新たなる野望者 第4章

「よみがえる禁断魔法」


△第3章「女魔法剣士」
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「モラビア城は、たぶん明け渡す」

このレオンの言葉には、どのような意図があるのだろうか。
モラビア城への帰り道で一行のメンバーのそれぞれが考えている。
肝心のレオンは、今までの資料を読みながら、そしてふと考え込みながら進んでいる。
なかなか器用な人である。
結局理由については城に戻ってからみんなに話すと言っていたが・・・・ 
そのせいか一行をとりまく空気は重い。

「さて、どういうことなのかそろそろ説明していただきたいのですが、レオン殿。」
ここは、モラビア城の一室。
既に空は赤く染まっていた。
外からは、風に乗って良い香りが入ってくる。食事の時間も近い。
結局、レパントとレオンとの2人だけで話すことになった。
「まず、状況があまりにもこちらに不利であることは明白だ。
 あの女との戦いでも、非常に分が悪かったのは明らかですな?大統領」
レパントは、ただ言葉に詰まるだけであった。
あのときレオンが助けてくれなければ・・・
レオンは続けて
「フェリウスとかという男が、あの女以上の能力を持っているのは間違いないだろうし
 しかも、そのときの話から昔話と同じ惨事が起こりそうなのは目に見えている。
 もし、こんどあの男が攻めてくれば、相手に従うしかないだろう・・・」
「しかし、最初から逃げるというのはあまりにも・・・」
「確かに、最初から逃げると決め込むのは不甲斐ないだろう。
 しかしわたしは意味もなく逃げる気は全くない。」
「とすると何か策があるんですか?」
レパントは期待を込めて聞く。
「いや、この場合はとにかく逃げない限り全滅だからだ。」
「・・・・・」
レパントは、この男を軍師にして良いのだろうかと疑問を持ち始めた。
しかし、レオンがなにも考えていないはずはない。
「意味もなく逃げる気はない」
と言った以上何かあるはずである。
「とりあえず、あいつらが来るまでに、なるべく対抗方法を探すことですな。
 わたしは、やることがあるのでこれで失礼する。逃げる手段は後ほど。」
といい終わるとレオンは部屋をあとにした。
レパントは、その場でしばらく考え込んでいた。
いったい、レオン殿は本当になにも考えているのだろうか・・・
だとしても何でわたしに言えないのだろうか・・・
「レパント。どうだった?」
入ってきたのは、クレオである。
どうやらこの会談が終わるのを、隠れて待っていたようである。
レパントは、なにも言わず首を振った。
「いったいなにを考えているんだろうかね、レオンは。」
クレオは既に不機嫌である。
相手が強大な魔法を使ってくる以上場合によっては逃げる必要もあるだろうが、最初か
ら逃げるつもりというのは納得がいかなかった。
「それがわたしにもわからないんだ。」
「だとすれば逃げるなんて言わなきゃ良いのに。」
「それはできんだろう、これだけの人数で急に逃げるのは難しい。
 それに反対して、突入する者もいるかもしれない。」
「確かに逃げるのもひと苦労だね。」
「ここはとりあえず合成魔法の対処を見つけ出して、逃げる必要のないようにしなくて
 はいけない」
「しばらくは、ビッキー達につきあってあげるか。
 あっ、そろそろ夕食でしょ、いきましょう」
二人は食堂に向かっていった。

