いりすがでてきてこんにちは
−東寺−

壮絶な空中戦の末ガメラを振り切ったイリスは、綾奈を追って京都へ飛来。暴風雨のさなか、その禍々しい巨体を東寺の間近に降り立たせる。まさに邪神の降臨を思わせる、そのおぞましい姿に逃げまどう群集。

印象的なシーンっすよね。ライトアップされた五重塔をアクセントに、長く続く築地塀の消失点にイリスを降り立たせて、遠近感と巨大感を強調する。構図的にも完璧。

東寺に行ったことがある人なら、あのシーンは東寺の南大門前あたりから見た風景だと思うだろうし、そこで撮影した実景にイリスと構図調整のための五重塔を合成したものだと判断すると思うっす。

私もそう思っていました。実際に行ってみるまでは。

東寺は教王護国寺ともいい、真言宗の根本道場。弘法大師空海ゆかりの寺として、毎月二十一日の『弘法さん』には多くの露店が立ち並び、沢山の人出で賑わうお寺っす。多くの国宝・重文を有し、ユネスコの世界文化遺産にも登録されている由緒ある寺院であることは言わずもがな。

余談っすけど、行ったこの時は塔頭の勧智院の特別拝観をやっていました。ここは、かの有名な剣豪バカボン、いや違う、バカボンド宮本武蔵が、吉岡一門の跡取りを殺しまくって追いかけまわされていた時に三年も潜伏していたというところ。潜伏中の武蔵はよっぽどヒマだったのか、襖や床の間の壁に実に見事な水墨画を描いて残しているっす。

武蔵は他にも多くの絵や書を遺して後世にその教養ぶりを伝えていて、なかなかに侮れん奴っす。『ラブリー眼帯』しか後世に遺さなかった柳生十兵衛とはえらい違い(遺してねえよ十兵衛はそんなもん(^_^;)。

まあそんなことはおいといて。

雰囲気的にあのシーンに一番ぴったりくるのは、このアングル。南大門前から東の方を見たショットっす。五重塔の位置もぴったりだし、築地塀の途中にある門もちゃんとある。邪魔な仏像修復用のプレハブと銀行を合成で消せばほぼ同じ。

これで決まりか、と思いきや・・・

ん? なんか違う・・・。

まず、築地塀の前の松の木の形や角度。歩道の広さに、右端にちらりと移る街灯のデザインも、よく見ると違う。一番違うのは築地塀。東寺の築地塀が、昔ながらの工法で作られた緩やかな傾斜のもので、地面から直接立ち上がっているのに対し、映画の築地塀は、切石の石垣らしきものの上に垂直に近い角度で立ち上がった、比較的新しい工法で作られたものっす。東寺では見えない、築地塀の屋根を支える肘木も、はっきり写ってるっす。築地塀の屋根の左端近くには、向こう側の建物の屋根らしきものも。

また、築地塀の左端の屋根に、この塀と直角に交叉する築地塀の、屋根の断面らしき切妻屋根状のものがちらりと見えてるっす。しかし、東寺では築地塀の角の部分を交叉させるように処理する工法は使われていないはず。東寺では、築地塀の角の部分は塀がそのまま直角に曲がったように(ちょうど45度の角度に切り落とした塀を二つ合わせたように)左右対称の形に処理され、どちらかの塀の断面が表面に出るようなことはないっす。

(チェック細かくてすいません(^_^; 実は古い木造建築オタクなもんで)

念のため、同じ南側の築地塀を反対側(東方向)から見てみたり・・・

もう一ケ所のロケに使えそうな場所、東側の築地塀を見てみたりしても、やはりぴったりくる場所は見当たらず。

実際行ってみるまでは想像もしなかったことっすけど(それほどにあのシーンは東寺に見えた)、結論としては「あのシーンは東寺近辺で撮影されたものではありえない」と言わざるを得ないっす。

とほほ〜〜、振り出しか〜〜(T_T)

次のページへ

 

前ページへ戻る

ロケ地探訪へ戻る

デジカメ紀行へ戻る

まんりき王朝へ戻る