い の ち は 創 れ な い
人と自然がバランスよく暮らしていくために
私たちの生活は、さまざまな生物資源の恵みを受けて成り立っています。
その生物は、毎日毎日、100種以上も絶滅に追いやられています。
私たちの子孫の代になっても、生物多様性の恵みを受けることができるように、
まず、動植物を絶滅の危機に追い込まないことが大切です。
● 地球上の生物の生息状況 ・生物多様性とは ・生態系とは ・生物の種とは
● 多様性生物資源の恵みを維持可能な利用 ● 絶滅種の数
● 豊かな四季と生物の国 --- 日本 ● 「新・生物多様性国家戦略」とは
● 生物多様性保全の現状 --- 3つの危機 (1. 開発・破壊、2. 里地里山の保全、3. 移入種の問題)
・絶滅のおそれがある野生生物の種類 ・生物種の現状 ・浅海域の生態系の現状
● 生物多様性の保全をどう考えるか --- 4つの理念
・植生自然度別の配慮事項 ・陸域の生態系の現状
● 3つの目標とアプローチの基本
● 私たちはなにをすべきか --- 7つの提案
1. 絶滅防止と生態系の保全 2. 里地里山の保全 3. 自然の再生 4. 移入種対策
5. モニタリングサイト1000 6. 市民参加・環境教育 7. 国際協力 ・東アジア各地の動植物数
● 国土のグランドデザイン --- つくりあげる国土のイメージ
● 地球上の生物の生息状況
今から約40億年前、地球上に生物が初めて誕生して以来、進化してきた生物は、
現在、3,000万種とも、それ以上ともいわれています。
自然が創った数えきれないほどの生物の世界を「生物多様性」といいます。
その多様な生物種が、ツンドラ、亜寒帯林、温帯林、熱帯林、草原、サバンナ、
砂漠、サンゴ礁など、南極・北極から熱帯、高山から海底・・・などなど、
様々な自然環境で、お互いにつながりを保って生きています。
生物が、地域の自然環境に適応して、つくっている生物社会を「生態系」といい、
それぞれの場所には、そこの自然環境に応じた生態系があります。
地球上の生物が多様なのは、多様な生態系があるからです。
生物の種(しゅ)とは、
生物学上、生物を分類する場合に基本となる単位のこと。
種を基準として、(界、門、綱、目、科、属、種、亜種、変種)があります。
例えば、動物界-脊椎動物門-鳥類-スズメ目-セキレイ科-セキレイ属-ハクセキレイ種-ホオジロハクセキレイ(亜種)
私たちの生活・衣食住は、生物からの恵みを受けて成り立っています。
農業・酪農、養蜂などによって、お米、野菜、果実、肉、乳製品、蜂蜜...など、
漁業によって、海や川などから魚や貝、エビ、カニ、海草...などをとり、
林業によって、山・森林などから建材や家具、紙などをつくる木を伐採しています。
動植物から毛糸・絹・綿、皮革製品、化粧品、医薬品、燃料...などに至るまで、
多様な生物を利用することによって、私たちの生活が成り立っています。
また、多様な生物がすむ素晴らしい自然環境は、私たちの心に豊かな潤いを与えてくれます。
レクリェーションや芸術の糧としても生物は、かけがえのない存在です。
しかし、人間の経済活動によって、熱帯林、湿原、川、干潟などの生態系が失われてきて、
近年、動植物が、いちじるしい速度で絶滅に追い込まれています。
恐竜時代は、1,000年間に1種、絶滅していたと推定。
人類が登場する以前は、3年から5年間に1種、絶滅していたと推定。
人類が登場して以来は、急激な速さで種の絶滅が進んでいて、
1970年代は、1日1種が絶滅し、
1980年代は、1日50種以上が絶滅し、
2000年に入り、1日100種以上が絶滅している、といわれています。
年 代
|
絶 滅 の 速 さ
|
|
恐竜時代 |
1,000年
|
1 種
|
人類が登場する以前 |
3年から5年
|
1 種
|
1970年代 |
1 日
|
1 種
|
1980年代 |
1 日
|
50種 以上
|
2000年代に入って |
1 日
|
100種 以上
|
すべての生物は、他の生物とお互いにつながりをもって生きていく役割をもっているので、
世界の生物種の約75%がいるといわれている熱帯林で1 種の生物が絶滅すれば、
その生物に依存して生きている昆虫など、10〜30種の生物が絶滅の危機に陥ります。
人類が出現して以来・・・
