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 巣立つまでに様々の危険が...
毎年、約3万羽のウミネコが飛来し、雛が1万羽以上生まれ、約4万羽にもなりますが、
毎年、飛来してくるのは、なぜ3万羽なのでしょうか? その訳は...

給餌中に空から
縄張りで親鳥は「長鳴き」を頻繁にします。特に採食場から縄張りに戻ると長鳴きをします・・・その度に雛は親が開いた大きな嘴まで伸びをして、おねだりをします。 雛が頭を上げ下げして餌をねだる姿は、まるで人がお辞儀をして頼み込んでいるように見えます。
雛が巣の中で親の胸に抱かれていたときは、雛が餌をねだると親はすぐ雛の要求に応じ、餌を与えることが可能でしたが、
雛の成長にともなって巣の中で給餌しなくなると、親は雛の要求に合わせて餌をあげたくても、すぐに与えられません。
それは、縄張りへの侵入個体を警戒しているためです。侵入しそうな個体がいるときは、雛がいくらねだっても餌を与えません。
雛が巣の中で親に抱かれていた当時は、親の体の下で餌を食べていたため、雛も餌も侵入個体にねらわれる危険は少なかった。

親鳥は、その安全を確かめた末、お腹を空かした雛へ餌を食べさせる。どの子どもも いっせいに餌を求めて親の嘴へ。
翼を広げて体のバランスをとりながら、親からもらった餌を食べる雛もいる。 抱雛してときは、くち移しで給餌していたが、巣から離れて給餌するようになると、餌を地面に置いて自然状態で与えます。
食べ盛りが3羽もいると、親はたくさんの餌を与えます。
そのとき、突然、空から餌を目がけて、真っ逆さまに急降下してきた侵入個体が......
あっという間に、かなりの餌(左の雛の上)を侵入個体に奪われてしまいました。 餌を奪って飛び立つ侵入個体に蹴られた親鳥 雛の餌を奪った個体を追う親鳥と、食べるものがなくなった雛たち。
親鳥は侵入個体を追ったが、奪われた餌を取り返せなかった。
戻ってきた親鳥に、再び食べ物をねだる雛たち。
縄張りへの侵入を十分注意していたが、やられてしまった。
翼を広げて「ちょうだい
」と、ねだる我が子に食べさせたかった餌を奪われ、「草引き」をして悔しさを表現している親鳥。
餌を奪われ、十分に食べられなかった雛たちは、親に何度も餌をねだりますが、親鳥は用心して、なかなか給餌をしません。
親は上空を飛ぶ個体に対しての威嚇も怠りません。 雛が、やっと餌をもらえたのは1時間近く経ってから。
雛の食べっぷりは、とても速い食べ方・・・再び狙われないために。
給餌中に地上から
写真左上 何度もなんども餌をねだられた末、雛への給餌

写真上  成長期の雛は食欲旺盛、餌を引っ張りかぶりつく

写真左  親は、たくさんの餌を地面に置いた。
     そのとき、地上から侵入個体が餌を横取りした。


6月は、子育ての真っ最中。
どの親も雛のために餌を手に入れたい。
多くの雛をもつ親鳥は、餌不足で餓死しないように餌の調達がなおさら大変。それで、他の個体の餌まで奪う。
他人の個体の雛に給餌することは、あり得ません。

生き残るために、死につながる争いまで起きる。

縄張り内へ一歩でも入ると

他の個体が縄張りへ近づいたり、また一歩でも侵入した場合は、たとえ雛であっても噛みつきなどの攻撃に逢う。 侵入してきた雛を仲間とせず、敵とみなして頭に噛みつき、縄張り外へ引きずり出す。
歩けるようになった雛は、他の縄張りに接近・侵入する場合がある。そのときは残酷な攻撃に逢う。
それも子育てに必要な餌を、侵入個体に横取りされないため、鋭い嘴で攻撃する。
成鳥同士の縄張り争いに巻き込まれたり、噛みつかれたりして、死亡する雛が非常に多い。
頭に怪我をした雛。
ケイレンし、息絶え絶えだった。すぐに眼を閉じて眠った。
わずか2週間の命だった雛の死体。
点々と、一目30羽の死体が転がっていた。
成鳥と雛の争いばかりではない
可愛い雛と雛の争い。
他の個体が雛であっても、縄張りへ侵入して来るやいなや噛みつく。
威嚇をして追い払うことは全くせず、すぐに噛みつき、血がにじむ。
噛みついた雛が首を振って嘴でひねり、侵入個体を回転、転倒させた。 鋭い嘴で噛まれた幼い雛の皮膚は裂けた。
起きあがって逃げる雛を追う。そして再び噛みつく・・・この争いは、可愛い子ども同士の争いとは、とても思えないほど。
やっと、なんとか逃げ出せた雛だが・・・ 噛みつかれた雛は、頭皮が裂けた重傷を負っていて、立っていられるのが不思議なほどだった。巣立つことができるのだろうか、死を待つだけなのだろうか。
どの生き物も可愛いだけではない、強いものだけが生き残れるため、命がけで戦う。
隣の縄張りの雛を襲う成鳥
写真左 隣の縄張りにいる雛をにらむ成鳥
写真中 成鳥は隣の縄張りに行って、雛を襲った
写真右 そして雛に噛みつき、自分の縄張りへ引きずり寄せて来て攻撃したあと解放した。 その行動は不思議?
ウミネコを襲う天敵と気象
写真左 雛を襲うオオセグロカモメ(天売島にて)
写真上 天敵に襲われたウミネコの翼の一部(蕪島にて)
ウミネコの天敵は、キツネ、トビ、カラス、オオセグロカモメ、元はペットだったイヌ、ネコなど。

蕪島にはオオセグロカモメの個体数は少ないが、雛や卵を襲う習性を持つオオセグロカモメは、ウミネコにとって怖い存在。
現在、蕪島のウミネコ繁殖地は、地上の天敵除けフェンスで囲まれていて、それを寄せ付けないが、空からの天敵が卵や雛を襲う。

やませ(山背)という霧・雨をともなった冷たい偏東風は、雛の体温を奪い、命まで奪う。
また、親鳥が濃霧時に採餌できず、食糧不足が雛の成長に影響する。
いっとき成鳥と雛で約4万羽以上のウミネコになっても、前述したような訳で死んでしまう雛が多い。
運良く巣立ったとしても繁殖地を去ったのち、何らかの事故に遭うウミネコもいる。
また、寿命で死ぬウミネコもいて、毎年、蕪島に飛来してくるウミネコは約3万羽になる。

たとえば、15,000羽の雛が誕生したとすると.....
ウミネコの孵化率は、産卵数の70%であり、約15,000羽の雛が誕生するためには約21,430個の卵が必要。
巣立ち率は、産卵数の30%であり、約21,430個の卵から約6,430羽が巣立つことになる。
成鳥の帰島率は、70%であることから約2万1千羽の成鳥が戻る。
したがって、成鳥 約21,000羽と巣立つ雛 約6,430羽の合計は、約27,430羽。
毎年、飛来してくるウミネコは、約30,000羽ということになる。

雛の成長 羽ばたき訓練

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