が見えます。
24時間後

透過光も繭の中は見えません。
繭の完成まであと1〜2日。
繭を取り巻く足場糸とカイコが繭をつくる訳
繭を取り巻く足場糸
完成した繭を蔟から取り出して見ると、繭は足場糸に取り囲まれています。
その足場糸の外側は、上部、壁面、床面の6面で、蔟1区画の形どおりです。
繭は6面の足場糸に支えられているため、蔟との接点が無い繭は浮いています。
カイコは繭を作るために、まず丈夫で風通しの良い足場を作ります。
次に外側の足場から内側へ内側へと繭の形を作り、繭の中で繭層を厚くして
繭を完成させます。

なぜ、カイコは繭を作るの?
カイコは、脱皮して蛹になります(蛹化)。
蛹化したばかりの蛹は皮膚が非常に柔らかく、わずかなことで皮膚が傷みます。
また、蛹は羽化して成虫になる前まで、眠の状態です。
動いて移動できない無防備な蛹のとき、蛹を襲う鳥類、アリ・昆虫類など天敵、
風雨・細菌などから守られて、安全な住みかである繭の中で蛹化する訳です。
足場糸で浮いているカイコの繭
遺伝子を組み換えた「黄白」は、
♂の繭が白色、♀の繭が黄色。
平均、短径25mm、長径35mm
繭と繭糸
繭の大きさ: ふつう短径、約20mm、長径、約30〜35mm。
繭色:    白色、ピンク色、黄色、緑色など様々。
       皇居の紅葉山御養蚕所で皇后陛下が飼育されていらっしゃる
       日本在来種の「小石丸」は純白。
繭の重さ:  約2.0g
繭形:    楕円形・トラック形・くびれた形など。 
       中国種の丸形と日本種の俵形を交配してできた、くびれの無い繭を作る蚕が、
       現在、一般的に養蚕されています。
繭糸長さ:  1300m〜1500m。

繭(約2600粒)は生糸900gとなり、
きもの一着分、1反分(36cm×11.4m)の絹織物ができます。

繭糸の構造はこちらをごらんください。
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