(1997/11/11)

骨肉腫

日々医学は進んでいます
家族の方々は、落胆したり、悲嘆に暮れることなく
希望をもって治療に取り組んでいただきたいと思います

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骨、軟骨、筋や神経などの非上皮組織に発生する悪性腫瘍−−−を“肉腫”と呼びます。
したがって“肉腫”は“がん”とおなじものと考えてよいわけです。骨肉腫、ユーイング肉腫などは骨や骨髄に発生し、骨の成長の活発な子どもや思春期によく見られます。また、軟部に発生する肉腫のなかにも子どもに多くみられるものがあります。


骨肉腫などの骨悪性腫瘍の治療成績は最近著しく向上してきました。1970年代以前の5年生存率(治療開始後5年経過しても再発、転移のない人は治癒したものと考えています。その理由は、その後の経過で、再発、転移をきたし、不幸な転帰をとることが非常にまれだからです)は、10〜20%でしたが、最近では60〜70%まで改善してきました。理由はいくつかありますが、最も重要なものは強力な抗がん剤治療の導入でしょう。つぎには、医療技術の向上による正確な診断や手術的治療の改善が上げられます。これらによって、手足を切断するだけであった治療が、肉腫ののみを切除し手足を残すこともできるるようになってきました。そして手足があるという満足感がえられるとともに術後の四肢の機能(手足の動き)をも保つことができるようになりました。しかし、まだ問題点がないわけではありません。

《骨肉腫》

悪性腫瘍の中で最も頻度の高いものです。しかし、十万人当り0.2〜0.3人ですので“がん”全体のなかでは比較的まれなものです。発症年齢は十歳代が最も多く、二十歳代、十歳未満とつづき、思春期に好発します。部位は膝関節付近(大腿骨遠位部と脛骨近位部)に圧倒的に多く、全体の70〜80%になります。その他、股、肩関節の近くにもおこります。男児にやや多い傾向があります。

初発症状は、局所の腫張(はれ)と痛みで、運動時の痛みだけではなく安静時にも痛みがある場合は要注意です。股関節や骨盤周囲に発生するものは、症状がでにくかったり、はれや痛みがあっても、子どもははずかしがって訴えなかったりすることがあります。そのため歩き方に異常(跛行)がないか、家族が注意を払うかことが早期発見につながります。

血清学検査ではアルカリフォスファターゼという酵素の活性が上昇します。これは、骨の代謝の指標ですので、骨肉腫に限られた変化ではありませんが、種々の異常を見つけだすのには意味があります。

X線学的には、関節に近い部分の骨がこわされたり、異常な骨が形成されたりします。最近では、普通のレントゲン撮影以外にCT(コンピューター断層撮影)とMRI(核磁気共鳴画像)の精密な画像情報も得られるようになり、正確な診断や治療計画に利用されています。その他の補助診断として、骨シンチグラム、血管造影なども行われます。

生検(患部をすこし切開して組織をとり顕微鏡で細胞をしらべる方法)による組織診断が確定診断となります。骨肉腫のなかにも高悪性度から低悪性度のものまであるため、いままでに述べてきた診断法により重症度や進行の程度を判定し、治療方針を決めます。


○治療

抗がん化学療法と外科的な腫瘍切除術により治療が行われます。

抗がん化学療法
数種類の抗がん剤を組み合わせて使用するのが一般的であり、アドリアマイシン、メソトレキセート、シスプラチンなどの薬剤が使用されます。診断が確定すると手術に先だって抗がん剤を投与します。静脈内や動脈内の投与により、局所の腫れや痛みを和らげることができます。それから手術となりますが、手術後も薬の投与が3〜4週間で6〜12ヵ月にわたってつづけられます。

抗がん剤の投与後におこる副作用は、患児にとっても家族にとっても決して楽なものではありません。激しい悪心、嘔吐、それにつづく全身倦怠感に耐えなければなりません。脱毛、口内炎も苦痛です。白血球、血小板減少をきたす骨髄抑制や心筋毒性などは生命を危険に陥れかねません。しかし、抗がん剤は治療上不可欠ですので、副作用を軽減するためのいろいろな処置はもちろん、家族の精神的な支援が必要となります。

手術療法
前述の抗がん剤の併用により手術方法も変わってきました。たとえば大腿骨遠位部(膝のすこし上)にできた骨肉腫に対して、以前は大腿部もしくは股関節で切、離断し、術後義足を装着してきました。それが腫瘍部分を周囲の正常組織をつけて切除し(これを広範切除術といいます)、欠損した骨や関節の部分を人工材料などで再建することにより、腫瘍に冒された手足を残すわけです。切除する範囲にもよりますが、一般的に良好な機能がえられます。杖なしで歩行することも可能となり、子どもや家族の満足度も高いのですが、人工材料による再建ですので、術後の感染や人工材料の破損、耐用性の点などが問題となります。今後は、新しい腫瘍用人工関節や機能的な義肢の開発をすすめることにより、よりすぐれた患肢の再建が可能となってくるはずです。

○予後

先にも述べましたように、1970年代以前は5年生存率10〜15%でしたが、現在では60%〜70%と著しく改善してきました。不幸な転帰をたどる子どものほとんどが肺転移によるものです。肺転移も以前は不治のものでしたが、症例によっては肺転移病巣の外科的切除により治癒が可能な例もでてきました。



(財)がんの子供を守る会の小冊子「骨腫瘍・軟部腫瘍」より

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