『
地球が誕生して46億年、その地球の歴史を1年間に短縮してみると、
原始の生物が地球上に初めて誕生したのは2月中旬。
その後、生物は進化して哺乳類が登場したのは、ようやく12月の中頃になって。
そして、人類の出現は12月31日の午後4時30分以後になります。』
最後に登場した人類は、他の生物との共有物である地球環境を造りかえ、繁栄してきました。
しかし、人間の活動が他の生物の生存を危うくしており、私たちの身近な自然も失われています。
その影響は、いずれ私たちの生活にも及ぶことになるのです。
動植物がすめない環境は、人間も生きていくことができない環境です。
私たちの子孫の代になっても、様々な恵みを与えてくれる生物を守る(保全する)ことをしなくては
ならないのです。 今、地球を救わなければ、未来の地球はないのです。
それでは、私たちに様々な恵みを与えてくれる生物多様性を守る(保全する)ために、
どうすればよいのでしょうか。
1995年(平成7年)10月、 国は『生物多様性国家戦略』を決定しました。
私たちの子孫の代になっても、生物多様性の恵みを受けることができるように、
まず、動植物の絶滅のおそれを生じさせないことなどを定めました。
● 豊かな四季と生物の国 --- 日本
四季と共に生きる文化を育んできた日本には、多くの動物が棲み、さまざまな植物が息づいています。
現在、日本にいる生物に名前がついている生物だけでも9万種、
まだ発見されていない生物を含めると、20万から30万種になるといわれています。
このような生物を開発などによって絶滅させることのないよう、「新・生物多様性国家戦略」が定められました。
人と自然がバランスよく暮らしていくための、わが国でただ一つの最も基本提案です。
1980年代に、アマゾンなどの熱帯雨林が猛烈なスピードで伐採されました。
1年間に日本国土の4割くらいにあたる面積の森林が失われた、といわれています。
森林破壊は、同時に膨大な量の生物を絶滅させることでもありました。
(世界の生物種の約75%がいるといわれている熱帯林で1種の生物が絶滅すれば、
その生物に依存して生きている昆虫など、10〜30種の生物が絶滅の危機に陥ります。)
種の絶滅に対する危機感から、地球上の生物種を保全するための国際的な対策が求められました。
これが「生物多様性条約」の結ばれた理由で、2002年3月現在で183カ国が加盟しています。
日本は、条約採択の翌1993年に加盟し、条約の規定に基づいて1995年に「生物多様性国家戦略」をつくりました。
この計画を根本的につくり変えたのが「新・生物多様性国家戦略」で、2002年3月27日に策定されました。
捕獲・乱獲・採取による個体数の減少、森林の開発、埋め立てによる海の破壊、
汚染した排水による生態系の破壊などが、これにあたります。
日本に生息・生育する脊椎動物、維管束植物の2割が絶滅危惧種となっています。
最後の1羽となってしまったトキは、この典型的な例です。
ウミガラスも40,000羽から13羽に激減、絶滅の危機になりました。
第2の危機
第1の危機とは逆に、自然に対する人間の働きかけが減っていくことによる影響です。
田園地帯の里山やススキが生い茂る草原は、薪炭材、肥料としての落葉、家畜飼料、
屋根葺きの材料などを得る場として、多くの利用価値をもっていました。
しかし、石油や新建材、科学肥料の登場によって、このような利用がほとんどなくなり、
里山や草原は管理されないまま放置されることになりました。
長い年月、人手が入ることによって生物多様性のバランスを保ってきた里地里山は、
人間が干渉しないことによって、かえって危機を迎えているのです。
絶滅危惧種のほぼ5割は里地里山に生息し、わたしたちが昔から親しんできたメダカまでもが
絶滅の危機にあります。
第3の危機
進入種(外来種)や科学物質による影響です。
近年、マングース、アライグマ、ブラックバスなど、人間によって外国からもちこまれた種が、
地域固有の生物や生態系にとって大きな脅威となっています。
侵入種の影響は、幼体をミドリガメというミシシッピーアカミミガメや
マングースやブラックバスの場合は日本の生物種を捕食し、
タイワンザルの場合は在来種のニホンザルとで交雑種をつくり、
ノヤギの場合は植生破壊など、とさまざまですが、
