ドラ1の採点簿(44年度オフ入団選手編)
〜入団後10年間の活躍を振り返る〜
Oカンファレンス
この年のOカンファレンスは廣杉、親泊、利光にそれぞれ3球団ずつの指名が入ったドラフトであった。抽選の結果、廣杉は花園に、親泊は佐久に、利光は福岡にそれぞれ入団が決まった。廣杉は入団2年目から1軍に定着、花園先発陣の一角として活躍をしている。ただ、年によりムラがあり、50年度には19敗、54年度には22敗を喫するなど負け数の多さが気になる。廣杉と同じく速球派左腕の親泊は1年目から1軍に定着した。まずまず安定した投球をみせているが、スタミナをアップさせたここ数シーズンは成績もついてきている。利光も1年目から1軍に定着している。これまで3度の2桁勝利を挙げていたが、能力の衰えから登板のなかった54年度シーズンを持って引退を決めている。そのような中、最も活躍をみせているのは浜松に入団したはずれ1位の河木だろう。高卒後3シーズンは1軍登録がなかったが、4年目に39SPでいきなりタイトルを獲得、一気に才能を開花させた。その後浜松の守護神として活躍後は、中継ぎエースとして非常に安定した投球をみせている。数字以上の活躍と判断し、A評価とした。その他のはずれ1位の中久喜、神居、酒田屋、晋野の4投手についてはドラ1としては期待はずれだったとと言わざるを得ないだろう。
一方、野手陣は1位指名は4人だったものの、好選手ぞろいといえるだろう。特に横浜に入団した山梨はパワーこそ非力だが、その俊足とバットコントロールは球界随一であり、これまでに盗塁王を5回獲得している。横浜らしい個性あふれる選手で、評価もAを与えられるだろう。三木の清水岡は入団後しばらく大きな活躍はみせられなかったものの、ここにきてバッティングセンスを磨き、53年度から2シーズン連続で最多安打を記録している。現段階ではB+としたが、この成績が続けばA評価としたいところ。沖縄の波出石は新人王こそ獲得したものの、その後はやや伸び悩んでいる。51年に大分に移籍したものの思うような成績は残せていない。岐阜の団之原は通算151試合の出場に留まり50年に引退を決めている。C評価は仕方のないところ。
| 投手 | |||||||||||
| チーム | 選手 | 入団 | 評価 | 試合 | 防御率 | 勝 | 敗 | セーブ | 奪三振 | 主なタイトル | 備考 |
| 浜松 | 河木 | は(18) | A | 298 | 3.34 | 29 | 18 | 103 | 598 | 新、救、9、☆×4 | |
| 東北 | 中久喜 | は(18) | C | 1 | 3.86 | 0 | 0 | 0 | 2 | ||
| 花園 |
廣杉 |
3(18) | B- | 305 | 4.85 | 50 | 80 | 1 | 1062 | ||
| 石見*2 |
神居 |
は(18) | C | 0 | - | 0 | 0 | 0 | 0 | 48東北、55宇部 | |
| 佐久 | 親泊 | 3(21) | B | 236 | 4.54 | 66 | 60 | 4 | 876 | ||
| 福岡 | 利光 | 3(21) | B | 247 | 4.34 | 61 | 50 | 2 | 611 | ☆ | 54→引退 |
| 新居浜 | 酒田屋 | は(18) | C | 33 | 4.31 | 1 | 1 | 1 | 41 | ||
| 旭川*3 | 晋野 | は(22) | B- | 221 | 5.33 | 11 | 14 | 8 | 391 | ||
| 野手 | |||||||||||
| チーム | 選手 | 入団 | 評価 | 試合 | 打率 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 主なタイトル | 備考 |
| 三木 | 清水岡 | は(18) | B+ | 761 | .285 | 834 | 156 | 428 | 129 | 安×2、9×4、☆×3 | |
| 沖縄 | 波出石 | 単(24) | B | 794 | .245 | 664 | 132 | 440 | 2 | 新、☆ | 51大分 |
| 横浜 |
山梨 |
2(23) | A | 1095 | .272 | 1188 | 6 | 239 | 341 | 盗×5、9×2、☆×5 | |
