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カイコの羽化・繭の外へ 蚕蛾はマジシャン!?
カイコの液体酵素・コクナーゼ 既に繭の中で羽化したカイコの成虫は、
繭糸を切ることなく、外に出てきます。

えぇ! なぜ繭糸を切らずに出られるの?
カイコガはマジシャン!?

繭層(けんそう)は、カイコが吐いた繭糸セリシンで形成されています。セリシンは繭糸と繭糸をつなぐ糊の役目をしています。

繭の中の成虫は「吸胃(別名=そ嚢)」から出る「コクナーゼ」という弱アルカリ性の液体酵素で繭層を内側から湿らせ、セリシンを溶かして繭層をゆるめます。
カイコガは湿った繭層を堅い頭部で押して、繭糸と繭糸の間隔を開け広げて繭の外に出るため、繭糸を切ることなく出られる、という訳です。

繭糸は、2本のフィブロイン蛋白質をセリシン蛋白質で固めてできている。
繭の内側から液体酵素を押し当てて繭層を湿らせている成虫(貴重な写真です)。
カイコガと繭層の間に液体酵素が見え、繭層が濡れて湿ったところも見えます。
カイコの♂の羽化
カイコの羽化
繭層の内側からコクナーゼで湿らせ...
セリシンが溶けて繭層がゆるみます。
水滴は繭の内側から溢れた液体酵素。
カイコガは繭層を堅い頭部で押します。
孵化のときは蟻蚕が卵殻を食い破りましたが、
羽化のときは成虫が繭糸を食い切ることなく、繭糸と繭糸の間隔を広げます。
繭層の厚さは長径よりもカイコガが出る短径のほうが少し薄くできていますが、
繭層が湿ってからカイコの成虫の頭部が出るまでに、20分以上かかる個体もいます。
羽化したばかりの成虫の体に見える液体は、セリシンを溶かした液体酵素。 成虫には不要なため体外へ排出します。
蛾尿(がにょう)

羽化したカイコガは生涯で2度目の尿を排泄します。
それを蛾尿といいます。

最初に排泄する尿は、繭から出て約30分〜1時間以内に
赤茶色の尿を、後方へ体長の3-4倍後方に飛ばします。

2回目の尿は、淡い黄色や、透明な尿をする個体もいる。

写真左: 最初の蛾尿
写真右: 2度目の蛾尿

カイコの♀の羽化
羽化したカイコガが繭の内側から繭層を湿らせ、そこを固い頭部で押して繭の外に出よう、と動く様子が観察できます。
この個体に限って、繭層が湿ってから30分以上経過しました。
繭層が厚かったのか繭糸がネット状になって頭部に被さっています。
♀のカイコ
やっと、カイコの成虫が繭から出たときは繭層が湿ってから33分後。

羽化したカイコガの縮んでいる翅は
約1時間後にはのびます。
繭内の抜け殻は、
蛹化時と羽化時の
抜け殻です。
繭から出て約50分後に排泄した♀の蛾尿。
スケールは1目盛り=1mm
参照: ミヤマカラスアゲハの羽化はこちら
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