それから数日間は、なにもなく過ぎていった。
メンバーは、戦いに備えて準備をする者、腕を磨く者、合成魔法に対抗する方法を調べ
る者と、いろいろであった。
しかし最近、昼間はレオンをはじめ数人がいなくなっているようだ。
ゲン、カマンドール、サンスケである。大工と発明家、何か作っているのだろうか。
しかし、夜に帰ったきても誰にも多くは話さなかった。
あるていど得意な話術で、ごまかされているのであった。
そういえばいつの間にかジーンの姿もなかった。
こっちは、「仕入に行って来ます」と書き置きがあった。
モラビア城、大統領の部屋元は空き部屋であったがきれいに改装されている。
窓からの景色もなかなか良かった。
レパントが魔法に関する書物を読んでいると、1人の男が入ってきた
「レパント、合成魔法の対処法は見つかったのでしょうか?」
「どうもカシム殿。
 でも、残念ながらまだのようです。」
カシムは明け渡すという決定に納得がいく訳がなく、最近すこぶる機嫌が悪い。
レパントも、できれば避けたいと思うくらいである。
「レオンはどうしました?
 わたしはまだ彼とまともに話していないのだが。」
「彼も、最近姿を見せません。
 誰も見たものはいないと言いますし。」
「いったいどういうことなんだ。何でこの城を明け渡さないといけないんだ。
 教えてくれレパント。あなたなら何かを知っているだろ?」
「それがなにも教えられていないんだ。」
「とするとなにか?
 レパントは、そんな奴のことを信用するのか?」
「確かに、疑問を持っている。
 しかし彼は絶対的の自信を持っているように見えた。」
「そうか。わたしも、ちょっと感情的になりすぎたな。
 また今度レオンに問いつめよう。」
「その方が良いでしょう。でも話すとは思いませんが。」
「そうだろうな。
 でも聞いてみないとわたしの怒りは収まらないだろう。」
といいながら、カシムは部屋をあとにした。
このままでは、団結にも問題が生まれるな・・・
レパントは、この後数日間はこの問題に頭を悩ませることになる。

さらに数日後、レオンがふらりと帰ってきた。
レオンが帰ってきたと同時に、ゲン、カマンドール、サンスケも出かけなくなった。
どうやら、レオンの指示で何かを作っていたのは間違いないようである。
さっそくとばかりに、カシムはレオンと会談する。
「単刀直入に聞こう。
 どうしてあなたはこの城を明け渡すということにしたんだ?
 何か理由はあるはずだが。」
「理由はない。相手の力は強大だ。下手をすれば一瞬で全滅なんです。
 そういう戦いを挑むのは無謀すぎる。」
「確かにそうかもしれないが、あなたは勝つということを考えないのか?」
「そんなことはない。ちゃんといろいろ考えていますが・・・」
「だったら、説明しても良いのではないのか?」
「まだ、言うほどのものはない。あなたは相手がどういった人間だか判っているはず
 だ。確かにこの城が大事なのも判るが、それより大事なものがあるでしょう?」
とレオンはいうと、席を立っていった。
カシムは考え込む
たしかにあの男のことだ、強大な魔法で一気にという事も考えるだろう。
そうなれば、城はもちろん・・・
レパント達は、ゲン達を問いつめてみたが、結局彼らも自分でなにを作っているのかは
わからなかったのである。ただ単に穴を掘って奥に部屋を作っただけなのである。
結構長いトンネルで、しかも迷路に使い作りにしたらしく、どこに向かって掘ったかは
わからないらしい。ここではカマンドールの発明した掘削機が活躍した。
一方、ビッキー達であったが相変わらず、手がかりは見つからなかった。