| 岐阜 |
団之原 |
は(22) | C | 151 | .269 | 144 | 13 | 39 | 21 | 50浜松→引退 | |
*2:現宇部、*3:現丸ノ内
入団の「数字」は競合球団数、「は」ははずれ1位、「単」は単独指名、カッコ内は入団時の年齢
Uカンファレンス
投手中心のドラフトであり、大分が単独指名した安東以外は1位指名は全員投手となった。その中で中心となったのは何と言っても塩浜である。高校生ながらすでに完成された能力、そして140km/h後半のストレートを投げ込む投球スタイルはどの球団ものどから手が出るほど欲しい投手だったはず。史上最多となる9球団の競合の中、当たりくじを引いたのは多摩。その後の活躍は周知の通り。入団後も順調に成長を続け、数々のタイトル獲得、奪三振も10シーズンで2,000を超え、多摩の強力投手陣のエースとして、もとい球界のエースとして未だ第一線での活躍を続けている。評価は文句なしの特Aとしたい。一方、その他の投手となると、やや寂しい結果となってしまう。10人の1位指名投手の中、タイトル獲得はもちろん、ベストナイン経験者もおらず、花巻の楓川が一度オールスター出場の経験があるのみと寂しい結果となっている。その他では世田谷の幅上が391試合の登板で54勝を挙げているのがやや目を惹く成績となっている。屋島の加登谷、盛岡の鉄羅、名古屋の嘉月はドラ1としてはぎりぎり及第点といったところ。残りの5投手、東松山の得田、伊勢(現唐木田)の蕪尻、北海の藤家、津の江井、厚木(現御殿場)の石直については登板機会も少なく、C評価とする。
唯一のドラ1野手である大分の安東についても目立った活躍はみられずB-とした。
こうしてみると、投手陣が豊作とみられたこの年のUカンファレンスは塩浜といった超高校生級の大物がいたものの、全体的には不作のドラフトだったといえる。
| 投手 | |||||||||||
| チーム | 選手 | 入団 | 評価 | 試合 | 防御率 | 勝 | 敗 | セーブ | 奪三振 | 主なタイトル | 備考 |
| 東松山 | 得田 | は(18) | C | 0 | - | 0 | 0 | 0 | 0 | 48→引退 | |
| 伊勢*2 | 蕪尻 | は(18) | C | 50 | 3.80 | 6 | 6 | 0 | 129 | 53沖縄 | |
| 屋島 | 加登谷 | は(18) | B | 226 | 4.67 | 38 | 43 | 7 | 496 | ||
| 北海 | 藤家 | は21() | C | 26 | 6.88 | 2 | 0 | 1 | 33 | 53→引退 | |
| 多摩 | 塩浜 | 9(18) | 特A | 291 | 3.47 | 117 | 79 | 0 | 2050 | M、防×2、勝×4、振×3、率、9×3、☆×6 | |
| 花巻*4 | 楓川 | は(21) | B+ | 368 | 4.00 | 39 | 33 | 29 | 584 | ☆ | 53紫雲 |
| 盛岡 | 鉄羅 | 2(25) | B | 243 | 4.28 | 41 | 29 | 6 | 1063 | ||
| 名古屋 | 嘉月 | は(25) | B | 188 | 4.35 | 21 | 18 | 9 | 207 | ||
| 世田谷 | 幅上 | は(24) | B+ | 391 | 4.69 | 54 | 42 | 5 | 742 | ||
| 津 | 江井 | は(21) | C | 5 | 14.40 | 0 | 0 | 0 | 2 | 50→引退 | |
| 厚木*3 | 石直 | は(22) | C | 46 | 7.06 | 2 | 8 | 0 | 92 | 49→引退 | |
| 野手 | |||||||||||
| チーム | 選手 | 入団 | 評価 | 試合 | 打率 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 主なタイトル | 備考 |
| 大分 | 安東 | 単(22) | B- | 232 | .262 | 107 | 15 | 50 | 16 | ||
*2:現唐木田、*3:現御殿場、*4現紫雲
入団の「数字」は競合球団数、「は」ははずれ1位、「単」は単独指名、カッコ内は入団時の年齢