絶滅危惧種には、これらの移入種による悪影響をうけているものが少なくありません。
また、化学物質のなかには、PCB、DDT、ダイオキシンのように、動物に対して毒性をもつほか、
環境中に広く存在するため生態系や生体内ホルモン作用への影響が懸念されているものがあります。
分 類 群
|
総 種 数
(評価対象数)A |
絶 滅
|
絶滅危惧種
B |
B / A
(%) |
|
動
物 |
哺乳類
|
48
|
4
|
約 200
|
24.0
|
鳥 類 |
約 700
|
13
|
90
|
12.9
|
|
爬虫類 |
97
|
0
|
18
|
18.6
|
|
両生類 |
64
|
0
|
14
|
21.9
|
|
汽水・淡水魚類 |
約 300
|
3
|
76
|
25.3
|
|
昆虫類 |
約 30,000
|
2
|
139
|
0.5
|
|
陸・淡水産貝類 |
約 1,000
|
25
|
251
|
25.1
|
|
クモ類・甲殻類等 |
約 4,200
|
0
|
33
|
0.8
|
|
動 物 小 計
|
47
|
669
|
|||
植
物 等 |
維管束植物 |
約 7,000
|
20
|
1,665
|
23.8
|
蘚苔類 |
約 1,800
|
0
|
180
|
10.0
|
|
藻 類 |
約 5,500
|
5
|
41
|
0.7
|
|
地衣類 |
約 1,000
|
3
|
45
|
4.5
|
|
菌 類 |
約 16,500
|
27
|
63
|
0.4
|
|
植 物 小 計
|
55
|
1,994
|
|||
動 物 ・ 植 物 等 合 計 |
102
|
2,663
|
● 近年では、水辺や里地里山における生息環境の破壊や、人間の働きかけの縮小にともなう環境の
悪化によって、絶滅危惧種としてメダカに代表されるような身近な種が多くあげられている。
● 植生自然度は、植生に対する人為的の度合いによって、日本の植生を10の類型に区分したもので、
長年にわたる人と自然とのかかわり合いのなかで、形づくられてきた自然環境の現状をあらわしている。
● 自然林や自然草原などの自然植生は、
険しい山岳地、半島部、離島といった人の手の及びにくい地域を中心に分布している。
生地、丘陵、ゆるやかな山地などでは、二次林や二次草原といった自然林(一次林)が失われたあとに
できた代償生や植林地、耕作地の占める割合が高くなっており、
大都市の周辺では、市街地など、まとまった緑を欠いた地域が広がっている。
国土全体では、自然性の高い植生は限られた地域にしか残されていない。
● 自然林と二次林が占める面積は、昭和30-40年代に激減したが、近年では減少傾向は鈍くなっている。
人為が加わっていない自然林は、国土の17.9%しかない。
さらに、ひとつ一つの森林の面積は減少しており、生息地の分断化が進んでいる。
また、人工林や二次林の手入れ不足による荒廃などによっても野生生物の生息、
生育環境の質的な悪化が懸念されている。
● 草原は、高山・亜高山帯および海岸の自然草原と、火入れなど人為的な干渉のもとで維持されてきた
二次草原の多くは、二次林と同様、利用されなくなり十分に管理されなくなったため、遷移が進行した。
オオウラギンヒョウモンやハナシノブなど、かつては普通に見られた草原種の一部は、
急激な減少が懸念されている。
● おもに市街地・造成地などからなる市街地では、野生生物の種数が少なく、自然環境が質量ともに乏しい。
近年、地域によっては、生物生息空間(ビオトープ)となる自然環境の整備などによって、
生物多様性の質を高める取り組みが進められている。
● 今後は、国土全体について、生物多様性の観点から植生自然度ごとにその質を高めていく配慮が必要である。
例:保護増殖のアホウドリ、ウミガラス、シマフクロウなど。 被害防止対策のカラス、シカなど。
● 私たちは、何をすべきか --- 7つの提案保全のための活動 |
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理 解 ・生物の種類 ・生物たちのつながり ・自然のしくみ ・人と自然のかかわり |
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自然とのふれあい |