とうとう、カレッカの町での戦いから3ヶ月がたとうとしていた。
そしてついにその日がやってきた。
「だ、誰かが来ます。人数は2人です。」
見張りの人間が叫ぶ。
「よし、わたしが代わる。」
カシムが見張り場に行き誰が来るのかを確認する。
やがて、その表情が厳しくなる。
「間違いない、フェリウスだ。」
とカシムが言う。
「よし、みんなは退却の用意をして、気が付かれないよう脱出するんだ。
 わたしが1人で会いに行く」
とレパントが指示
「うむ、逃げるのはそれで良いが、レパント1人ではあなたが逃げられないな。」
今度はレオン
「わたしが行きます!」
「ビッキー?そうか、いざとなったらテレポテーションがあるな」
レパントが一瞬驚いたがすぐにメリットを理解した。
「そういうことです。では参りましょう。」
結局、レパントとビッキーで会いに行くことになった。
「こうして話しをするのは初めてですね。大統領」
先に声を出したのはフェリウスであった。
「そういうことになるな。」
はっきり言ってこんな奴とは話したくなかったが、みんなが逃げ切れるまで時間を稼が
なくては行けない。
ここは城より約3里ほど離れているので、簡単には逃げているところ
は見られないであろう。
「そちらのお嬢さんは初めてですね。」
今度はビッキーに向かって言う。
「そ、そうですね。」
ビッキーは相手の魔力の巨大さにおびえが出ていた。
ある程度魔法が使えるからこそ感じてしまうのであろうか。
「さて、今日のご用件は?」
今度はレパントが聞く
「その前に、先日はサルファがご迷惑をおかけしたそうで。」
なぜかフェリウスが話をそらす。
「ほんと、ごめんなさいね。」
ここで初めてサルファが口を開ける。しかし口調は全然謝っていなかった。
「そのお詫びに、今日は良いものを見せてあげましょう。」
フェリウスがいきなり本題に入った。
しまった!話をそらしたのではない!
レパントはいきなり話が核心を突いたので驚いた。
なんとか時間を伸ばそうと、
「別に、お詫びなんて良いですよ。」
と返す。
「そうは行きません。それではわたしの気がおさまらないですからね。
 サルファを傷つけられた怒りはね・・・」
フェリウスの表情が徐々にこわばろうとしている。
「とするとなにをしようというのですか?」
レパントが聞く
「ちょっとした魔法ですよ。
 あの城を壊すのはもったいないので、中にいる人だけをね。」
一瞬こわばった表情はすぐに戻っていた。
「な、なんていうことを!」
「では、そろそろ」
「ま、まて」
その時、
「フェリウス覚悟!」
レパントの後ろから叫び声がした。城からだ。
逃げるのを嫌った50人前後の兵が、武器を持ちこちらに突進してくる。
「や、やめろ来てはいかん!」
レパントが、兵に向かって叫ぶ。
「ちょうど良いですね。まずは、あの人たちにしましょう」
「フェリウスやめるんだ!」
レパントは、キリンジを取り出しフェリウスに向かう。しかし・・・
「風の鎧!」
「うっ!」
「学習能力がないのかい?」
サルファの風の鎧であった。これではしばらく攻撃ができない。
レパントはとりあえず、「炎の嵐」を唱えることにした。
しかし、フェリウスの呪文はこのとき完成した。
「時空裂」
フェリウスは、ぼそっと唱える。
音もせず、兵士50人のまわりに球の形で空間の歪みができた。
いきなりの変化に兵士達は悲鳴を上げる・・・
そしてそのまま、人だけが歪んだ空間に引き込まれ消えていった。
歪みが消えても、元の草原であった。
人だけが飲み込まれたのである。
レパントとビッキーは唖然とその状況を見るしかなかった。
「ふふふ、この力を見てどう思います?」
「なんてことをするんだ!」
レパントの顔は怒りで赤くなっていた。
「ひ、ひどい・・・どうして・・・」
ビッキーは、半分泣きながら言う。
「この時空裂はわたしの自信作です。ま、他にもまだありますけどね。」
フェリウスは相変わらずの口調で言ってのける。
今度はレパントが、
「完成したと言うのか?」
「いえいえ、まだまだです。なにしろ、本国では監視がありましてなかなか大げさな
 実験などはできないんですよ」
「それでこっちへ来たというのか!」
「まぁ、それもありますね。」
「いったいおまえの目的は何なんだ!」
「それはお教えすることはできません。あなたには関係ないことです。」
「これだけ巻き込んでおいて関係ないとはどう言うことだ!」
「教えられないと言ったんです。
 さて、あなた方の城は研究のためにおかりしますよ。」
 とりあえず、城の中を片づけましょう。
フェリウスが再び、詠唱を始める。
「そうはさせるか。」
レパントとビッキーも詠唱を始めた。
威力は弱いが、レパントの「炎の嵐」が一番最初に詠唱を完了した。
「炎の嵐!」
レパントの放つ無数の炎が、フェリウスにめがけて飛んでいく。
しかし、フェリウスは全く動じていない。
バチッ!
「なにっ!」
なんと、フェリウスの目前で炎が散ってしまったのだ。
「わたしの紋章を甘く見てはいけませんよ。
 強い魔力の持ち主からの炎ならともなく、あなたみたいな魔法に関してはひよっこの
 出す炎などあっさり、防げますよ。
 そろそろ目障りですね。あなたから先に消えてもらいます。」
「時空裂!」
今度は先ほどよりも小さい歪みが生じた。
レパントとビッキーは、その歪みに巻き込まれ・・・
そしてその中で消えた・・・・

▽第5章「古き友」
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