これまでのあらすじ....なし

第1R

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第1R 「初めてのスロット」


 遥か故郷を離れ(4時間)、あたひは東京へ上京した。
 仮住まいは市川市なのだが、仕事場は東京なので、そのへんは気にしないでおこう。
 とりあえず、はれて自由の身になったのだ!
 仕事は公務員。今や幻と消えてなくなりそうな郵政職員だ。
 郵便業務と言えば、窓口の人と配達する人...を連想するが、あたひの仕事場は予想を反して重労働でだった。
 16時間勤務の3番制主体で、夕方から朝まで働く工事現場のようなものである。
 そう言ったわけで、昼間はだいたいお休みしている。
 その日もそうであった。
 16時間勤務(以下、16勤)を終え、帰ろうとした時、先輩から「パチンコに行くぞ」と誘われたのだ...いやもうその台詞は「来い!」と言っている。
 昔から弱々のあたひには逆らう事が出来ないのだ。いや、新職は先輩の誘いを断ってはいけないのだ
 やむを得ず先輩に連れられ「上野」へやってきた。
 見た事も無い錆れたビルの裏口から、狭い階段を登ると...いるわいるわ。
 自動ドアの前から、この狭い階段まで、ガラの悪いお兄ちゃんが舌打ちし唾を垂らし何度も上下上下と人を睨みながら並んでいた。
 ・・・な、なにやってんの?この人たち?
 パチンコごときに列を正して並ぶこの世界観の違う人達の気持ちが全く分からなかったあたひは、ワケも分からず先輩の後ろに並ぶ。まるで借りてきたネコのように...
 いざ開店。
 どどっ!と人並みが店の中へ入っていく。
 「取れ!取れ!」
 と先輩が叫んでいる。
 取りあえず台をキープ...それぐらいは知っていたのだ。
 さてと、と座って台を見る。
 「...あれ?」
 そこにはヘンな機械が目の前にズンと置かれていた。
 よかった事に先輩が隣に座ったのでとりあえず聞いてみた。
 「これ何?」
 「スロットだよ」
 「なにそれ?」
 「パチスロだよ」
 「?????????????」
 その時「騙された」と知った。
 パチンコなら知っている。
 だが...だが、スロットって...パチスロって...。
 どうやって打つのかも判んないあたひは、取りあえずレバーをぐりぐり弄る。
 台の絵は、まるで今のあたひのように、ネコが「うにゃ~ん」とやっていた。
 アメリカンショートヘアーがネコ缶らしきものに入っている絵だ。
 結構かわいい。
 「こうやってコインを買うんだよ」
 と先輩がコインサンド(もちろん当時はなんて呼ぶのか知らんかった)に1000円札を入れた。
 その時、先輩の台を見て驚く...なんと台に1000円札を何十枚も差し込んでいるのだ。
 「そ、そんなに使うの!?」
 あまりの大金にあたひは驚愕した。
 だが、当の先輩は何喰わぬ顔で「あぁ」と答えた。
 「ふひふひぃ~」
 あたひは相変わらずレバーをぐりぐり...。
 そんなあたひに先輩は言った。
 「早く打てよ!」
 ふにゃ~....
 打ち方も知らないのに、あんたそんな...。
 まぁ、とりあえず先輩と同じようにしてコインを買う。
 「ここに3枚入れてこうやって回すんだよ」
 先輩の助言通り、コインを入れてレバーを叩く。
 ぐるん!
 画面が回った!!
 じっと見る...見る...見る...そして先輩を見る。
 「止めろよ!」

 ようやく画面の下の3ボタンで止める事を知る。
 トコトコトコン
 グルン
 トコトコトコン
 グルン
 ペレペレペ!
 なんか揃った!?
 「ふ!」
 先輩を見る。
 「プラムだよ、おら」
 と勝手に上段のボタンを押してレバーを叩いた。
 「?????????????」

 そんな事をずっとやってて、あっと言う間に1000円分使ってしまった。
 ぼぉ~~~~~...としてるあたひに先輩は「もっと打てよ!」と催促する。
 仕方なく1000円追加...。
 まるで、かつあげにでもあってるようだ。
 そしてドンドンとお金はなくなって行く...。
 ...なんなんだこれは?儲かるのこれ?いったいあたひは何をしてるの?
 金は無くなるし、レバー叩いてボタンを押すだけだし...
 なんかだんだん悲しくなってきた。
 すると、スルン!と「黒いネコ」が一直線に並んだ!?
 「はふ!?」
 あたひは目を輝かせて先輩を見る! 
 「あぁ、オバケか」
 「?」
 なんか知らないが、キャラクターがネコなので喜んだ。
 今度はコインを入れなくても打てるらしい!
 いいねぇ~、お!なんか揃い捲るぞ!おお!コインが出てきた!おお!なんか凄い!
 ...だが、すぐに鳴り止む...????????
 今度は悲し気に先輩を見る。
 「オバケだもん」

 ワケがワカラン....。

 あれだけお金入れて、出てきたコインが手のひらサイズ...。
 もう、すでにやる気を無くしていた。
 「換金してイイ?」
 「....(--;;;」
 結局換金....2000円。
 マイナス5000円。

 その後、先輩を置いてフラフラ店の中を見回って夕方までいた。
 そしてあたひは、心に誓った。
 もうスロットは打つまいと....。

 若かりし頃のヘロッター「ふぅ~」は、昔からチキンだった。

つづく

打った台:ワイルドキャッツ
   当時、強烈な大連チャンを引き下げ全国に出回った貯金バージョンの裏モノ台。
   フラグ発生時に7を揃えられなかった時、約半分の確率で貯金される恐ろしいネコ。
   だがその半分の確率で貯金放出モードへ突入する、凄いネコ。
   今でもその人気は高く、裏モノを探す「裏ネコ族」がいるかどうかは定かでは無い。


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