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東アジア各地の動植物数 (東アジア各国のうち、地史・地理的に日本と関係の深い国や種数の多い国を掲載)
国 名
|
面 積
(万I) |
森林率
|
哺 乳 類
|
鳥 類
|
両 生 類
|
高 等 植 物
|
||||
種 数
|
固有種
割合(%) |
繁殖数
|
固有種
割合(%) |
種 数
|
固有種
割合(%) |
種 数
|
固有種
割合(%) |
|||
日 本
|
37 | 68 | 188 | 22 | 250 | 8 | 61 | 74 | 5,565 | 36 |
インドネシア
|
182 | 60 | 457 | 49 | 1,530 | 27 | 285 | 40 | 29,375 | 60 |
フィリピン
|
30 | 23 | 158 | 65 | 196 | 95 | 92 | 79 | 8,931 | 39 |
中 国
|
933 | 14 | 400 | 21 | 1,103 | 6 | 290 | 54 | 32,200 | 56 |
イ ン ド
|
297 | 22 | 316 | 14 | 926 | 6 | 209 | 58 | 16,000 | 31 |
韓 国
|
10 | 80 | 49 | 0 | 112 | 0 | 14 | 0 | 20898 | 8 |
ヨーロッパ各地の動植物数
国 名
|
面 積
(万I) |
森林率
|
哺 乳 類
|
鳥 類
|
両 生 類
|
高 等 植 物
|
||||
種 数
|
固有種
割合(%) |
繁殖数
|
固有種
割合(%) |
種 数
|
固有種
割合(%) |
種 数
|
固有種
割合(%) |
|||
イギリス
|
24 | 8 | 50 | 0 | 230 | 0 | 7 | 0 | 1,623 | 1 |
フィンランド
|
30 | 67 | 60 | 0 | 248 | 0 | 5 | 0 | 1,102 | - |
フランス
|
55 | 27 | 93 | 0 | 269 | 0 | 32 | 9 | 4,630 | 3 |
ド イ ツ
|
35 | 31 | 76 | 0 | 239 | 0 | 20 | 0 | 3,632 | 0 |
● アジア東部の生物相は、同じくユーラシアに属するヨーロッパと比べて比較的豊富で、多くの種がみられる。
これは、さまざまな気候帯を反映して、さまざまな植生環境をふくむこと、熱帯があることなどが要因。
また、氷河期に、北ヨーロッパではアルプスという東西に長い障害があったため、移動できずに絶滅した種が
多く存在したが、ヒマラヤ地域を除くユーラシア東部ではそうした状況がおこらず、多数の種がみられること
になったと考えられる。
動物地理区からみると、旧北区、東洋区、一部はオーストラリア区に属し、
植物区系では全北区系界および旧熱帯区系界に属している。
● アジア各国の種数をみると、おもに熱帯に位置し、多数の島嶼(とうしょ)= 大小の島々からなるインドネシアや、
面積が広く、湿潤から乾燥、低地から高山など、さまざまな環境をふくむ中国、
インドなどで多くの種が記録されている。
固有種の割合は、インドネシア、中国、インドに加え、フィリピンと日本で高い。
島嶼と大陸を比べると、おおむね島嶼において固有種の割合が高い。
● 日本の生物相の特徴は、固有種の割合が高い点にある。
両生類の74%を筆頭に、他種群でもこの傾向にある。
その理由として、日本の国は南北に細長い列島で多くの島々からなる島国であり、特有の生態系があります。
北は亜寒帯、南は亜熱帯の気候に属し、 針葉樹林からマングローブ林まで多種多様です。
また、標高差が大きく地形が複雑であるため、種の分化が多く生じ、遺存種が多くたもたれた。
日本は森林率が70%と高く、さまざまな森林性動植物が生息・生育している。
特に、沖縄や奄美大島などの南西諸島は、イリオモテヤマネコ、ヤンバルクイナ、アマミノクロウサギなど、
その地域特有の生物が多い地域です。
「新・生物の多様性国家戦略」を基に制作
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